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他者と働く【読書のきろく】

違いを認め、溝を認識し、橋を架けて新たな関係を構築する

SNSで紹介されていたのを見かけて、図書館で予約した本。人気が高く、たくさんの予約が入っていて、ようやく順番が回ってきました。僕の後にも、続々と予約が追加されています。

扱われているテーマは、働く場における人間関係。個人と個人の間で交わされる仕事よりも、組織内の関わり方が中心になっています。
同じ目的に向かって協力して働いているはずなのに、一人ひとりを見ていくと、いつの間にか溝が生まれ、ちょっとしたズレもあれば時には対立関係にも発展している。正しいことを言われて、反論の余地はないのは分かるけど納得できなくて気持ちが萎える。どこの組織にもあり得る話です。
そこに対するアプローチが、副題にあるように、「わかりあえなさから始める」こと。

僕たちは、立場や役割、専門性、経験、価値観、環境、文脈などによって、物事に対する解釈が変わってきます。一人の人間でも、状況やタイミングで違いが生まれるから、別々の人間であれば、さらに違うのが当たり前。

その違いを認め、溝を認識し、橋を架けて新たな関係を構築する。

そのための考え方や手法を示してくれるのが、この本です。図説や事例があって、イメージしやすくなっています。
「溝を埋めて、溝がない状態にする」ではなく、「橋を架ける」の意識が大切なんだと感じました。
橋を架けるためのプロセスは、準備、観察、解釈、介入の4段階。溝があることに気づくのが準備の段階で、ここを常に忘れないようにする必要がありそうです。
特に、年齢差や、立場や役職の上下関係があると、無意識のうちにその枠組みの中で対話が進みます。時には、それが解決策から遠ざけてしまうのに。一旦脇に置いて真の課題に向き合うには、違いがあること、溝があること、わかりあえなさがあることを、認識しなければなりません。

この本では、溝を作り出す解釈の枠組みのことを、「ナラティヴ」という言葉を使って表現しています。「物語」「話術」「語り」といった意味を持つ言葉です。

上司と部下の関係では、上司は部下を指導し、評価することが求められる中で、部下にも従順さを求めるナラティヴの中で生きていることが多いでしょう。
また部下は部下で、上司にリーダーシップや責任を求め、その解釈に沿わない言動をすると腹を立てたりします。つまり互いに「上司たるもの/部下であるならば、こういうそんざいであるはず」という暗黙的な解釈を枠組みをもっているはずです。
(中略)
つまり、ナラティヴとは、視点の違いにとどまらず、その人たちが置かれている環境における「一般常識」のようなものなのです。
>本書 p.32~34より

いろんな場面で言われることがありますが、「常識」は厄介ですね。こちら側はそれが正しさなので、違っている相手に対して、そちらが間違ってるという気持ちを抱いてしまいます。繰り返すうちに諦めの感覚になってしまわないように、相手をそうさせてしまわないように、気をつけたいです。


組織で他者と働くことを扱う本でありながら、参考文献にエーリッヒ・フロムの『愛するということ』や、「緩和ケア」に関する本が挙げられているのもおもしろいなと思いました。いや、むしろ、他者と働くからこそ、参考にすべきことなのかもしれません。

読書のきろく 2021年59冊目
『他者と働く ─ 「わかりあえなさ」から始める組織論』
#宇田川元一
#NewsPicksパブリッシング

#読書のきろく2021

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