オランダの小学校で模擬選挙〜オランダの主権者教育の取り組み【355】
先週、オランダの子ども向けニュース番組'NOS Jeugdjournaal'では、選挙が行われる週でもあったことから、選挙に関するニュースが流れていました。子どもたちが将来政治に関われることがとても大切なことだと感じられる報道がいくつかあり、その中でもある小学校で行われた模擬選挙について紹介されていたのが印象的だったので、記事に残しておきたいと思います。
オランダ下院(Tweede kamer)選挙
時間は前後しますが、オランダの下院選挙の結果は、極右政党とされる「自由党(PVV)」が150議席のうち37議席を獲得したという報道がありました。
この政党は、イスラム系の学校やモスクを建てることに反対したり、移民・難民の受け入れ反対、脱EUを掲げている政党です。政党の政策をそのまま法案として通すために必要な過半数には程遠い議席数ですが、この政党が第一党になったことを踏まえて、自由・寛容を象徴とするオランダの政策が今後変わる可能性があります。
この選挙結果に対する子どもたちの反応は「ショックだった」という声もあったようです。
「比例代表制」が急激な極右化を防止する
今後オランダも、移民・難民の制限をする流れは少し出てくるかもしれませんが、PVVの政策を単独で通すには150議席のうちの過半数(76)の賛成が必要です。そのため、極端な政策は議会で認められないので、他の政党の意思を反映させた政策になることが期待されます。しかし、今回議席を20近く伸ばしたように、今後もPVVの議席が増え、過半数を超えるようなことになれば、オランダも国際協調から外れる路線に入るかもしれません。
今回の選挙を受けて、「比例代表制」には重要な役割があると改めて感じました。議席の割合でいうと、オランダ有権者の約25%の人がPVVの政策に賛成していますが、残りの75%はそれ以外ということになります。
今後のためにも「民主主義に関する人々の意識」はとても重要だと思います。
有権者でない子どもたちも政治について話し合う
私たちも子ども向けのニュース番組’NOS jeugdjournaal’で、子どもと一緒に選挙前から選挙の報道について確認していましたが、娘の学校でも選挙について議論がなされたようです。娘のクラスでは、あまりPVVに賛同する子たちは少なかったようです。
この年齢から、国政への関心を持つことができるのは素晴らしいことだと思いました。「自分はPVVには賛同しないけれども、なぜこれだけ得票数が集まったのか」という疑問が、社会へ目を向けるきっかけとなり、それから自分とは立場が違って今の政策に不満を持っている人たちが何に困っているのかを理解する助けになれば良いと思います。
子どもたちは、有権者でなくても、自分たちの考えを持ち話し合う機会があることで、政治への関心を高めていくのだと思いました。
今回は、その小学校で行われた模擬選挙について、「主権者教育」という観点で、魅力的な活動だったのでこの記事に記録しておきたいと思います。
政党を作り模擬選挙をした小学校
Op deze school hebben ze eigen partijen én verkiezingen
(この学校では、独自の政党や選挙があります)
ニュースの簡単な内容
子どもたちは自分達の政党を作って、政策について説明するための準備をしているシーンから始まります。自分達の政策を表すものを使って、自分達のブースを彩っています。
5つの政党に分かれてそれぞれが大切だと思う政策について動画を撮影したり、実際に学校の有権者となっている下級生たちに、自分たちの政策について説明します。
この小学校では、以下のような模擬政党がありました。
・DW(Dieren Welzijn):動物愛護を進める政党
・スポーツ党:スポーツの時間を増やしたい政党?
・PVK(Partij voor Kinderen):子どもたちが外で安全に遊べるように、スケートパークの新設
・VDB(Voor de Boeren):農業政策を大切にする政党
・動物保護を訴える政党:車に轢かれる猫 一人で政党をしている子もいる
有権者の下級生の子どもたちが説明を聞きにきて、最終的には投票します。最後には、実際にクラスで投票の数を数えて、子どもたちがその結果をふまえてコメントをしています。
自分にとって大切だと思う政策だったとしても、年齢や住む場所が変われば、それぞれの人の考えも異なり、多くの支持を集められるかどうかはまた別の話で、そういった経験が、自分以外の他者の視点を学ぶ良い機会になると感じました。
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