FSLとマーケティングについての考察

FSLが話題になった


FSL(Free Style League)なるモノがある。フリースタイルバトルの大会の一つだ。

フリースタイルバトルとは、ここ数年人気が出てきたHIPHOPのジャンルの一つ。その場で聞いたトラックに合わせて即興で歌詞を考え、相手をdisるラップを作り上げる。より相手を効果的にdisった方が勝利する。

FSLがフリースタイルバトルとブレイキングダウンをミックスさせたような動画を出して話題になった。あるラッパーのインスタストーリーでそういうモノがある事を初めて知った。

だいぶバッシングを受けたようで、運営の一人であるジブラがTwitterにコメントを出した。

ジブラのコメントをまとめ

FSLが発足して一年が経つ。この活動の目的はHIPHOPシーンの裾野を広げることにある。そして1人でも多くのラッパーが音楽だけで食っていけるようになシーンにすることがゴールだ。その為に排他的で非寛容というイメージのあるHIPHOPシーンを変える必要があると感じている。小さな母数の活性化ではなく母数そのものを増やさなければならない。それを目指すべくさまざまな施策を試みている。今回の暴力的であると批判を受けた事案は、そのトライアンドエラーの中で発生してしまった。どうか結論を急がず見守ってほしい。我々の目的はあくまでHIPHOPシーンの裾野を広げることにあるのだから。

世界のヒップホップシーンについて

アメリカではHIPHOPはチャートの半分は常に入っている。HIPHOPでなければ音楽ではないくらいな勢い。売れているラッパーは音源、ライブ、物販などで数億単位の収入がある。文化、さまざまな音楽に組み込まれていてヒットさせたいならHIPHOPの要素を取り込まなければいけないという空気すらある。間違えてはいけないのは、売れているラッパーはあくまで音源を出してそれが評価されて、その後の収入につながっているということ。

日本のヒップホップシーンについて

一時のブームは去った感は否めない。チャートトップ10にはまず入らない。売れるのはHIPHOPテイストの音楽。本物ではない。20年前からそう。あくまでファッションの一部になってしまった感じ。怖い人が聞く音楽と言うイメージから抜け出せていない。最近ではよくラッパーが大麻や麻薬絡みで逮捕されるニュースを聞く。ここ数年20年前のダボダボファッションが流行っているようだ。僕はhiphop側の人間だから音楽として流行っているのかどうかは全く分からない。好きだから聞いているだけ。

そして今回のテーマの、フリースタイルバトルはヒップホップの一つの要素。ただ週末に開催されるバトルに出て生活できるレベルの収入になるとは考えずらい。あくまで音源を出す前のマーケティングと考えるのが正しいかと思われる。

暴力について

例の動画は日本のシーンで活躍しているラッパーの中でも賛否両論があり、論争になっている。暴力は反対だと言う意見と、今まで表には出てこなかったがこれがリアルな現場のHIPHOPだという意見。

僕は暴力は反対だ。そういったものに脅されて自分の意見を曲げなければいけないのは悲しい。正常なマインドだと、悲しがっている人が増えるのはやはり悲しいのではないだろうか。


マーケティング方法

志は立派だが、どうしてこの戦術で裾野が広がると思ったのかが疑問。ブレイキングダウンの真似をしていることから、暴力(的なもの)がリーチしやすいと思ったのだろう。非常に短期的な目線しかない。加えて数百万PV程度でリーチできると考えているのが浅はかすぎる。これで結果的にスケーリングできていると感じてしまうセンスがダメすぎる。良くて分母の活性化でしかしない。最悪既存客も離れかねない。新たなファンの獲得になると考えた理由が知りたい。格闘技が数字が取れずに地上波から姿を消したのを見ても日本人の国民性に暴力的なコンテンツが根付くことはなさそうだ。ボクシング、MMAが好調なことからアメリカではこの手のマーケティングは有効なのかもしれない。ただどの国でも一定数は暴力的なコンテンツを好まない層というのは存在しているはずだ。分母を大きくしたいならどの層にも届くようなコンテンツ制作、マーケティング戦略が必要になるのではないかと思われる。PVを稼いでYouTubeで収益化しようとしているのだろうか。


短期、長期のマーケティング

問題のあるコンテンツを投下していわゆる「バズった」といわれる状態を作りたかったのだろう。議論を巻き起こしツイッター、Yahoo!ニュースでバズれば認知は爆発的に上がる。短期的なマーケティングとしてはバッチリと思われる。ただみんなが本当に見たいのは梵頭がボブサップみたいな黒人に囲まれて、取り巻きもビビって誰も助けられない中、ションベン垂らしながら土下座するところだ。

長期的なマーケティングの視点から見るとどうだろう。まずジブラたちがJ-Rapを始めて30年経った。日本にもラッパーというモノがいてそれなりに人気があることはある程度の人が知っている状態になっている。ジブラがシーンのアイコンになりそれなりの認知は得たと言える。彼は30年かけて成し遂げ、彼の名は日本の音楽史に刻まれた。

そして彼が目指しているのは次のレベルだ。ドラマのオープニング、エンディングにHIPHOPが流れる、CMソング、そして料理を作るお母さんの鼻歌。

その戦略が暴力だとは・・・・・・。なぜ後10年かけようとせずに、数を追いかけるだけの短期的な方法に手を出してしまったのか。残念で仕方ない。今回の事で暴力を好まない人は「HIPHOP=暴力」が植え付けられ子供に見せたがらなくなるかもしれない。10年で成し遂げられることが、15年かかってしまうことになってしまった。


ラッパーを食わす必要があるのか

どのレベルのことを言っているのかよくわからない。ベタなHIPHOPのPVのような生活のことを言っているのか。手取りで25万円くらいの生活なのか。芸能人が使う「一般の人」は、嫌な上司、顧客に作り笑いで対応しながら朝から晩まで労働して年収500万円程度だが。

ラッパーの収入云々それ以前に、レールを敷いてやることが本当に必要なのかとも思う。30年前からジブラたちが荒野を開拓してくれた。結果後輩たちは舗装された道を進みながら現在地に辿り着いた。流行りについていけなくなった老害ラッパーはまだ若手の為に道を作ってやると鼻息を荒くしているようだ。彼がマーケティングが分かっていないのはしょうがないとしても、相談した相手すら分かっていないのはなぜなんだろう。みんな老害のイエスマンで会議の中でNOが言えない空気感があったか、みんな勉強不足だったかのどちらかしかなさそうだが。

本当に必要なのは、道を「作る」ことではなく「譲る」ことではないだろうか。ポーチでロッキングチェアに座ってパイプでもくゆらし、求められた時にだけ昔話をしてやればいい。

誰かが書いてくれた文章を発表してその場を取り繕うのはやめて欲しいです。いつも口を開けば、後から取ってつけたような言い訳ばかり。「晩節を汚す」という言葉が彼にはピッタリだ。ここ数年バカでヘタレを晒すようなゴシップを何度も聞いた。あの頃のかっこいいジブラのままでいて欲しかった。

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