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「経営方針や治療方針」と「当事者の希望」の板挟みになった時どうすればいいんですか?


先日、大学の授業に参加させていただいた時、病院実習の指導者経験について15分程度話をさせていただいた。
内容は、主に下記の記事に書いた中から話したのですが、

その後に、学生さんからいくつかの質問があり、その場でコメントできなかった質問をここで取り上げ、自身の振り返りとしても記録しておこうと思います。


「組織の方針」や「医師の方針」と「当事者の希望」や「家族の希望」で板挟みになった時、どうしたらいいか

 これは、どんな現場でも発生して、誰もがたくさん経験することですね。
 「病院という組織は医師がトップで、多職種がその下で役割を担っていると思うのですが、医師の治療方針と患者の希望が違ったとき、MHSWはどのように考え対処するのか」そんな質問だったと記憶している。

 医師は「治療方針」のリーダー的役割と考えていいが、その上には「経営方針」もあり、医師も悩むことが多いのです。
 もっと言えば「経営方針」の上には「都道府県や国の保健福祉に関する計画」もあるのですが、それは話を広げすぎなので、今回は「経営方針」「治療方針」と「当事者や家族の希望」の板挟みについて、MHSWはどう考えて対処しているのか、振り返ってみたいと思います。

★いつも葛藤する

 数えきれないほどの経験で、常に悩み葛藤していました((+_+))
ということで、「これが正解!」「こうすればいい」はなく、その都度、葛藤しながら考えを整理することになります。

 いつも葛藤していると、とても疲れますね。そして、現場は忙しいですから、ゆっくり考える時間はないのが日常かと思います。スピードや効率を求められるほど、焦る気持ちになりやすいですね(T ^ T)

★大事なことは何なのか

 大事にしたい思いや価値は一つじゃないし、人によって違うものです。みんな迷うし、葛藤するんですよね。

 僕がSWになった頃は、「患者の権利を守るために組織と戦うのがSW」とよく言われました。日本の歴史と当時の状況もあった言葉と思います。ただ、組織と敵対する姿勢では孤立しやすくチームとして健全な支援はできません。一方で、雇用してもらい給料もいただいている一職員であり、経営方針にも貢献しなければ組織の継続的発展もないと、「経営方針は仕方ない」と流され葛藤を避ける姿勢は不適切です。
 自分の経験と頭の中だけで常に判断することは危険で不適切です。それは、自分の価値判断で支援する傾向が強くなってしまうからです。では、どうするのか?

 だからこそ、法律(精神保健福祉士法)や倫理(倫理綱領)があると思います。精神保健福祉士の役割は何なのか、自分の関りで著しく不足していることはないか、事例に対して「利益相反」についてどのように整理したらいいか

・「倫理綱領」と照らしながらチェックする
・上司や同僚など周囲に相談して意見を聞く
・スーパービジョンを受けて実践を振り返り学ぶ

こうして、葛藤する出来事に根拠を持って判断する力を学び、経験値を重ね、葛藤する出来事に対処できる「葛藤する力」「揺らげる力」を養っていくことが大事だと思います。


★現実にあるネガティブな経験

 経験を重ねるうちに、「深く考えずに判断」したり、「組織の方針」「医師の方針」だから仕方ないと判断していたのでは?という経験もあったと思います。
 「患者さんの希望」に感情移入してしまって判断した経験もあったし、冷静に「経営や治療方針」と「患者さん家族の希望」に対処するために考え行動していることに対し、上司から「経営方針優先」にするよう注意された経験もあります。

 ネガティブな経験ばかりをあげましたが、ポジティブな経験もたくさんありますよ(*^^)v


★ポジティブな経験

 組織や医師の示す方針に概ね従う流れになってしまったにも関わらず、ご本人やご家族から、気持ちに寄り添ってもらって心強かったと感謝の気持ちを聞けたりお手紙をいただく経験もありました。
 職場が変わり何年も経過して、ご本人がお亡くなりになられご家族からお手紙をいただいた時には、未熟だった自分でも悩んで相談して向き合って対応したことが、反省も多いながら成長させてもらえて感謝の気持ちになり涙が溢れる経験もありました。
 患者さんやご家族の気持ちや生活背景を他職種で共有したことで、経営方針や治療方針とどのようにバランスをとりながら進めていくか、チームで検討して協力して支援できた経験もありました。

書き始めると、次々に思い浮かんでくるくらい、ポジティブな経験をさせてもらいました。


★視野が狭くならないように

 “★大事なことは何なのか”で伝えた「倫理綱領」にもあるように、支援する対象はクライエント(当事者)ですが、クライエントにばかり目を向けては視野が狭くなります。何かを重視すると、何かが邪魔しているかのように見えてしまいがちですね。クライエントの希望も経営方針も、とても大切なのです。
・クライエント
・組織、職場
・社会
・専門職
という視点や責務と、自分の実践をいつも照らし合わせる視野が大切です。

と言っても、“言うは易し行うは難し”なのです。


★だから「★大事なことは何なのか」に戻る

 本当に“言うは易し行うは難し”だと思います。
 何度もどうしたらいいか悩んで、葛藤して、疲れて、流されて、振り返って反省して、意識して頑張って、熱意を持ちすぎて、振り返って反省して、そんな繰り返しを何度も経験しながら、「向いてないんじゃないか」と考えたり、そんなSWが少なくない、と言うより、誰もが通る道なのだと思います。
 だから、「★大事なことは何なのか」に戻り、倫理綱領と照らし合わせて自己チェックしたり、偏った考えにならないよう周囲に意見を求めたり、専門的にスーパービジョンで振り返ったりを、忙しく余裕がないからこそ時に丁寧に取り組んでみることが大切だと思うのです。

 経験を重ね、責任ある立場になったり、管理職になったり、ステージが変わっていくと、組織運営に大きく関わる立場としての葛藤があるもので、立場が変わっても葛藤は続くんですよね。
 それぞれが自分の経験や価値や立場で判断し行動することが自然なことだと思いますが、様々な立場、視点、価値観を理解しようとする広い視野で葛藤できることが大切で、専門性の一つだと思います。


常に板挟みのストレスにセルフケアも大切に

 「葛藤」は続くということは、板挟みを常に感じて仕事をする状況が多いということです。このことだけではないですが、ストレスフルな状況が続きやすいということです。
 僕も健康管理で反省をして実感した経験を記事にしました。

 神奈川県MHSW協会の実践報告会で発表させていただいて、いろんな方々から共感やご意見をいただき、こうした経験もポジティブに活かせると力をいただいた気持ちになりましたが、セルフケアを大切に優先順位を低くしすぎないことです。


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