吉田巖嗣 / Yosida Ganzi

場所の感覚、痕跡の探索 / 人類学 / ヒマーラヤ研究 / https://linkt…

吉田巖嗣 / Yosida Ganzi

場所の感覚、痕跡の探索 / 人類学 / ヒマーラヤ研究 / https://linktr.ee/yosidaganzi

最近の記事

未来派の近代──時間・運動・破壊

2022年7月、岡田暁生教授の講義「音楽の近代と時間意識」のためにかいた文章です。原題は「未来派の近代──時計的゠機械的時間からの逸脱へ」でした。わたしは文学部生ですが、美術や音楽にくわしいわけではありません。もしまちがいがあれば、おしえてください。 時計的時間の発明は、近代工業社会の「発展」をもたらしたばかりでなく、「近代であること」そのものを規定したといえる。大規模な工場制機械工業や鉄道輸送は、時計的゠機械的な時間管理なしには成立しなかっただろう。近代社会とは、つまり、

    • 見学記「分離派建築会100年 建築は芸術か?」

      [この記事は2021年2月公開のものです] 京都国立近代美術館で開催されている展覧会「分離派建築会100年 建築は芸術か?」を見学した。わたしは美術館にはそうそうゆくこともなく、芸術についてはなんらの知識ももたず、建築に関してもまったくの門外漢である。それではなぜこの展覧会をみたのか。わたしはなにもしらないのに建築をみることがすきだ。それはおおげさにいえば、建築というふくざつに構成された空間、巨大な物質文化にかぎりない興味をかきたてられるからだとおもう。 分離派建築会は、

      • 反復する音楽とその複数の時間──スティーヴ・ライヒの《イッツ・ゴナ・レイン》と《ピアノ・フェイズ》を比較して

        ミニマル・ミュージックの作曲家スティーヴ・ライヒ(1936–)は、《ドラミング》や《18人の音楽家のための音楽》《ディファレント・トレインズ》といった作品でよくしられている。その経歴はきわめて多岐にわたる手法や作風におよんでいるが、かれの初期作品のほとんどで耳にすることができる特徴は、さまざまなタイプの位相のずれだ(コープ 2011)。 1965年に完成した《イッツ・ゴナ・レイン》は、位相のずれをもちいたライヒの代表作だ。サンフランシスコの街頭で説教する黒人牧師の声、テープ

        • ジョン・ケージの「易の音楽」にみる20世紀音楽の特徴

          「易の音楽」1950年代のはじめ、ジョン・ケージ(1912–1992)は1冊の本をきっかけに偶然性の手法にたどりついた。その本は中国古典で儒教の経典である『易経』I Ching の英訳本であった。ケージは『易経』の六十四卦を作曲のためのチャートとしてつかうことができるとかんがえた。つまり、六十四卦に音高・持続・テンポ・ダイナミクスをあてはめて、コインをなげてしめされた易の結果にもとづいて作曲をするのである。かれはこの手法をもちいて「易の音楽」Music of Changes

        未来派の近代──時間・運動・破壊