ヨシノヒロ

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【小説】 夏休みの悪魔さん

 小学六年生の夏休み。  うだるような暑さの中、シュンヤは小学校へ向かっていた。  学期末の終業式の日、上履きをくつ箱に忘れて帰ってしまったのだ。シュンヤ自身は登校日に取りに行けばいいと思っていたけれど、「ちゃんと洗わないと、くさくなるでしょう!」と母がうるさかった。 「くつがきたないと、ハルカちゃんにきらわれちゃうよ!」  母の一言にシュンヤはビックリした。だれにも話していないのに、どうして自分が気になる子を知っているんだろう……でも、それを聞くのは「自分はハルカが

    • 【小説】 彼は負けず嫌い、その切実な理由

      「うっ、うー……う、かぁ?」 「ほら、早く早く。答えてよ」  彼は悩ましい顔をしている。  もう二人で長いこと、こんなやり取りを続けている。 「そうだな、"ウツボカズラ"!」 「はい、アウトー! それもう言ったよ、私の勝ち!」  私は嬉しくなって思わず声をあげてしまった。 「ええ、まだ言ってないよ!」 「言・い・ま・し・た! 絶対、言いました!」 「言ってない!!!」  彼はムキになって否定してきた。負けず嫌いだなぁ……なんだか、遊びに真剣になっている様子が余計にお

      • 【小説】 僕の「平凡ないつもの」日常

         ある日、テロリストが学校を占拠した。  テロリストたちは、現在の政権に対する不満を声高に述べている。その批判の内容は冷静に考えれば一理無くもないが、テロリズムという手段で訴えている時点で自らの正当性を失っている。  いわゆる「語るに落ちる」ってやつだ。ちゃんと正当な手段で、参政権と選挙権を駆使してこの国を変えていけばよかったのに。  授業中にクラスに入ってきたテロリストたちにサブマシンガンを突きつけられながら、僕はそんなことを考えていた。僕は「やれやれ、また厄介なこと

        • 【小説】 ゆるふわ愛され☆猟奇殺人

           あたし、マユミ!  この前、彼氏と付き合って三ヶ月の記念日を祝ったの。せっかくだからお家デートで、美味しいアクアパッツァとケーキを焼いて、二人でお祝いしたんだ。  彼氏はマユミに「指輪にしようか迷ったんだけど、"重い"って思われるかなって……」と言いながら、可愛いネックレスをくれたよ。……んもう、指輪でも重くても何でも、あなたの気持ちが嬉しくないわけないじゃん! もちろん、ネックレスのプレゼントもとっても嬉しい、ありがとう。マユミ、幸せ!  あたしは彼氏をいじめていた

        【小説】 夏休みの悪魔さん

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        • ヨシノヒロ短編集
          6本

        記事

          【小説】 演劇ドッキリ大作戦

          「お邪魔しまーす」 「やっほー!」 「ミキの家、久々だなぁ!」  社会人演劇サークルの公演打ち上げ。僕はカズミ、サトルと一緒にミキの家に遊びに来た。 「……ミキ……?」  キッチンの脇に、赤い色にまみれて倒れているミキの姿があった。近くに包丁が転がっている。ミキの腹部辺りもベッタリと赤く汚れていた。包丁の先端にも付着しており、フローリングの床にもポタポタと散っていた。ミキはうつ伏せに倒れている。顔は横を向いているが、セミロングの髪が顔にかかって表情は見えない。さながら、

          【小説】 演劇ドッキリ大作戦

          【小説】 夏休みのノスタルジア

           小学六年生の夏休み。  うだるような暑さの中、シュンヤは小学校へ向かっていた。学期末の終業式の日、上履きを下駄箱に忘れて帰ってしまったのだ。シュンヤ自身は登校日に取りに行けばいいと思っていたが、「ちゃんと洗わないと、臭くなるでしょう!」と母がうるさかった。当初は面倒くさくて抵抗していたのだが……。 「靴が汚いと、ハルカちゃんにも嫌われちゃうよ!」  その一言で白旗を挙げた。シュンヤは驚愕した、どうして自分の好きな人を知っているのかと。誰にも話していないはずなのに……か

          【小説】 夏休みのノスタルジア