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こちらあみ子【読書のきろく】

「不思議な感覚」という言葉を使わずに表現できない

著者の今村夏子さんを知ったのは、『星の子』。次に読んだのは、河合隼雄物語賞を受賞した『あひる』。そして、僕にとってこれが今村さん作品の3冊目。
買ったままずっと積ん読状態だったところ、知人のツイートでタイトルを見かけて、読みたさ度合いが急上昇しました。2022年公開予定で、映画化も決まっているようです。

第26回太宰治賞と第24回三島由紀夫賞のダブル受賞という、衝撃的な冠つきのデビュー作。なんとも不思議と言うか、心がズキズキして、目が離せない物語です。登場人物も、展開も、これがデビュー作だなんて恐ろしいと思いました。

主人公は、すごく純粋でマイペースな、あみ子。いわゆる「世間の常識」的なモノサシが、当てはまらない生き方をしています。家族やクラスメイトは、そんなあみ子の言動を受け入れられないこともある。
きっと、どちらの気持ちも僕たちの中にあって、心のどこかで知っているんだと思います。だけど、あみ子の言動の方に対しては、他に気を取られて見落としてしまったり、素直になれない自分と比べて反発してしまったり、気づいても見て見ぬふりをすることが多い。だから、帯に書かれている「感情のざらつき」を感じるんだと思います。(帯は、Amazonの表紙画像で確認できます)

一緒に収録されている『ピクニック』と『チズさん』も、普通ではない。普通ではないけど、ありえなくもない、かもしれない。不思議な世界をぐるぐる回っている感じです。
不思議だけど、非現実ではないのが、また不思議。3作品とも、読み始めたらどんな結末にたどり着くのか予想がつかないまま、読むことを止められなくなってしまいます。

映画化される『こちらあみ子』。
興味深いけど、見たくない自分もいます。小説を読んで頭の中で映像化するときには、ある程度は自分に都合よく調整できます。でも、映像となったものを見てしまったら、もう逃げられない。

不思議な読後感のまま書いた、不思議な「読書のきろく」でした。

読書のきろく 2021年65冊目
『こちらあみ子』
#今村夏子
#ちくま文庫

#読書のきろく2021

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