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【読書のきろく】文体練習

これはおもしろい!!

「ひとつの出来事を、99通りの書き方で書く」という書物。

出来事といっても別にたいしたものではない。ある日バスのなかで起こったつまらない喧嘩の顛末と、その張本人を後でたまたま目撃したというだけのことだ。

>文体練習 p.137 訳者あとがき より

ただそれだけ、と言ってしまえばそれだけのものだけど、思わずくすっと笑って「そんなにおもしろいと?」と妻に言われました。

まわりくどい言い方、あらたまった手紙、結末から時間を遡る、予言、夢、といった表現があれば、お堅い老人が、女子高生が、少年が語ればまた雰囲気が変わります。
食べ物や動物に例えてみたり、嗅覚・味覚・触覚・視覚・聴覚のそれぞれの感覚だけでとらえてみたり、擬音をたっぷり組み込んだり、これでもかと韻を踏んでみたり。次はどう料理してくれるの?と、ワクワクしながらページをめくりました。

視点が変われば見え方が変わるという基本的なことを学び、表現のバリエーションを楽しみ、単語の先頭・末尾を削ったり、母音・子音をずらした不思議な言葉を目にしながら、ことばの面白さを改めて味わうことができました。

さんざん語られたあとに、短歌そして俳句での表現を見ると、短い言葉の裏側に広がる世界が同時に見えてとても楽しかったです。

同時に『ウンベルト・エーコの文体練習』も読みました。
アレンジの仕方が違うから単純な比較はできないけど、今の僕はレーモン・クノーの『文体練習』の方が好きです。

自分が書いた作品でも、文体練習やりたくなりました。

読書のきろく 2020年48冊目
「文体練習」
#レーモン・クノー
#朝比奈弘治
#朝日出版社


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