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海外育ちの子どもが感じる漢字学習の難しいところ【Aflevering.231】

 私は2年前から日本語教室で子どもたちに日本語を教えています。それまでは、日本の公立高校で社会科教諭として働いていました。
現在私が教えている子どもの年齢は高校生に限らず、下は4歳から上は18歳までです。これまでと違い、幅広い年齢の子どもたちのサポートができることに喜びを感じています。

 私がこの2年間で学んだことは、子どもたちの海外での漢字学習は本当に難しいということです。今回は、海外で生活する小学生の子どもたちの漢字学習のサポートをしていて感じていること、そして今その難しさを感じながらも工夫して取り組んでいることなどをまとめておきたいと思います。

小学生スタートとともに始まる漢字学習

 Eduble日本語教室では、教科書を使った学習とは別に、漢字だけを学ぶ時間を設定しています。特に1,2年生では教科書と同じ順番で学ぶのではなく、ジャンル毎に分けて学習を進めます。それは、それぞれの漢字や漢字に含まれるパーツが示す意味を理解し、3年生以降の漢字学習にも活かせるようにしたいという理由があるからです。小学生で習う漢字1026字をそれぞれ別個のものとして学ぶのはかなり厳しいと感じます。そのため、「へん」や「つくり」の意味、そしてそれぞれが持つ「音」などを意識づけておき、漢字学習に活かそうと考えています。

 もちろん、全ての漢字を成り立ちで理解するのは難しいのです。しかし、「へん」や「つくり」を使って学ぶことで、丸ごと覚えなければならない漢字の量を減らすことができます。

「音読み」がとにかく難しい

 音読みは、その音だけを聞いても意味を理解するのは難しいです。日本語に慣れている子であれば、その漢字の意味と音を使って熟語を思いつくことができます。しかし、そもそも日本語でのインプットが少ない子にとっては音読みを理解する手かがりがありません。

 そのため、段々と理解できない漢字が増えてきて、次第に学年が進むにつれ意欲が削がれていくことがあると感じています。

教室に通っている子どもたちの漢字学習の進捗状況

 私が子どもたちの漢字学習で期待することは、「漢字がある程度読める」というレベルに到達してほしいと思っています。つまり、読みたいと思った日本語の本を自由に選んで読めることや、日本語で書かれたインターネットの情報や掲示物から情報を得られるようになってもらいたいのです。

 とはいっても、文字を認識できるようになるには「書く」という動作も大切です。そこで重要なのは、「書けるようになるために書く」ことを目標にするのではなく、「読めるようになるために書く」ということです。
 授業では、一緒に書いて読み方や成り立ちを確認し、宿題で書く練習と漢字や熟語が含まれる文章を書く活動も取り入れています。そして、翌週にはクイズレットやプリント(漢字が含まれる文章が書かれているもの)を使って漢字の読みの復習をします。

 ただ、正直なところ週に1回のインプットとアウトプットには限界があります。家庭で本を読む習慣がある子や、自然と日本語に触れる環境のある子は少しずつ漢字の学習が進んでいきますが、日本語教室でのみ日本語に触れる環境がある子にとっては厳しいです。
 この課題を解決するために、家庭でも読むための漢字学習や授業の復習ができるようにYouTubeの動画やクイズレットのコンテンツを作り変えているところです。もし、ご興味があればご覧ください。

↑読むための漢字(1年生)

↑読むための漢字(2年生) ※現在更新中

↑クイズレット(復習用漢字テスト) ※現在更新中

子どもにとって何のために学ぶのかを問い直す

 子どもたちの漢字学習の進捗について考える時、必ずしも日本で決められた進め方に合わせる必要はなく、日本語のインプットが限られている海外では少しペースを落として学ぶことが必要だと考えています。本人たちのペースに合わせた方が、少し遅くはなっても確実に前に進んでいくことごできます。荒くスピーディーに進めるのではなく、着実にゆっくり前に進めていくのです。
 その方が、子どもたちは置いてけぼりをくらうような感覚にならないので、学び続ける姿勢を見せてくれます。

一緒に学習する仲間のありがたさ

 とにかく漢字学習は大変です。漢字を学び始めた頃は、新しい文字を書けることが嬉しくて、読んだり書いたりを積極的にしてくれます。しかし、段々と難しい漢字に触れて、覚えた漢字の読み方を忘れてしまったり、書くのが難しくなるにつれて次第に漢字が面倒なものになっていくようです。

 しかし、そんな時に支えになるのが一緒に勉強する友達です。子どもたち同士で勉強の仕方を工夫したり、クイズを出し合ったりして漢字そのものではなく、漢字を使って友達とのやりとりを楽しむようになります。すると、楽しいという気持ちも作用して、前向きに学習する姿勢を維持することができます。

 以上が私がこれまで取り組んできた漢字学習サポートの報告になります。今自分が考えていることも、きっと改善すべきポイントがあり、新しいアプローチがこれから浮かんでくると思います。これからも子どもたちにとってどんなサポートが良いのかを考え続けていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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