樹木たちの知られざる生活【読書のきろく】
森の樹木に触れたくなると同時に、街の木々にもやさしくなれる
前回の『悪魔を出し抜け!』と同じく、講座の中で紹介された参考書籍のひとつ。「私たちはもっと自然界を学ぶ必要があると思います。知らないことが多すぎるから」と言われ、すぐに注文しました。著者は、ドイツの心理管理官。
美しい樹木の写真で飾られた表紙は、副題として書かれている「森林管理官が聴いた森の声」への期待を高めてくれます。
帯の裏に並ぶのは、こんなフレーズたち。「木は会話する」、「助け合う」、「子育てする」、「数をかぞえる」、「移動する」。
木は、自らの意志で動けないし、声も出しません。だから、僕たち人間を含む動物とは違った生命体として捉えてしまいます。だけど、この本がその考えをひっくり返してくれました。
木も、動物や昆虫の存在を感じて反応するし、地面の下に張り巡らされた根で仲間たちとコミュニケーションをとっているし、親から子への厳しい教育も存在しているそうです。木の種類だけでなく一本一本にも個性があり、森の中では、木と木の縄張り争いも繰り広げられています。
種を越えて助け合っている姿は、「共生」や「多様性」といった、今の僕たちが学ぶべきキーワードもたくさん投げかけてくれました。
すごく、おもしろい。
生命力の強さとか、その神秘的な営みに感動します。
と同時に、人間の都合で、一方的に切り倒したり好き勝手な場所に移植する行為を、とても申し訳なく感じられます。一人の力ではどうしようもないけど、知ることで少しでもみんなの感じ方が変わればいいなと思いました。子どもたちにも、木の豊かな営みを知ってほしいです。
僕が幼い時期を過ごした故郷は、熊本の山の中にあります。町や村と言うよりも集落といった感じで、山と畑と田んぼに囲まれたところに8軒の民家がありました。舗装された道路の終着地点で、その先は山が続いている。
人の手で植えられた木もあったと思いますが、野生の木々もたくさんあったはずです。そこでは、どんな会話が繰り広げられていたんでしょうか。
本を読みながら、そんな山の中で樹木に囲まれて、ただゆっくりと空気感を感じる時間を持ちたくなりました。
街の中にある木にも、やさしい目を向けられるようになる一冊です。
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読書のきろく 2021年45冊目
『樹木たちの知られざる生活』
#ペーター・ヴォールレーベン
#長谷川圭 訳
#ハヤカワ・ノンフィクション文庫
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