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加茂佳子
2020年11月7日 21:43
「瞼の傷口が深く、ダメージの心配もあるので堤陣営は今から病院へ向かうそうです。従いまして、堤聖也選手の記者会見はなしということで」比嘉大吾の会見が終わると同時に、テレビ局のスタッフだろうか、関係者からそうアナウンスがあった。新聞記者たちがプレスルームへと急ぐ中、帰り支度をし、エレベーターで一階に降りた。ビルの出入り口の横にちょっとした人だかりが見える。近づくと、一足先に降りていた雑誌やW
2020年11月14日 11:48
堤聖也は試合が決まった日から、毎夜、頭の中で比嘉大吾と仮想対決してきた。全勝全KO。フライ級時代のザ・破壊者としての強烈な記憶。4年前、スパーリングで手合わせしたときに感じた、まだ開けられていないが確実に存在する比嘉の「引き出し」の数々。練習中は無心でいられた。だがジムから戻り1人になると、不意に心細さが襲ってきた。寝る前のルーティン。戦いのイメージトレーニングはどうやっても自分のハッピー
2020年11月20日 18:31
僕、ジャブの差し合いが得意なんです、と堤は言った。得意な事を話すときの口調、ではなかった。この1戦に向け、一層磨きをかけてきた。その最も自信のある武器が勝機を掴む鍵になるはずだった。「理想はジャブをポンポン当てて比嘉の顔を腫らす。眼窩底を折ってやるぐらいのイメージをしてたんです」試合前、比嘉より上回るものはないと自認していた堤だが、ジャブの差し合いだけは負ける気がしなかった。「