編集者おすすめの読切マンガ〜勝手に俺のマンガ大賞 第2回〜
若手マンガ編集者2人が、好きだった読切をただただプレゼンしあう
「勝手に俺のマンガ大賞2024」
今回は第2回です。ぜひ楽しんでいってください。
今回紹介した漫画
佐野オススメ漫画 【ULALA DREAM!】
佐野:今回紹介する漫画は、KATAO先生の「ULALA DREAM!」
第18回月マガコミック大賞デビュー!の準入選作品だね。
マフラー指数は7!
よしむね:マフラー指数は、「上靴はもう描かない」と一緒だね。
佐野:うん。でも、漫画の雰囲気は結構違うかな。
よしむね:確かに。
佐野:そうだね。あらすじとしては『夢に真剣な女の子”うらら”が、その情熱で、斜に構えた男の子の心を揺さぶってしまう話』になるのかな。
よしむね:なるほど。どこがマフラーか知りたくなってくるな。
佐野:まぁまぁ、聞いていってくれよ。
よしむね:OK。じゃあ、佐野ちゃんはこの漫画のどこに惹かれたの?
佐野:まずはキャラだよね。
最初、ギター弾くうららで始まってるんだけどさ。
佐野:これ、もうめっちゃギター好きそうだよね。
3pの顔とか、 もう超楽しそう。
よしむね:夢中になって大学忘れてるしね笑
佐野:そうそう。キャラが分かること、愛せることって、改めて重要だなと思って。
よしむね:作家さんも描いてて楽しそうだよねえ。
佐野:ほんとうにそうだね。
それも読み味の良さに繋がってる気がするね。
もう、うららのこと好きだもん。
よしむね:佐野ちゃんはめっちゃ好きそうだ。
佐野:うん、大好き笑
俺は、田島列島先生の「ごあいさつ」の主人公のキャラの魅せ方が、めちゃくちゃ好きなんだよね。仕草とか表情、行動で、キャラクターが自然に伝わってくる。
そういう感じが、うららにもして、とても良かった。
ディティールにこだわってくれるのが、とても嬉しい。
▼田島列島先生の「ごあいさつ」はこちらから
よしむね:「ごあいさつ」だと、1p目から寝っ転がって腕ぐるぐる回してたり、みたいなね。
佐野:そうそう。
じゃあ、この漫画に戻って一番響いたシーンを紹介するね。
俺が一番いいなと思ったのは、うららが夢について語るシーンのこの一言。
佐野:「なりたいものについてよく知らないことのどこが現実的なんだね」
ってだいぶ鋭利な言葉だな、って思った。
よしむね:鋭利?
佐野:うん。夢を見るだけじゃなくて、夢を叶えることにめちゃくちゃ真剣な人の言葉だなって。
その真剣さに、気圧された。
いいキャラだな〜と思って読んでたから、いきなり鋭い言葉が飛んできて、刺さって痛かった。
よしむね:痛かったって面白いね。
何で痛かったって言葉使ったの?
佐野:そうだな......
自分が、夢とどれだけ真剣に向き合っているのか、に向き合わされたからかな。
夢って、叶え方も分からないまま掲げてた方が楽なんだよ。
でも、それじゃダメなんだって言われた気がして、刺さった。
よしむね:なるほど。
佐野:夢を本当に叶えようとするなら、叶えるまでの途方もない道を知らないといけないよね。
そうすると、現在地の情けない自分に向き合うことになる。
でもそれが、夢を叶えるための一番現実的な方法なんだと思う。
よしむね:うん、そうだね。
佐野:描かれてはないんだけど、うららは、それに向き合ってきたんだろうな、って思った。
俺は、必死で向き合ってるつもりでも、まだまだ全然足りないなって。
ちょっとした隙を、ぶっ刺されたって感じかな。
よしむね:確かに。それは痛いかもね。
佐野:うん。それくらい、うららは夢に真剣なんだよね。
同級生とカラオケに行って、自分の好きな歌を貶された時もめちゃくちゃ怒る。真剣さがめちゃくちゃ伝わってくる。
よしむね:自分の好きに真っ直ぐでカッコいいんだよな。
佐野:本当にそう。
でも、そのうららが、馬鹿にされたカラオケの帰り道に家族に電話するの。
「夢を目指して頑張ることは恥ずかしいことなのでしょうか」って。
よしむね:そうだったね。
佐野:ここもめちゃくちゃ良かった。
確かに、夢を馬鹿にされて怒ったり、不安になって相談したり。
そういうのって、よくある流れだと思う。
でも、この作品がいいなと思うのは、ここまでにうららの夢への情熱をしっかり描いてることだと思うの。
よしむね:ほうほう、というと?
佐野:俺はもう、うららをめちゃくちゃ強くてかっこいいと思ってる。
言葉の使い方、真剣さ、表情に。
だからこそ、この弱音にグッと来ちゃう。
あのうららでも、迷うんだ、気にしちゃうんだっていうか。
よしむね:なるほど、情熱的なうららのキャラが、弱気になるシーンで活きてるんだ。
佐野:そう。この作品がテンプレに留まってないのは、キャラクターが丁寧に描かれているからだと思うんだよね。
周りの目は気にしない、夢に誰よりも真剣な子だって分かるからこそ、重く響いてくる。
よしむね:確かに。ここまでに、うららを描ききってるからこそだね。
佐野:うん。こっからの家族との話とか、同級生の男の子との話とかもめちゃくちゃいいんだけど、ここからは、やっぱり読んでほしいな。
よしむね:そうだね。読むともっと魅力が伝わる気がする。
佐野:うん。総じて、夢に真っ直ぐであるかっこよさをとても感じたし、その中にある不安も迷いも丁寧に描かれていて、すごいいい作品だったなと思う。
きっと、夢に向かう人の支えになる漫画だと思う。
だから、これはマフラー漫画。
とてもいい作品なので、ぜひ読んでみてください。
僕のプレゼンは以上です!
よしむねオススメ漫画 【少年対組織暴力】
よしむね:今回俺が紹介する作品は、ピエール手塚先生の「少年対組織暴力」っすね。
よしむね:Xには、2022年11月8日に投稿されてるけど、コミティアで出したのはもっと前なのかな。
ピエテヅ先生自身はすでに商業デビューもされていて
最近は『ひとでなしのエチカ』の最新3巻が発売されてるよ。
よしむね:Xをフォローしてると管理職をしながら連載2本持ってて、恐ろしい。
佐野:移動中も食事中も、スキマ見つけて描いてるらしいってすごいよね。
よしむね:えぐい。で、今回の読み切り『少年対組織暴力』は
ストーリーとしては、恋する高校生男女の話なんだけど、最高だった。
リビドーの9。
佐野:リビドー指数高い(笑)。主人公たちのキャラがめっちゃよかったよね。
よしむね:間違いない。楢崎くんは山本さんっていう女子高生が好きなんだけど、その子が付き合おうよって迫ってきたときに、即拒否するの。
その理由は「恋愛は想像してるときがピークだから」って話で、ページ半分を埋め尽くす文字量で描いてあるんだよね。それが、気持ち悪くて、でも面白い。
佐野:なるほどな。そういう拗れた感じのキャラなんだ。拗れ方がうまく伝わってきていいね。
よしむね:逆に女子高生、山本さんは猪突猛進ギャル。
「自分のこと好きらしい」って知ったら、楢崎くんのとこに走っていって「私たち付き合っちゃう?」って言いにいっちゃう子。
佐野:可愛いじゃん。
よしむね:1p目からキャラを立たせにいってて、上手いよね。
よしむね:楢崎くんの、根暗なんだけど気が弱いわけじゃないのも分かるし
山本さんの快活な感じと真っ直ぐさも伝わってくる。
まあここから恋愛漫画になってくのかと思いきやバトル漫画になってくんだけどね。
佐野:何が起きてんだ。
よしむね:二人は、お互いの言いたいことを言いながら闘うんだよね。
佐野:殴り合いながら恋愛観を戦わせてる...。
よしむね:そう。ここから続く殴り合いの中でのやり取りがめっちゃ好き。
楢崎くんは、「自分の好きな気持ちがただの性欲だったらどうしよう」とか「自分の気持ちをぶつけることで他人をコントロールするなんてよくない」って言うんだよね。
佐野:それが、楢崎くんの恋愛観なのかな。
よしむね:山本さんは楢崎くんのことを最初「キモい」って言うし、実際かなり拗らせてるんだけど、俺としては同時に憧れさえあるんだよね。
佐野:よしむねにも、若干の拗れを感じるな笑。
よしむね:人間、拗れないとね。憧れの話のために、俺の話をすると...。
俺は中高男子校でさ、大学入るまで女の子とほぼ話したことがなかったのよ。
大学入ったあと恋人はできたけど、新宿の珈琲貴族っていうカフェで、友達と夜な夜な「愛とは何か」について語り合ってたんだよね。愛の伝道師って呼ばれてた。
佐野:そんなことやってたの!?
よしむね:珈琲貴族はいいぞ。
恋愛って、「運命の人」っていう言葉があるように、その人じゃないといけない理由が欲しいわけじゃん。
佐野:この人と一緒になるのは必然だ、って思いたい、ってことかな。
よしむね:そうそう。でもそんなものはないわけよ。
他の人ではなくこの人みたいな必然性なんて理屈で作れなくて、結局は、個人がどう感じるか。
サークルの中で一人の女の子のことをつい気になって、チラチラ見ちゃうとか、なんか目立って見えるとか、そういう主観をあてにするしかない。
佐野:自分にとって、その相手には何か惹きつけられるものがあるってことはわかるね。
よしむね:そう、でもその主観は一方通行で、相手にとってどうなのかは知ることができない。
そんで、この作品では『エアマスター』の坂本ジュリエッタのセリフが引用されていたように、「愛は暴力」なんだよ。
よしむね:引用されてるシーンは、極端な例だけど、恋愛を成就させるには、多かれ少なかれ相手のことを無視して主観を押し付けないといけない。
その考えに強く共感しているから、俺は坂本ジュリエッタやら、『ファイトクラブ』のタイラーダーデンやらが好きなのね。
佐野:ん?楢崎くんって、どっちかっていうと暴力的じゃないようにしたい、みたいなキャラだったんじゃない?
さっきは楢崎くんに憧れるって言ってなかった?
よしむね:なんかさ、坂本ジュリエッタに共感してるからといって、あんな極端な生き方を俺ができているかというとそうじゃないのよ。
常に楢崎くんのように相手の気持ちを考えて迷っちゃう。
でも強がって誤魔化して、坂本ジュリエッタにも楢崎くんにもなれず、中途半端な状態に止まっちゃう。
だからこそ、楢崎くんが自分の考えに固執して、空を守り抜こうとする姿はキモいながらも爽快でカッコいいってわけ。
佐野:なるほどなぁ。
よしむね:結局、フィクションのキャラクターって特殊な状況とわかりやすくデフォルメされた特徴によって、読者ができないことをやってくれるのが魅力な気がするね。
それでいうと、女子高生の山本さんは最高だよね。
「俺たちは山本さんのような女を待っている!」そう思う。
佐野:ちょっとわからないから、詳しく......笑
よしむね:ちょっとウブなエロさもあり、自分と拮抗する格闘技術があり、
自分とは異なるベクトルに思考の深さがあり、思い切りのあるキスによって、殻を破壊してくれる。もはや「坂本ジュリエッタが俺のことを好きな巨乳ギャルJKだったらいいのに!」
という『エアマスター』読者の根底にあった無意識の願望を表面化してくれたんだと思ってる。(※諸説あります)
ピエール手塚先生の「少年対組織暴力」が面白いと思った人は、『エアマスター』も読もう。
最後に
よしむね:最後、『エアマスター』も読もう、で終わっちゃった。
佐野:ピエール手塚先生もXでオススメしてたし、読んでみると、より深まるかもね。
引き続き、いい読み切りを紹介していこう。
ここまでお読みいただいてありがとうございました。
第3回も近々更新しますので、お楽しみに。
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