見出し画像

「メンタルヘルス」は個人の健康問題ではないよなぁ

「メンタルヘルス」=「個人のメンタルの問題」と思われがちではないか?と思ったことをキッカケに、つらつらと書いてみたいと思います。


問いかけ

 「メンタルヘルス」という言葉にどんなイメージを持つだろう。
メンタルヘルスに携わってきたからこそ、先入観や偏見があるかもしれない気がしている。
 ネガティブか?ポジティブか?
 できれば避けたいか?向き合いたいか?

 上記サイトを読んでみて、「体の健康ではない」表現があるけれど、体と心は密接に関係している。「体の不調」が「心に影響」し、「心の不調」が「体に影響」もする。心も体の一部ではないのだろうか?神経伝達物質の影響による症状が「心」の不調という捉え方で次世代にも伝えていいのだろうか?

「こころの健康」は「社会の健康」と密接に関係している。「社会の不健康」な部分の影響を受けやすく、「社会の健康」な部分が助けになる。

「メンタル」のイメージ

 「緊張感」「羞恥心」「度胸」などを表現するような、「メンタルが強い」とか「メンタルが弱い」など聞くこともある。
 精神科医療現場に長年置いていると、身近に聞こえてくる「メンタル」は、「病気」「障害」をイメージさせる。

「メンタルヘルス」のイメージ

 「ストレス」「こころの健康」という言葉で表現されることが多いですが、「精神疾患」「病気」をイメージする人もいるかもしれない。間違ではないけれど、正しくはないと思うのです。

 精神保健福祉士としての経験からは、 「精神病」→「精神疾患」→「こころの病」「こころの風邪」と時代とともに表現が変化し、「病気」から「障害」と認知され、様々な障害名が増えたと思います。
 ですが、「病気」「障害」になってしまった方だけに必要な知識ではないのが「メンタルヘルス」だと思います。

「ストレス社会」「ハラスメント」「いじめ」「虐待」「引きこもり」「ヤングケアラー」「8050問題」「介護疲れ」「被災」「トラウマ」「生きづらさ」「理不尽」、人生のいつでも「メンタルヘルス」を考える機会が、身近に増えていると思います。

そもそも「精神」や「心」という表現が適切なのか?
 「心」と表現する弊害はないのだろうか・・こころが病んでいる?
むしろ、心が純粋な人ではないかと思うのです。


「メンタルヘルス」は「個人の健康問題」と思ってはいけない

 「メンタルヘルス」を「個人の病気」「個人の問題」「メンタルの問題」のように捉えて、健康なら関係ないと捉えていないだろうか。「メンタルヘルス」は「個人のメンタルの問題」ではなく「背景にある社会の問題」と言える。

健康だから関係ないと思うほど、正しく理解しないまま影響を受けたり、無意識に影響を与えてしまったりするリスクは大きい。

 社会は変化を続け「多様性の尊重」や「変化への適応」が求められる時、いろんな立場でいろんな意見があるのは当然です。職場や学校や家庭であっても、価値観の違いや意見の違いなどあって当然です。
 ただ、向き合い方や伝え方次第で「不健康な環境」が生まれ「こころの不調」が発生するリスクが大きくなります。

 社会、地域、職場、学校、家庭など直接対面する環境はもちろん、インターネット、SNS、仮想空間、AIなど人が対面しないで成り立つ環境の変化に、人も社会も追いつけず大きな影響を受ける危険性を感じます。


「言葉」は「悪」になる危険

 武器や凶器になるピストルや刃物を人に向けることは、危険で悪いことと認識している人がほとんどだと思います。ですが、自分の正義から発する言葉が、人を傷つけ追い込む武器や凶器となる危険性はどうでしょうか。僕自身、身に覚えがあるし、反省したり悔やんだりする経験はあります。そんな個人のレベルでも起こり得るし、集団で社会的なレベルになると、ニュースになりますね。

社会、地域、職場、学校、家庭など直接対面する環境で発する「言葉」も、インターネット、SNS、仮想空間、AIなど人が対面しない環境で使われる「言葉」も、伝え方や受け止め方に「悪」が潜んでいないか気をつける必要がありますね。


「メンタルヘルス」は全ての人に大切

 虫歯、近視、生活習慣病に気をつけるのと一緒です。
 メンタルヘルスは特定の人に必要なことではないです。
 歯磨きせず、甘いものを食べ続ければ、虫歯になるのと同様に、知識もなく無防備に社会に身を置けば、不調のリスクが誰にでもあります。ストレスとの付き合い方や、辛い時の対処法を、子供の頃から教えてもらう社会でなければ、「個人の問題」「メンタルの問題」とされ、人生が辛くなるかもしれません。
 僕の過去の経験でも、教育者や人命救助などに携わり真面目で立派な方だろうが、高学歴だろうが、結婚、出産、昇格、転勤、転職、望んでいたことが叶った方だろうが、苦しんで過ごされる方にたくさん出会ってきました。
 脳の神経伝達物質へ働きかける薬を処方されてから、メンタルヘルスを意識するのではなく、誰もが対処法や知識を教わり身につける事で、予防できるかもしれないし、辛くなった時に身近な人の支えが助になるかもしれません。
そんな社会づくりが、これからの時代にとても重要になることだと思います。


精神保健福祉士も「メンタルヘルス」に

前)PSW:Psychiatric Social Worker(精神医学ソーシャルワーカー)
現)MHSW:Mental Health Social Worker(メンタルヘルスソーシャルワーカー)
2020年に英語表記が変わ理、ソーシャルワーカーの倫理綱領も改定された。
求められること、意識すること、社会が変化しているということで、国家資格ができる前は「医療」が主な領域でしたが、「地域」「行政」「教育」「養育」「労働」「司法」あらゆる領域へと求められる役割が拡がっていて、「健康的な社会づくり」を求められていることを感じます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?