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映画みぞおちにタピオカ
<19歳>
一浪して大学に進学した私は、映画サークルで幸田一平と出会った。
好きな映画を聞かれてETと答えたら、私のことをETと呼んできやがったのが1個上の学年だけど同い年の幸田一平だった。居心地が悪すぎた新歓飲み会。逃げるように駆け込んだトイレで、隣の個室に入ってきた酔っ払い男女のセックスが始まり、出られなくなった時私は、東京になんか出てくるんじゃなかった、と思った。全然外に出られないまま私は諦
このきもちをなつかしく感じてしまう前にアメリの彼氏を深いところに埋めたい
アメリの逃亡が決定したのは、まだ梅雨が始まったばかりの6月のことだった。
バイト終わりにふらふらと帰宅する途中、アメリが突然電話をしてきて「荷造り手伝って」と言ったのだ。もう夜中の1時だったけどわたしはアメリの言うことは絶対にきくたちなので、そのままふらふらと方向転換し、アメリの住むアパートに向かった。
アメリの部屋は、いつも色んなにおいがする。
チョコレートみたいな甘いにおいと、いろんな化粧品
ざんねんなノンフィクション
丹田春子、春生まれだから春子。凡人。手取り18万。夢も趣味も特になし。もうすぐ30回目の誕生日が来る。
バンドマンの江沼と付き合っており同棲4年目である。あいつは全然生活費を入れないけど、言いたいことは言わずに飲み込む派。たとえば1センチだけ中身の残ったペットボトルを部屋のあちらこちらに置かれることとか、トイレットペーパーをのこり1センチだけ残されることとか、お前は前世1センチと何かあったのか!1
れもんちゃんの現実逃避
雨だったので、学校に行くのをやめた。
ママはわたしより朝早く仕事に出かけるからバレなかった。小3の弟、たくみは、時間になってもわたしがトーストにいちごジャムを優雅に塗っているのをふしぎそうに見て、ねえちゃん学校いかないの?とわたしに尋ねた。星の位置がわるいからね、などと適当なことを言い、たくみはふぅんと言って長靴を履いて出て行った。厄介なのは森田さんだ。森田さんは、うちに住んでいるおじさんで、ママ