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イエスの生涯【読書のきろく】

自分の心の弱い部分に対面すると同時に、強さや愛も信じたくなる

noteで紹介されていのを見かけ、とても気になって図書館で借りました。同じタイトルを持つ本は、いくつかあるようです。今回読んだのは、遠藤周作さんが書かれたもの。
「イエス」はもちろん、キリスト教のイエス。そのイエスが、一人の人間としてどう生きたかが描かれています。表紙カバーの裏には、イエスが辿った地域の地図が載っていて、地名を確認しながらその歩みに沿うことで、よりリアルに感じることができました。

英雄的でもなく、美しくもなく、人々の誤解と嘲りのなかで死んでいったイエス。裏切られ、見棄てられ、犬の死よりもさらにみじめに斃れたイエス。彼はなぜ十字架の上で殺されなければならなかったのか? -
>裏表紙の紹介文より

僕は聖書を読んだことがありません。宗教的なものは信じる方だと思いますが、特定の宗教に対して強い思い入れがあるわけでもない。

だけどなのか、だからなのか、イエスが人として悩む様子や、弟子たちや民衆の弱さやズルさには、心が惹かれます。愛よりも、奇跡を求める。心の平安よりも、現実的な利益を求める。自分の心の弱い部分に、対面させられました。2000年の時を経ても、人の心の奥にあるものは、変わらないようです。
と同時に、イエスが人間であるからこそ、誰の心にも強さや愛があると信じられるような気もします。
人が神と対峙する時の心の在りようは、僕が過去に読んだ遠藤周作さんの作品の、『沈黙』や『王の挽歌』にも通じるものがありました。

人の心やその物語を扱うことに長けた小説家が、聖書をはじめたくさんの文献を読み解き、そこに描かれているものと描かれなかったものから一人の人物を甦らせてくれた作品。
とても興味深く読むことができました。

読書のきろく 2021年56冊目
『イエスの生涯』
#遠藤周作
#新潮文庫

#読書のきろく2021

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