ショートショート ライフタイマー
「これ、使いなよ?」
そう言って差し出された、卓也の手に握られていたものが目に入ったとき、思わず「えっ……」と吐息が漏れ、息を呑んだ。
「ライフタイマー。もう、これしかないよ」
卓也の真剣な眼差しが、僕を正面から見る。
「ショートストーリーを書くか、それとも書けずに死ぬか。30分後の未来は、お前が決めろ」
突き放すような、卓也の言葉が胸に刺さる。
小説を書きたい、小説を書きたい。ずっとそんな思いがあって、でも書き出すことが出来ずに悩んでいた。そして書けない不満を、いつも卓也に愚痴っていた。
見かけた卓也が、今日差し出したもの。それがライフタイマーだった。
ライフタイマーに宣誓をすると、それが叶わなかった場合、宣誓をした者には死が下る。もともとは、締め切りを守れない作家のために作られてシロモノだ。
もう、命を懸けよう。
僕は、おそるおそるライフタイマーに手を伸ばした。
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