見出し画像

治療させない経営者と呼ばれた男。

治療させない経営者(笑)

僕はイルカの飼育業界では「治療させない経営者」と言われているみたいです(笑)

辞めた社員の証言や僕の発信を見てそんなことを言われていますが…
治療をさせないんじゃなくて…

真意は、僕の5年間の飼育に関わった経験の中で、これまで治療してきて治ったことがないので「薬の効果やそもそもの動物治療のあり方を疑っている」だけで、まだ「治療させなかった」ことはないし、今後もちゃんと納得できれば投薬もよしとしてますよ。

ただ、今後、血液検査の結果が芳しくない時に、獣医師の言うことを鵜呑みにして、言われた通りに「はい!薬あげよう!というのだけは絶対にしない!」と強く表明しているだけです。これまではどうしていいかもわからないから、獣医任せ、飼育員任せでした。
でも、イルカは生かせなかった。施設で死んだ動物の責任は、獣医師にも飼育員にもなく、代表である僕にあるんです。であれば、しっかりと自分の目と感覚も信じて、日々イルカの様子を見ながら、イルカの声を聞きながら、どんな状況なのか、そして、指示されている薬が本当に適切かどうかを獣医師任せにせずに、しっかりとセカンド、サードオピニオンをとりながら、納得した上で投薬まで踏み切りたいな、と。そもそも大きな責任を背負っていたのに、他人任せにしていたのが一番ダメだな、と気づいただけです。

とりあえず「投薬」をやめてみる。

人間でも、風邪っぽいな、ってだけで薬飲まないじゃないですか。(飲む人は飲むだろうけど、僕は飲まない)健康診断でガンマGPTが高くても、原因を探りつつの「再検査」であっていきなり「投薬」じゃないですよね。この「原因を探りつつ」が難しいから、いきなり投薬、ってのもわかるけど、この5年それで生かせなかったので、自分なりの原点に戻りたいだけです。

相手が言葉を喋らないからこそ、日々の行動、動き、ちょっとした変化、機微を感じ取りながら、たくさんの人の意見を聞いて、判断していきたいな、と思っただけです。

イルカの医療についての私見

イルカの医療は、この飼育の歴史と一緒に成長しています。全ての施設が飼育経験の中で、それぞれが試行錯誤し、やり方を見つけ、少しずつイルカの飼育年数を伸ばしてきました。全ての飼育施設の環境が異なっていて、動物も異なるので、全部オリジナルの形になるのは必然です。

聞くところによると、40年前はそれらは各施設の「特別な技術」であり、企業秘密で、施設間の情報共有もほとんどないままに、みんなで独自のやり方で動物を守っていました。しかし、世の中の風向きが飼育に逆風になっていき、捕獲することもそれほど簡単ではなくなってきて、この20年位で多くの施設が情報を共有し、イルカを守ろうとある一定の基準だったり、指針、方針をたて、飼育方法、医療体系を作り上げてきたそうです。

僕の「治療」に対する考えは、その大きな流れ全体を否定するものでは断じてありませんし、先人たちがたくさんの命のデータの上に作り上げた技術と知見はめちゃくちゃ大事だし、尊重もします。しつこいけど、治療させない、んじゃないです(笑)治るなら、いくらでもやって欲しいんです。

ただ、イルカの健康と病気の指標となるのは血液検査。
この基準になる数字も、人間が多くのイルカの命を通して見出してきた数字です。とは言え、この数字は全ての「ハンドウイルカ」に当てはまるのでしょうか?さらに、うちみたいに自然の海で飼育している場合、変動要因が多すぎる気がしているのです。

人間も、大人と子供、体の大きさ、住んでる環境でも全然違いますよね?
サイズ的な個体差はある程度わかるにしても、住んでる環境要因はどのように考慮していけばいいのでしょうか。水族館とうちはだいぶ違うと思うんですよね。でも、血液検査の場合はどちらの環境であっても、数字だけをみて、その上下で一喜一憂し、悪そうなら治療(投薬)です。イルカの場合はそれ以外の治療の選択肢があまりありません。そして結果、「治ったら、薬が効いた!」違ったら「あれおかしいね、じゃぁ、次はこの薬!」って、結局、今も、概ね試行錯誤・暗中模索を続けているわけです。

だったら、もっと様々な角度から情報を検証していきたいし、今まで全くやってこなかった「壱岐の環境にあった基準」をしっかりと見出さないといけない、と思うのです。

野生の動物ですからわからないことばかり。加えて、壱岐の飼育環境は自然の海を仕切った特殊環境です。外洋ほど流れがあるわけでもないですが、魚も海藻もいて、季節ごとのプランクトンも入ってきて、風によっては刻一刻と環境が驚くほど変化するような場所です。なんなら、普通にアジもイワシもいるし、イルカは小腹が減ったらその子達をおやつに食べてるでしょう。

壱岐のイルカたちは太平洋から来ているから、そもそも日本海の冷たさはだいぶしんどいとは思います。加えて、こんな環境要因が無限に変わる場所において、そもそも病気の判断をするその基準となる数字が必ずしもフィットするとは思えないんです。

もっと野生動物の持つ力を信じてもいいのでは?

僕は、自然の海で飼育している壱岐においては、もっと野生動物の自然治癒力を信じる余地があってもいいのでは?と思うんです。

ちょっと変なもの食べたかな?寒かったからかな?なんか変なクラゲ浮いてたな、明日また見てみようか、とか。柔軟に対応したらいいのに、と思うんです。
いや、ここが水族館みたいに100%コントロールされていて、外的要因が全くないなら、肝臓が悪ければ餌か!?病気か?とすぐ原因特定が可能でしょう。それならすぐ薬でもわかります。しかし!壱岐の海ではそれを瞬時に判断するのは相当ハードなんです。イルカからしたら「いやー、ちょっと海藻つまんだらお腹下しちゃって」とかかもしれないし、血液検査時のちょっとした体調の変化の可能性も0ではありません。だからこそ、一時の血液検査の数字に踊らされてはダメなのでは?と思っているのです。

壱岐ではイルカに対する「治療」は「投薬」しかありません。血液検査をして、肝臓の数値が悪ければ、肝臓の薬。白血球が高ければ抗生物質。治らなければ他の薬に変えてみる、ということしか結局できません。

そんな状況だから、「なんかすぐ薬あげてるけどさ、野生の動物の力って、そんなに弱かったかな?」と思ったんです。ある時「アニサキスとか寄生虫が怖くて、生の魚を与えられない」と言われたこともありました。もう驚きすぎて何も言えなかったです。。。

野生動物を何だと思っているのか。

野生動物を飼育した途端に、その能力まで失うのでしょうか。飼育されている野生動物は、その期間が長くなれば、自然界の野生動物よりも弱くはなるかもしれませんが、野生動物はどこまでいっても野生動物だし、DNAに刻まれた記憶と能力はそう簡単に失われはしないと思います。
水槽の中でも大海であっても、イルカはイルカです。

結局、僕はどうあれ納得できれば、治療はしますよ。

ただ「素人だから」という言い訳は金輪際しません。
全ての状況、情報をしっかりと検証して、納得して、判断します。

僕が自分の責任において、できる限り勉強し、調べ、検討して、判断する。そんな当たり前のことを、改めて言っただけなんですけどね。

狭い業界の超門外漢。
納得できるまで、突き進みます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?