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マチネの終わりに【読書のきろく】

大人の男女のこだわりとすれ違いが、切なく美しく描かれた作品

事前に知っていた情報は、「大人の恋愛が描かれた小説」という程度。ずっと気になっていて、いつか読みたいと思っていた作品です。

最近何となく目に留まる回数が増えたように感じて図書館で予約したら、受け取った直後に緊急事態宣言の発出で市内の図書館は全館休館に。絶妙なタイミングで手元に来ました。

主人公は、40歳前後の男女。僕が41歳なので、同世代であることに親近感を感じます。だから余計に、二人が惹かれ合いながらもすれ違っていく場面は、もどかしくなりながら祈るような気持ちで読み進めました。
描かれている年代は、2006年から2012年。世界を舞台にして、遠く離れて生活する二人をつなぐのは、メールとスカイプ。距離と時間を超えてやり取りすることができるけど、物理的な距離感がすれ違いを生む。その辺りは、約10年後の今にもそのまま当てはまりそうです。使うツールが変わる程度で、気持ちの高まりも、もどかしさも、同じように心を動かします。

心の中で大切にしているこだわりは、軽々しく分かった気になられたら嫌だけど、分かる人には共感してほしい。そんな気持ちは、40代にはみんな持つものなんでしょうか。分かる気がしてしまいます。共感してくれる相手と適切な距離感を保てたら、人生の彩りが鮮やかになりそうです。その距離感が難しいのかもしれませんが。
読んだときの年代によって、感じ方が変わるんだろうなと思いました。

ちょっと前に読んだ『蜜蜂と遠雷』と同じく、音楽家が登場する話。こちらは、クラシックギタリスト。当然、音楽の話題はたくさんあるけど、音があふれてくると言うよりも、作品中でも語られるように「静寂」を意識することが多く、その違いもおもしろかったです。

読書のきろく 2021年31冊目
『マチネの終わりに』
#平野啓一郎
#文春文庫

#読書のきろく2021 #小説

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