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【散文】21・世界〜魂の成長譚の結び〜

 タロット、大アルカナの旅はいよいよ21番「世界」にたどり着いた。
22枚の最終カードであり、物事の完成、達成、統合を意味している。
 青空を背景にした緑色の月桂樹の輪の中で、一人の女性が腰布を纏い、2本のワンドを持って踊っているように見える。四隅には四大元素に対応する、四大聖獣が描かれており、世界の全てを表している。

 中央の女性に見える裸の人物は、惑星を体にもつ大宇宙の象徴・アニマムンディであり、実は雌雄同体の両性具有者であると言われている。腰布に覆われた部分には男性のシンボルが隠されているという。アニマムンディの最も純粋な部分は神の叡智につながり、下層の部分は地上の物質性と結びついている。
 アニマムンディは手に2本のワンドを持つ。これは対立する二つの概念を統合していることを表すだろう。男性と女性、光と影、顕在意識と潜在意識、太陽と月、古いものと新しいもの……。アニマムンディはそれらを統合し、完璧に制御していることが示唆される。

 月桂樹の輪は別のタロットではウロボロスになっており、誕生→死→再生という終わりなき円環を表している。結び目の赤いリボンはレム二スケート、無限のマークを描いており、この円環がウロボロスと同じ意味であることを強調している。
 錬金術ではウロボロスは、一つのものが別のものに変化すること、そして究極的には全てを表す「ひとつ」を生み出すことを示している。錬金術では男性原理の火と女性原理の水が統合され、破壊され、復活し、再統合される。世界が示している円環はその象徴であり、最終的にたどり着くべき境地なのだ。

 21番・世界のカードは生命の木ではタウの小径と呼ばれる過程に相当し、天球層上昇の秘儀と関係しているようだ。アニマムンディの体は惑星や星辰でできているのだから、その儀式は彼女/彼の体内を通過することにほかならない。そして大宇宙と小宇宙は照応関係にあり、この旅は天界への旅であるとともに潜在意識という地下世界の旅でもあると言える。
 戦車のところで書いたように、ケルビムの四つの顔は四大聖獣であり、四大元素を表していた。私たちは天球層を通過した先で、ケルビムの炎と出会い浄化される。その炎は生命の火であり、タロットの旅の最終地点で大いなる錬金術的変性が成就されるだろう。

 これは愚者から出発した人物の成長の物語であった。

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