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人間関係がうまくいかなくなるのは、あるものがズレているから!【対人関係の問題の解決法】

こんにちは、野口嘉則です。

「人間関係ってむずかしいな」「なんでうまくいかないんだろう?」そんなふうに思ったことはありますか?

人間関係がうまくいっていないとき、一体なにが起きているのか。
どうすればそれを解決できるのか?
今日はそれをお伝えしたいと思います。
人間関係がうまくいくヒントを、ぜひ手にいれてくださいね!



<人間関係がうまくいかないときに起きていること>


さて、人間関係がうまくいかないときって、なにが起きているんでしょうか?
いくつか具体的なケースを見ながら考えていきましょう。

<A子さんのケース>

会社づとめをしているA子さん。
彼女は、仕事でイヤなことがあった日は、帰宅して夫にその話をします。

「今日上司からイヤなことを言われたの」とか「取引先とトラブルがあって苦情があったの」といった話を、夫も最初は聞いてくれます。
しかし、聞きはじめてしばらくたつと、夫は「そういうときはこうすればいいんじゃない」とアドバイスをし始めます。
アドバイスがはじまると、A子さんはさみしい気持ちになります。「もういい、あなたに話すんじゃなかった」と、話を中断してしまいます。

そうやってさみしい気持ちになることが何度かつづき、A子さんは、仕事でおきたことを夫に話すことはなくなりました。そして夫も、繰りかえされる気まずい雰囲気が苦痛になってきてしまい、2人の間には溝のようなものができてしまいました。

ある雑誌が、「妻が夫に対して抱く不満」について調査したところ、ダントツで多かったのが「話を聞いてくれない」という不満でした。
ところが追跡調査をすると、「自分はちゃんと話を聞いている」と言う夫が多かったのです。
話を聞いているつもりの夫と、話を聞いてもらえていないと不満を感じる妻、この二人のギャップはどこから生じるのでしょう?

詳しく調査したところ、夫がアドバイスをするケースが多いということがわかりました。
夫としては良かれと思ってやっているのですが、アドバイスをされた妻は、「話を聞いてくれてない」と感じることが多いということもわかりました。
妻の多くが求めていたことは、「アドバイスしてほしいんじゃない。わかってほしい」「解決してほしいんじゃない。『それは辛かったね』と寄り添ってほしい」ということでした。

一方、夫の多くは、「妻の話を聞いて、アドバイスまでしてあげたのに、感謝されるどころか、『あなたは話を聞いてくれないのね』などとイヤミを言われる」ということに不満を持っていました。

これ、どっちが悪いって話じゃないんです。二人の関係がうまくいってないときに、なにが起きてるかってことをまず知ることが大切なんです。

他にも、親子関係がうまくいっていないケースもあります。

<B男さんのケース>

40代のB男さんには高校3年生の息子がいます。
受験をひかえた大事な時期に、息子は友人たちとバンドを組んで、バンド活動に夢中になっています。また休日は、彼女とのデートに明けくれています。

B男さんは「バンドや彼女のことは後まわしにして、今は受験勉強を頑張ったほうがいいぞ」と何度も忠告しますが、息子はあいかわらずバンドと彼女に夢中です。

ついに怒りを爆発させたB男さんは、「お前、いいかげんにしろ! 受験が終わるまでバンドもデートも我慢ぐらいして勉強しろ!」と息子にどなってしまいました。それ以来、息子は口をきいてくれなくなりました。

実はこのB男さんのケースは、さきほどのA子さんのケースとは決定的に違うところがあります。それがなにかということは、後でお話ししますね。


<役割期待のズレ>


一旦、A子さんのケースに戻りましょう。
彼女は、夫に対して「アドバイスなどせず、ただただ私のことをわかってほしい」という期待を持っていました。
つまり「話を共感的に聞く」という役を、夫に期待しているんですね。これを【役割期待】と言います(元々は対人関係療法で使われる言葉です)。

いっぽう夫は、A子さんに対して、「自分が話を聞いてあげたことやアドバイスをあげたことに感謝をしてほしい」という期待をしています。つまり「こちらがしてあげたことに感謝をしめす役」を妻に期待してるわけですね。これも、役割期待です。

この2人に起きていることは、【役割期待のズレ】なんですね。これが、人間関係がうまくいっていないときに起きていることです。

B男さんのケースでも説明しましょう。

B男さんは、息子に対して、「親である自分の期待にこたえて、勉強をがんばってほしい」と思っていますね。「親の期待にこたえて勉強をがんばる役」を息子に期待してるわけです。

そして息子は、B男さんに、「自分の行動に干渉しないでほしい」と期待しています。つまり、「息子の行動に干渉しない親の役」を父親に期待しているわけです。

そういう意味では、B男さんと息子のあいだにも、役割期待のズレが生じているということです。

だけど、A子さんのケースとBさんのケースは決定的に違うところがあるので、対処方法も違ってきます


<役割期待のズレを埋める>


まずはA子さんのケースの対処方法から考えていきましょう。

もしも、A子さんが夫との関係を改善したいと思っていたら、役割期待のズレを埋める方法を、夫とともに探ることが必要になってきます。そうやってはじめて、役割期待のズレを埋める方法が見つかっていきます。

では、どうやって役割期待のズレを埋める方法を探すのか。
すぐにでも実践しやすい、シンプルな方法を今日はお伝えしますね。

相手との役割期待のズレを埋めるためのステップに入る前に、まずやるべきことがあります。それは【場づくり】です。
役割期待のズレを埋めるための対話がうまくいくかどうかは、この場づくりにかかっています。

おたがいが脅かされることのない、安全な対話の場をつくるためには、どんなルールを決めておくといいか。それを二人で話し合って、いくつかルールを決めます。これが場づくりになります。

ルールの例も挙げておきますね。

・どちらか一方が対話をやめたくなったら、もう一方は、その理由を聞かずに、対話をやめることを無条件に受け入れる。

・あることについて質問されたくないときは、『そのことについては質問しないで』と言う権利が双方にある。一方が『そのことについては質問しないで』と言えば、もう一方は、そのことについて質問してはならない。

以上のような、対話の安全性を保つルールを、二人で話し合って決めます。
このルールがあれば、安心して対話を進められる。双方がそう思えるルールを決めてください。これが場づくりになります。

場づくりができたら、いよいよステップ1です。それは、まず、相手が自分にどんな役割を期待しているかを聞くんです。

僕たち人間って、まず最初に自分の話を聞いてもらえると、次は相手の話を聞こうと、耳がひらくんですね。

A子さんのケースであれば、A子さんが夫との関係性を改善したいと思ったらまず彼女が夫に聞きます。
と言っても、「あなたは私にどんな役割を期待してるの」っていう言葉だとちょっとピンとこないですよね。
そこで「あなたは私にどんなふうに接してほしいの?」とか「どんな言動をとってほしいの?」とか、日ごろ期待していることをいろいろ聞いてみるといいんです。

相手の期待を先に聞いちゃうと、なんだか自分のほうが不利になるんじゃないかって勘違いされる方もいますが、そんなことはありません。期待を聞くということと、それに応えることができるかどうかは別問題なので、まずはいったん聞いてあげることがポイントなんです。相手が話しているときに、「それは無理」みたいな否定をせずに、まずはひととおり聞きます。


<役割期待への返答と代替案>


では次のステップ2を教えますね。
最初のステップで相手の期待をひととおり聞いたあと、ここで無理して役割期待に応える必要はないんです。

相手からあらためて言葉で聞いてみて、「そういうことを期待していたんだな~。それだったら、自分は意識すればできるぞ」と思ったら、「これからは意識するよ」って伝えることもできますね。

一方、「その期待に応えるのは自分にはかなり難しいんだよなあ」っていう場合は、それを誠実に伝えればいいんです。
そのとき、「今教えてくれた期待に応えるのは、私にはちょっと難しいんだけど、その代わりに私ができることはなにかいっしょに考えてもらえない?」というふうに、代替案をいっしょに考える提案をしてみてください。

ムリな負担をかかえて奉仕する必要はいっさいないんです。
ただ、ちゃんと言語化して聞いてみてはじめてわかることや勘違いが解消されることもあるんですね。だからまずはちゃんと言葉にして、話してもらう。そして、聞いたうえで、出来る出来ないを誠実に伝えて、出来ない場合にはその代替案をいっしょに考える提案をするといいんです。


<自分がもっている役割期待を伝える>


そして次のステップ3では、「自分が相手にどんな役割を期待してるか」を「相手を責めることなく」「相手にプレッシャーをかけることなく」「相手が受け取りやすい形で」明確に伝えます。

最初に「もしかしたらこれは難しいことかもしれないけど、まずは私が勝手に期待してることを聞いてほしい」と伝えてみるといいでしょう。
例えばAさんの場合なら、「あなたにとって出来ることかどうかはちゃんとあとで聞くから、まずは私がどんな期待をしているか聞いてくれる? もし私の期待に応えるのがむずかしいなら、それは私がムリな期待をしているってだけだから」といったふうに前置きをしてもいいですね。

Aさんのケースで、続けてこんなふうに夫に伝えることができます。
「私は、仕事でつらいことがあったときに、自分でかかえるのはしんどいのよ。だから、あなたに話を聞いてもらえるとすごく嬉しい。だけどね、そこでアドバイスをされたり、解決策を提案されたりすると、なんだか私の気持ちが置き去りにされたような気がするの。もちろんあなたに悪気がないことはわかってるんだけど、私は勝手にそういうふうに感じちゃうことがあるのね。だから私の期待としては、アドバイスじゃなくて『つらかったね』とか、そういう共感の言葉が欲しいんだ」

こんなふうに、相手を責めるニュアンスやプレッシャーをかけることはなしで、相手が受け取りやすいように、だけど自分が望んでいることを具体的に伝えることが大切なんです。


<役割期待が妥当なものか聞く>


その次のステップ4に進みましょう。
次は、自分が伝えた役割期待が妥当なものかどうかを聞きます。

実際に、どれだけ期待を持っていたとしても、こたえるのがムリなものはムリですし、むずかしいものはむずかしいですよね。「その期待に応えるのがむずかしい」という返事であれば、代替案をいっしょに考えてもらえないか提案すればいいんです。
とにかく「相手にプレッシャーをかけず」自分が伝えた期待にこたえてもらうことが可能かどうか、というのを聞きます。

以上のシンプルな4つのプロセスをちゃんとやると、役割期待のズレは埋まっていきます。
そしてなによりも、このプロセスを繰りかえすことで、夫婦間の絆が深まり、パートナーシップがとても豊かに育まれます。


<話しあいでは解決しないケース>


続いて、先ほどのBさんのケースを考えてみましょう。

息子に勉強をがんばってほしいBさん。さっきの4つのプロセスをやって、息子が「その期待にはこたえられない」となったときに、Bさんが「じゃあ代替案をいっしょに考えよう」と言ったら、どうなるでしょうか? 多分、「いつまでもうるさいなー、ほっといてくれよ!」ってなりますよね。

実はこれ、Aさんのときとは全く違うケースなので、さっきのやり方ではうまくいかないんです。

息子とのやり取りのなかで、Bさんがやってしまっていることが1つあります。いったいなんだと思いますか?

それは、【Bさんは、息子のパーソナルスペースに侵入してしまっている】ということです。Bさんは、息子との間に、健全な境界線をたもてていないんです。

この境界線は、バウンダリーとか、ボーダーラインと呼ばれています。
バウンダリーは、健全な人間関係を育むうえでとっても重要なものです。
自分の行動は自分で決めたい、というのは人間のきわめて基本的な欲求・権利ですよね。Bさんに悪気はないのかもしれませんが、彼は息子の基本的な権利を侵害してしまっているんですね。つまり、バウンダリーが壊れているのです。そして、そのようなケースでは、話しあいが建設的じゃなくなるんです。

アドラー心理学を紹介してベストセラーになった『嫌われる勇気』という本に、次のようなことが書いてあります。

あらゆる対人関係のトラブルは、
他者の課題に土足で踏み込むこと、
あるいは自分の課題に土足で踏み込まれること、
によって引き起こされます。
 
誰の課題かを見分ける方法はシンプルです。
「その選択によってもたらされる結末を
最終的に引き受けるのは誰か?」
を考えてください。

『嫌われる勇気』(岸見一郎、古賀史健 著)より引用

アドラー心理学では「課題の分離」という言葉で説明されます。なにが自分の課題でなにが相手の課題なのかを知り、相手の課題に介入しないことが大切なんですね。


<課題の分離と見わけかた>


なにが自分の課題でなにが他者の課題なのか、を見分ける方法はいたってシンプルです。

「その選択によってもたらされる結末を、最終的に引きうけるのは誰か」

それだけで、もう誰の課題か明確になります。
その選択によってもたらされる結末を、最終的に引きうける人の課題なんです。それ以外の人がそこに干渉すると、その人間関係はうまくいかなくなります。これが「課題の分離」ですね。

もういちど、B男さんの息子のケースを考えてみてください。
バンドや彼女と過ごす時間を優先するのか。それとも受験勉強を優先するのか。そのどっちを選択するかによって、その結末を最終的に引きうけるのは誰でしょうか?
もちろん、息子ですよね。だからこれは、B男さんではなく、彼の息子の課題です。

B男さんも親ですから、自分の考えを息子に伝えるのはいいんです。でも、その考えを採用するかどうかは息子が決めることですね。そこに干渉してしまうとしたら、これは息子の人生に土足で踏みこんでいることになります。そうなると、もしも息子が心理的に健康であれば、この親子関係はうまくいかなくなります。
(逆に、そのような親の干渉に対して息子が反発をせず、親の期待に応えようとするならば、僕はこの息子のことが心配になってしまいます。つまり息子は、心理的な発達という面で、大きな課題を抱えていることになります)

というわけで、相手との役割期待のズレについて考えるとき、自分が相手の課題に侵入するような期待を持っていないか、っていうのをまず考える必要があります。
逆に、相手がこっちの課題に侵入するような期待を持ってしまっている場合は、「それは私の課題だから干渉しないで欲しい」ということを伝える必要があります。

おたがい、相手の課題に侵入するような期待は、手放すしかないんですね。


<ゲシュタルトの祈り>


もしもあなたが、ほんとうの意味で双方がハッピーな人間関係を作りたいならば、いちばん重要なことを覚えておいてください。

それは、「相手が自分の期待通りになることなんてない」という現実を、おたがい受け入れあうこと。そして、どこまでならたがいの期待に応えあえるかを丁寧に探っていくことが大切、ということです。

最後に、ゲシュタルトの祈りという詩を紹介します。よかったら、味わってみて下さいね。

私は私のことをする。

あなたはあなたのことをする。

私はあなたの期待に応えるために、生きているわけではない。

あなたもまた、私の期待に応えるために、生きているわけではない。

私は私、あなたはあなた。

もしも偶然私達のこころが触れ合うならば、それは素敵なことだ。

もしも触れ合えないとしても、それは仕方のないことだ。

フレデリック・パールズ「ゲシュタルトの祈り」

<まとめ>

・役割期待のズレがあると人間関係はうまくいかない
・4つのステップで役割期待のズレを埋める
・いっしょに解決策や代替案をさぐっていく
・その選択による結末を引きうける人が課題と向きあう人
・他者の課題については、手ばなすことが必要

僕のnoteでは、読めば読むほど「自己肯定感が高まり」「人間理解が深まり」「人間力が養われる」コンテンツをお届けしています。

これからも確実に自己実現へ向けて進みたい方、ぜひフォローをしてたくさんのヒントを受け取ってくださいね!

次回は、【レジリエンス】についてお話をします。
レジリエンスというのは、心の回復力のことです。
生きていると、落ち込むことや傷つくことってありますよね。だけど、大事なのは、そこからちゃんと回復して立ちあがってくることなんです。それって一体、どういうふうにすればいいのか、というお話をしたいと思います。

ぜひ、お楽しみに!


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