見出し画像

整形外科術前後の痛みと睡眠の関係

今回は、整形外科術前後の痛みが睡眠改善により変化するかを下記の文献で紹介していきます。

タイトル

Improved Perioperative Sleep Quality or Quantity Reduces Pain after Total Hip or Knee Arthroplasty: A Systematic Review and Meta-Analysis

目的

人工膝関節置換術(TKA)および人工股関節置換術(THA)を受ける患者において、
周術期(手術前~手術後の一連の時期)の睡眠改善によって
・疼痛
・鎮痛剤消費
・術後の悪心・嘔吐PONV
への影響を検討すること。

方法

1970年1月1日から2020年9月30日までに発表された原著論文を、共通の検索語を用いて3つのデータベースで検索した。
検索は、TKAまたはTHA後早期の疼痛コントロールに対する睡眠の質または量への介入の有効性を調査する無作為化対照試験(RCT)を探した。

評価された項目

・視覚的アナログスケール(VAS)疼痛スコア
・鎮痛剤消費量
・PONV などの副作用を含む副次的アウトカム

検索方法

Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、PubMed(1970~2020年9月)、EMBASE(1970~2020年9月)で、睡眠、膝関節全置換術または股関節置換術の適切な同義語を用いて、術後の睡眠改善と術後疼痛および副作用の関連を評価した。すべての文献のうち、無作為化対照試験(RCT)のみを対象とした。

論文を検索した結果

検索結果

電子的検索により、656件の重複論文を含む、合計1285件の論文が該当。

タイトルの評価と抄録を読むことで、622件の論文が無関係として除外。

最終的に適格基準を満たす6件の研究が残された。
6つの対照RCTは、睡眠改善群207名、対照群209名から構成されていた。

該当する論文のサンプルサイズ

18人から141人という比較的小さなサンプルサイズであった。

対象になった症例の平均年齢

文献で報告された参加者の平均年齢は55.4~74.6歳であった。

論文から得られた結果

術後1日目の安静時疼痛スコア

術後1日目の安静時痛の重症度は、対照群に比べ睡眠改善群で有意に低かった。

術後3日目の安静時疼痛スコア

術後3日目の安静時痛の重症度は、対照群に比べ睡眠改善群で有意に低かった。


術後1日目の活動性疼痛スコア

睡眠改善群で認められた活動性疼痛の重症度は、術後3日目において対照群と比較して有意差はなかった。

術後3日目の活動性疼痛スコア

術後3日目においても、睡眠改善群は対照群に比べ活動性疼痛の重症度が有意に低かった。

考察

・TKAまたはTHAにおいて周術期の睡眠を改善することで、術後早期の疼痛
 レベルを軽減できること
・周術期の睡眠改善により術後の鎮痛剤消費量が減少すること
・このアプローチにより術後の悪心・嘔吐PONVの発生率が増加しないことである

睡眠を改善するための介入は、睡眠不足、疼痛、うつ病のサイクルを改善する可能性があるが、この知見のメカニズムはまだ不明である。
ゾルピデム、アルプラゾラム、メラトニンは、睡眠を誘発するために臨床でよく使用される薬物である。
メラトニン補充は術後のメラトニン抑制とそれに伴う睡眠障害を防ぐ可能性があり、つまりメラトニンの使用はより生理的である可能性があるとのことである。
術後鎮痛薬はオピオイドからNSAIDsまで研究により異なるが、鎮痛薬の消費量も有意に減少していた。この結果は、睡眠改善という単純な手段で医療費が減少する可能性を示している。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
スキやフォローをお願い致します。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?