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新潮文庫の二〇六頁に。

彼女はうなずいてひとくち飲んでから、おととい教えて貰った『虞美人草』をさっそく読みはじめたんですよ、と言い出した。ただ夏目漱石の文章がハイブロウ過ぎて、あたしなんかには読みづらくて、なかなか前に進みません、津田伸一の作品なら徹夜してでも読み切っちゃうんですけどね、でもあの運命についての文章は出てきましたよ、見つけました、さっき地下鉄のなかでやっと、新潮文庫の二〇六頁に。

>鳩の撃退法 下|佐藤正午 著 小学館文庫 p.221~222

今年の6月に読んだ、佐藤正午さんの『鳩の撃退法』。その中に、夏目漱石の作品が出てきます。『虞美人草』です。「ぐびじんそう」と読みます。
濁点3音から始まる印象深い名前のこの作品は、『鳩の撃退法』で初めて知りました。

登場するのは、小説家である主人公の津田伸一が、彼の長年のファンだと語る女性にバーテンダーと客の立場で会い、過去にも小説家と読者として会っていたという偶然の出来事を知り、その運命的な出会いを夏目漱石の作品を引用して語る場面。こんな一節があるそうです。

運命は丸い池を作る。池を回るものはどこかで落ち合わねばならぬ。

>鳩の撃退法 下 p.222

そのやり取りが印象に残り、名前のインパクトと相まって、時々ふと頭に浮かぶようになった『虞美人草』。夏目漱石の初期の作品だそうで、ちょうど図書館にほかの本を借りに行ったときに目に飛び込んできて、一緒に借りていたのです。

おもしろい偶然は続くものなのか、昨日読み終えた『心の声を聴く』で、河合先生と村上春樹さんの対話の中でもその名が登場します。

というわけで、読み始めてみました。『虞美人草』。たしかに、簡単に読める文章ではありません。漢文と古文が混ざった時代劇を見ている感じ。用語の注釈を読むと、漱石は少年時代に習得した漢文的教養が深かったので、そんな文章になっているそうです。『鳩の撃退法』で、津田伸一のファンとして登場する鳥飼なほみと同様、なかなか前に進みません。

それで、ちょっとズルをして『鳩の撃退法』を開き、該当する場面を読み直しました。今回のnoteの冒頭部分です。

新潮文庫の二〇六頁に。

ありました!
探し物は、見つけやすかったです。

でも、残念ながら、どんな物語を経てその会話が『虞美人草』に登場したのか、ちっとも検討がつきません。
鳥飼なほみが読みづらいと語ったハイブロウ過ぎる作品を、最後まで読むか、とりあえず「運命の丸い池」まで読むか、二十八頁であきらめるか。
さて、どうしましょうかね。

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