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【第15話】「田舎⇔東京ぐらし」は始まったばかり①

 いやー。田舎暮らし、くっそ忙しいです。こっちの島は夜8時でもまだ明るいんですが、昨日はそれまで畑で防鳥用のヒモ張ってたもんね。で、2時すぎに寝て今朝は6時起き。(ハチが活動を始める前に)朝早くから洗濯&洗濯干しですわ。

 ここ1週間で新たに発見した、田舎暮らしの利点。それは「原稿作業を″缶詰”でやるのが容易」だってこと。作家さんなどがホテルにこもってやる、アレですね。ジュンク堂やユザワヤ、ギャラリーなどの誘惑がないので、意志が弱くても引きこもりが簡単。緑いっぱい、野鳥の天然BGMで閉塞感がゼロです。身体がなまったら、家の前の畑で雑草むしればいいんだし。

 これは今朝の収穫。来週からは、ここに大玉トマトや枝豆が加わることだろう。

 ″缶詰”の利点を発見したということは、まぁ、つまりそういう状態だったわけですな。仕事原稿の〆やら、カラス雑誌『CROW'S』の入稿追い込みやらで、まともに寝ておらん。

 だからこのブログにも、初帰京のことすっかり書けないでいた。まー、時間をおけば不用ものは沈下するので、原稿としては美しいだろう。だけど、今はパッションの真空パックをしておきたい。そうこうしているうちに、また3日後には、撮影で2度目の東京出張だ。だめだ、流される。「今の私」が「明日の私」に上書きされてしまったら、今の私はいなくなる。なんだこれ、記憶障害か? 

 記憶喪失恐怖症がなんとか踏みとどまる、箇条書き日誌。Here we go!


◇泊まる場所はなんとかなった

 「田舎に暮らしながら、東京でも仕事する生活」を叶えるには、宿泊場所の確保が急務である。ちゃんと調べてみたらビジネスホテルって、1泊6000円ぐらいするんですね。いつも泥酔して深夜のねじ込み宿泊(3000円程度)だったから、予約しても同じかと思っていた。

 こりゃ払えん、と日和っていたら、前回書いた『季刊レポ』のライターでもあったカルロス矢吹さんや、大学時代の友だち(現在は仕事仲間でもある)がタダで泊まる場所を提供してくれることになった。本当にありがたい。文字通り身体で返す……ことは両人とも期待してないと思うので、なんか面白がってもらえそうなこととか自分の技術で恩返ししたいと思う。

 埼玉の実家にも、「最長2泊なら宿泊可」ということでOKもらった。こう書くとドライな関係と捉えられちゃうかもしれないが、父はまだ現役で仕事をしており(朝5時に出勤するような毎日だ)、まぁ狭い家ですから。老人ホームの祖母のことで大変なこともあって、色々がんばってくれた上での2日なのだ。

 今までは、同じ埼玉に住んでいても、半年以上会ってないことはざらだったので、これからは逆にちょいちょい会える気がする。いいことかもしれない。

◇飲んで食って笑って…、泣かない!

 初の帰京では、逢いたい人に逢いに行った。

 6月20日、表参道アートフォト展でのトークセッションに登壇。

 中央は、「アートフォトスキル認定講座」監修のプロカメラマン宮木和佳子、右は同じくプロカメラマンで講師の田原朋子(親しみを込めて敬称略)。女カメラマンって皆そうかもしれないけど、オッサンと少女が同居したようなかわいい人たちである。

 教え子(と言っても私より年上の方だけど)が、ご自分の修了制作をわざわざ見せに来てくれたのには感激した。レッスン期の途中で移住してしまったため、彼らの卒業に立ち会えなかったのだ。みんなの成長が見られて、心の底からうれしかった。

 前日6月19日は、『季刊レポ』の打ち上げ。これで終刊だっていうのに何かの出版記念パーティーですか?っていうぐらい明るくて、顔ぶれも豪華だった。トロさんが若手たちに「新しい繋がり」を残そうとしてくれてるのが分かったし、レポでできた磁場みたいのはまだ全然なくなるような気がしなかったので(そう思いたくない、というものあるが)、とにかく食って、飲んで、しゃべって、笑った。感情の種類が特定できない涙が出そうになったときは、ワインで押し込んだ。

 いつもは泣き上戸炸裂だったんだけど、今日泣いたらレポっぽくない気がしたから。最後ぐらいはキレイな私でいたい……って、別れ際のカップルか。

 なんと憧れの南伸坊さんもいらしていた。ほろ酔いの勢いもあってカラス雑誌を作っている話をしたところ、ニコニコしながらこうお答えになった。「カラスにはね、お辞儀を教えたらいいと思いますよ。やっぱ向こうからこうやって(と実際にカラスの真似)、頭を下げられたら、とりあえず悪い気はしないよね」。伸坊さんは、やっぱり本そのままの方だった。こういうみずみずしい感性をいつまでも持っていられる大人、自分もそうあれたらいいなぁと思う。

 やっぱり来てよかった。帰るのが名残惜しくて終電を逃し、結局タクシー。5000円かかっちゃったんだから、何のための節約かという話なんだが、まぁ今回は大目にみてやろう。

 次は、島では躊躇していたアレを買った話。また、午後にでも続き書きます。

                             (続く)

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