見出し画像

【心は錦】ノボロギク

最近のニュースは、深刻さを増すばかり……
何だか明るい気持ちになれず、下を向いて歩いていると、
アスファルトの隙間から、ちょこんと顔を出している、このお花を見つけました。

ノボロギク……頭花が5mmくらいしかない、小さな花です。
無邪気な子どものような可愛い姿を眺めるうち、少し楽しい気持ちを取り戻すことができました。

ノボロギクは、漢字で書くと野襤褸菊。いや書けません💦

命名したのは日本の植物学の父、牧野富太郎さんです。
ちょうど先日、牧野富太郎さんの伝記(子ども向けですが)を読む機会がありました。

牧野富太郎さんは、高知の裕福な商人の家に生まれたのですが、植物好きが高じて、研究のため上京します。
しかし、実家の財産を研究につぎ込み、実家は没落。
家計を助けるために奥さんが始めたお店の売上さえも研究費に使ってしまい、とても貧しい生活だったそうです。
また、学歴が小学校卒のため、度々研究を妨害されるなど、苦労したとも。

そんな苦境の中でも、生涯研究を止めなかった牧野さん。

正直、周囲の人たちにとって、賞賛される生き方とは言い難い部分もあったのかもしれませんが、
牧野さんが生活のため、お金にならない植物の研究をあきらめて堅い職についてしまっていたら、
日本の植物学はもっと遅れていたのかもしれません。

ノボロギクは、当時もおそらくそれほど珍しい植物ではなかったと思います(外国から入ってきた帰化植物なので、今よりは少なかったかもしれませんが)。
でも、目立たない雑草に過ぎないこの草に名前を与えた人は、日本にはそれまでいなかった。

牧野さんもきっとこの草を見て、何かときめくものを感じたのだろうと思うと、共感せずにはいられません。

「襤褸は着てても心は錦」という言葉は、牧野さんのためにあるようにも思えます。
(実際は、牧野さんは植物観察の際、植物への礼を示すために正装をしていたそうなので、襤褸は着ていなかったと思いますが……)

人の人生には、理屈やモラリズムでは割りきれないことがあるのかもしれないな…… なんて考えました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?