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江戸中期から伝わる「皮なめし」をイノシシでやってみた ②近所の川にさらす

皮をさらす川を探した翌日、早速イノシシの原皮をかついでお目当ての山に入りましたよ。

このシリーズは、ある狩猟雑誌の取材をかねてチャレンジしています。プロのアドバイスも交えて手順をまとめた記事は、誌面で公開されます。(3月には告知ができると思いますので、お楽しみに!)

原皮よ、こんにちは

さて、なめしの前工程として、毛付きの原皮を川にさらす「川漬け」という手順があるのは、前回書いたとおり。

懸案事項としては、腐った塩漬けの原皮が死ぬほど臭いんじゃないか!?ということだった。

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塩が液状化したドリップとなり、袋の上からでも若干生臭い。アジアの裏街道にあるゴミためのような匂いがする。

万が一の事態を避けるために、食後の作業は避けた方がよいのでは・・・と考えあぐねていたところ、我が島でイノシシ革の販売やクラフトをしているJishac(ジシャク)のゴリさんが、「廃棄予定の皮を使っていいよ!」と言ってくれた。

メルシー、ゴリさん!

【こっそり宣伝】そんなゴリさんや、我が家が所属する「しまなみイノシシ活用隊」はめっちゃいいところです。一緒にやってみたいという人、随時募集中ですよ。初心者歓迎。

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♪ちょうど一年前に~ この獣道を通った夜~

はい、1年前の1月にとれた美しい金髪ブロンドガールです。プロの保管術により匂いゼロ。ありがたく使わせていただきます。

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広げても気品がある。毛皮にすればよかったかな、と一瞬躊躇したがこのまま進めます。

水は、毛の流れに沿って肩からお尻に流れたほうがいい気がしたので、解体用の包丁で穴を肩の2カ所に開ける。あんまり端っこでも、水流にひっぱられて裂ける可能性があるので、端から5、6センチの部分に包丁で切れ込みを入れた。

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皮をつなぐロープは、トラック用(9mm×20m)をチョイスした。たぶんナイロン製。色がオレンジと緑で、ミカンっぽいところもお気に入り。なんせここは愛媛だからね。

(これが後に、大きなアダとなったのだが・・・)

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ちなみにこちらが、冒頭の腐り皮。ウチのわなで獲ったあと、家に隠し持っていたせいだ。オスだから腐女子・・・じゃなくて、腐男子。ふつうのイノシシは、こんな感じの濃い茶色です。

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恐る恐る広げてみると・・・

匂いは屋内だとツラいが、屋外なら気にならない程度。ただ、触れたゴム手袋が死体のような異臭を放っている。油断禁物。

裏側がまだらに黄ばんでいるのが少し気になるが、なめしの過程で消えていくのだろうか。

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ふだんは軽乗用車派だが、このときばかりは夫の軽トラを拝借。パワステはついてないけど、オートマなんだぞ! 松山の中古車店でたった15万円で買った、かわいいベイベーさ。よろしく相棒!

いざ、悠久のガンジス川・・・ではなく、ダム奥のせせらぎへ!!

まさかのロープで悪戦苦闘

この世の中、夢に描いた「青写真」と「現実」は一致しないものである。それは、皮なめしにおいても同様であった。

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前回描いたこの吊り方が、ぜんぜんできない! 川の後ろがすぼまっているために、もっと前方から吊り下げないと尺が足りないのだ。

木、役に立たず。ロープはその辺にごろごろ転がっている大きめの石にくくりつけることにする。石は木と違って移動できるし、便利ですよね。そういえば姫路の昔の写真も、石支柱だった。やはり伝統技法には知恵がつまっている。

じゃーあとは、ロープを切って結んでくくり付けるだけ。楽勝!

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と思いきや、ロープが全然切れない! 小型ノコギリで10分やってもコレ。なにこれ、まじキモーい!(女子高生風)

丈夫さと、みかん的キュートな配色にひかれて購入したが、パッケージを見ると耐久重量が700kg以上になっている。ガチの業務用荷造りロープだ。こんな頑丈さは、ひらひらの皮なめしには余計だったのかもしれない。

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ロープは3つの細ロープで構成されていた。ヒーローのグループを悪党が個別におびき出して攻撃していくように、1本ずつハサミで切ると簡単に切断できました。よかったね!

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一難去ってまた一難! 今後はロープがすぐにほどけるじゃねえかぁぁぁ!!

スマホのYouTubeで「ロープワーク」検索しましたわ。でも疲れきっていたため、結局自己流のテキトー結びに。「もやい結び」と「ひとつえつぎ結び(?)」ぐらいは、マスターしてから出かけるべきだった・・・。

滑るナイロンじゃなくて、締まりのいい綿素材でもよかったような気がする。このあたりは革王に今度聞いてみよう。

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川が細いので、ふたつの皮を縦に連結結び。こうして見ると、イノシシの毛にも個性があることがわかる。ウチの島にはイノブタも多いんだ。

あとは、スコップで皮底を掘ったりして、粛々と作業。(西日本大震災で土砂が流れ込んでいたのか、ほとんどが砂で掘りやすかった)

ついに川漬け、完成! 驚かれない配慮も

なんだかんだで、ようやく・・・

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でけたー!! うえぇぇ~い!!

(↑ 完成の全体像は誌面用にとっておきたいので、へっぽこ野郎の自撮りでスミマセン:笑)

うしろ、見えますかね?? 手前が川の上流。レディーファーストってことで、金髪娘を前にした。後ろの男子はちょい腐ってたから、匂いが女子に移る可能性を考えての配置だ。

最初前方2カ所だけを固定したが、水流で後ろがめくれてしまったため、左後方も固定。

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石にはこんな形で巻き付けて、先っぽをロープの間にねじ込んだだけ。大雨にならない限りは大丈夫でしょう。きっと。

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万が一、一般の人が見つけてもびっくりしないように、プラ段で自家製の標識をつけた。何かあれば、電話番号は書かなくても集落名と苗字だけで、だいたい分かる。田舎ネットワークの強みだ。

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水温は8℃。バクテリアも動かなくて、いい感じ。

あとは2、3日待って、毛が抜けるのを待つばかり。このあたりは野犬も多いので、いたずらされないかだけが心配だ。念のため、明日も見に来よう。

♪わたしのかわいいイノシシ皮ちゃーん、早く立派な革になぁれ~

おまけ:気力&体力は残しておこう

それにしても、疲れたなぁ。ロープを無理やり切ったり、川底掘ったりして、腕がぱんぱん。パワステなしの軽トラも、ハンドルが重いいぃぃぃ~。

と、ふらふらで帰ったところ・・・




DSC_1178★軽い

家の納屋に軽トラで突っ込み、シャッターを破壊。

押しても引いてもびくともせず。ネットで見たら、「交換だと10万円」とか書いてあって背筋が凍る。

ショックのあまり、ビールと焼酎飲んで『監獄学園』見て寝ました。この学園のドS美人理事長がカラスを飼ってるんだ。名言は「カラス好きに悪い人はいない」! 

ふはははは、ふははは~(現実逃避)


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