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オランダ現地校Groep5(小3)のプレゼンテーション - 本の紹介編[352]

 私の娘はオランダに来て4年が経過し、小学校も5年目に突入しました。オランダ現地の小学校は日本よりも2年早くスタートする(義務教育は5歳から)ので、娘は現在グループ5(9月始まりで小学3年生、日本ではまだ小2)に所属しています。

 今回は冬休み前の大きなプレゼン発表の課題があり、サポート役としてその制作に関わりました。
 オランダはいろんな場面で対話を大切にしており、話すのが好きな人が多い印象です。そういった傾向は学校教育から来ていると感じるので、子どもたちの言葉の発達や表現力を磨くのにどのようなアプローチをしているのか興味があったので、今回は娘からが取り組んだ課題について紹介したいと思います。

 まずは、学校から保護者向けに提示されたプレゼンの概要です。


箱を使った本のプレゼンテーション(概要)

 装飾されたオブジェクトの箱を使って、あなたが読んだ本に関するプレゼンテーションをします。

目標(Doelen)

  • 本をプレゼンすることを学ぶ

  • 要約を作ることを学ぶ

  • 議論に関して自分の意見を述べることを学ぶ

プレゼン作成の手順

  1. 気に入った本を選びます。本はあなたの読みのレベル(AVI niveau)に合わせて選びます。

  2. 選んだ本の要約をしてください。要約というのは、「主人公は誰ですか?」「本の中で重要な出来事は何ですか?」

  3. 選んだ本に関するあなたの意見を書いてください。その本について、どう思いましたか、またなぜそう思いましたか。

  4. 靴が入っている箱で本箱を作成します。作成手順:本に関する写真を使って箱の外側を飾ります。箱の蓋に本の表紙のコピーを貼り付け、蓋の内側に「要約」と「意見」を貼り付けます。

  5. 物語の中で登場する重要な物を5つ探してください。それを本箱に入れてください。

  6. 発表の中で、作品中の読みたい部分を選んでください。最も楽しい、または悲しい部分を選んでください。

  7. これでプレゼンテーションの準備は整いました。頑張ってね!

プレゼンテーションの流れ

①はじめに(Inleiding) 1分程度
 プレゼンテーションが行われる本の紹介と、この本を選んだ理由を教えてください。

②要約(Samenvatting) 2分程度
 あなたの要約を伝えてください。要約を読むべきではありませんが、メモを使用することができます。

③意見(Advies) 1〜2分
 あなたの意見をクラスに伝えてください。

④プレゼンテーションオブジェクト 5分程度
 ストーリーの順にオブジェクト(ストーリーに関する物)を提示し、これらのオブジェクトがストーリーにとって重要な理由を教えてください。

⑤本の朗読 4分程度
 作品の中でクラスのみんなが引き込まれるようなないよの部分を朗読してください。

保護者としてどこまでかかわるのか

小学校低学年の時点では、まだ自分で全体像を捉えながら発表を考えるのは難しいと思ったので、私の役割は「このプレゼンで何が求められているのか、どういう話をしなくてはいけないのか」というプレゼン全体に関する情報提供と、娘が考えた内容がプレゼンの主旨にあっているか、制限時間との関係についてチェックする役割を担いました。

プレゼンの構成を視覚化して内容を一緒に考えました

 幸いにも娘は本を読んだり、制作することは好きなので、「この部分ではこういう話をしてほしいって書いてあるよ」というと、割とスムーズに「じゃあこんなことを言おうかな」といって発表内容を構成していきました。
 ただ小学校低学年では15〜20分ぐらい(?)が集中力の限界なので、毎日少しずつ課題を進めるようにして、本番までに逆算していつまでにどれぐらいできていたら良いかを話し合って決めて、それに従って文章を考えたり、箱の装飾に取り掛かりました。

 私個人としては、小学校のこの年齢からあまり先のことを気にするような生活は望んでいなかったので、時間や作業工程の管理はこちらでそれなりに担うことにしました。話し合った進め方を元に、娘が判断し私がそれに意見するという感じだったと思います。

 基本的には、子どもが自分の力で達成できたという感覚を持てるようにするために、今の子どもの年齢では難しいことは大人が引き受けて、この年齢だったらこれぐらいはということについては自分の力で進めてもらいました。とはいっても何度かは、少しこちらに任せきりになりそうになったので怒ったりすることもありましたが、、、笑

緊張するプレゼン前日

 娘は前日から「発表はいいけど、みんなの前でするのが嫌だ」と言っていました。みんなの前で話すのは緊張するものなので、嫌だという気持ち最もだなと思いました。
 プレッシャーとの向き合い方について親として助言できることはなさそうだったので、「じゃあそのプレゼン頑張るために、終わった後は何か○○(娘の名前)好きなものでも食べにいこか」と聞くと、それは多少支えになったようです。笑
 私も何か大きな仕事をしなければならない時は、その後にご褒美があると強い気持ちが持てるので、そのように提案しました。

 この年齢はプレゼンの結果だけではなく、達成感が重要だと思います。
 たとえ評価が良くなくても、「自分なりに準備ができてきちんと話せた」とか「前よりはみんなの前で落ち着いて話せた」など、本人の中で何か得るものがあってほしいと思っていたので、「緊張してるってことは、上手くやりたいって思ってるんかもしれんね。緊張しても良いから自分ができると思う範囲でやったらいいよ、とりあえず終わったらスッキリするから美味しいもん食べに行こう」と伝えました。

プレゼンの結果は?

評価は主に3〜5段階です。大きく分けると、
'goed(良い)'
'voldoende(十分)'
'nnv(不十分)'

になります。あとはもう少し細かい評価もあるようです。

 結果として、娘は'goed'をもらえたそうです。迎えに行った時、娘は学校から出てきて開口一番「goedもらえたよ!みんなの方見れてしゃべれたし、よく頑張ったって言われた!」
 私は'voldoende'ぐらいかなと思っていたのですが、娘の充実した顔を見れて安心しました。娘によると先生からのフィードバックは、「先生から提示された内容に合わせてプレゼンが組み立てられていた。他の子たちもその本読みたい!という反響があったから、うまくみんなに伝えられたってことだね」というようなことをもらえたそうです。

 これは個人的な感想ですが、やはりこういった緻密な組み立ては私たち日本人には得意なところかもしれません。
 とは言ってもしゃべるのが大好きなオランダの人たちはこういった課題や家庭での関わりの中で話すのが好きになっていくのではないかと思いました。

「自分の言葉で話す」のはとても大切なこと

 発表については、一部メモの使用が認められていましたが、基本的には自分の言葉で表現しなければいけません。発表時間は約10分なので、すべての原稿を覚えることは不可能です。また、仮に全て覚えたとしても、丸暗記した文章は抑揚がなく、聞き手にとっては苦痛なことが多いです。

 このように自分の言葉で組み立て、表現する機会があるのは、やはりその後の子どもたちの発達に影響してくると感じました。
 私の娘は、人前で話すのは苦手なようですが、自分の言葉で話すのはそんなに苦痛ではないようです(彼女はいつも私にオランダ語の練習だといって、短い寸劇をぬいぐるみを使ってその場でできるような子です笑)。娘の学校はオルタナティブ教育には少し遠いクラシックな教育方針の学校ですが、学校でもきっとそういう機会があるんだと思います。

 苦手なことを進んで取り組むのは難しいことですが、学校や習い事の中でこういった経験を通して成長につながるとは大切なことだと感じます。

 今回、この課題に関わることができて娘ともたくさん話ができましたし、オランダの教育のことがまた少し理解できたと思います。

 娘に限らず、子どもたちが学校教育の中で、自分という人間と向き合い、自分の強みや弱みを自覚し、他の人とぶつかったり協力したり、遊んだり怒ったり笑ったりしながら、いろんな経験をして素敵な大人になってほしいと思います。

 私にとってもとても良い経験をさせてもらいました。

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