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オンライン研修についてまとめてみた

 2020~21年度において、99%の企業研修、自治体研修、オープンセミナーなどのプログラムは、(私の場合)オンラインでリモートにて実施しました。

 ここでいうリモートとは私が自宅(自室)から遠隔でリアルタイムに講義やサポートをするケースを指します。事前に収録するオンデマンドやe-Learningは想定していません。

2022年度に入り、1割程度のクライアントから、会場での集合研修をリクエストされるケースが発生しています。

そんなこともあり、そもそもどういうケースがあり、それぞれの良し悪し(Pros-Cons)があるはずだと思い、私見ながらまとめてみました。

”オンライン”研修の全ケース

オンラインで実施する研修等のプログラムは、理論的に上記のケースいずれかだと思います。

私がずっとやってきて、今でもほぼ全てで対応しているのが「ケース5」(と一部「ケース4」)です。
では順に各ケースを見てみましょう。

【ケース1】
コロナ禍以前からあった従来のケースです。
講師も受講者も全員がその場の「空気」と「場」を共有することにより、心理的な一体感を持つ人もいると思います。それは悪いことではなく、これによって受講のモチベーションが上がる(=気分が乗る)人もいるでしょう。

ただ、気分が乗ることと、内容の習熟や効果とは必ずしも一致するとは限りません。仮に一部の人にそのような効果があったとしても、講師、受講者ともに決まった時間に決まった場所に物理的に行かなければいけない時間的、費用的、体力的コストは膨大です。更に、主催側による会場確保やアレンジなど周辺にも膨大なコストが発生します。
これらのコストを補って尚メリットがあるかどうかが問題です。

私が思うのは、単発(一日限り)のプログラムでは、そのコストやデメリットを、皆で集まることのメリットが上回るケースはかなり稀ではないかと。
その瞬間だけ気分が乗る人がいても、それ自体がコストを上回るメリットになり得ないのではないかという考えです。

一方、このメリットをより多く享受できるのは、このプログラムが単発ではなく、中長期にわたり、同じメンバーで進めて行くプロジェクト型の時です。お互いをより深く知り、信頼感や親しみを持つことのメリットが、2回目、3回目と回を増すごとに表に現れてきます。
大学の授業(1学期に90分を15コマ)や、毎月1回半年間実施されるようなプログラムをやっていると、その感覚を持ちます。毎回顔を会わせる必要はないかもしれませんが、早い段階で物理的に合うことのメリットは大きいかもしれません。

【ケース2】
これは【ケース5】と比べて誰にとってどういうメリットがあるのか、私にはさっぱりわかりません。少なくとも講師にとってはデメリット(コスト)しかありません。それによるメリットを【ケース5】以上に受講者が享受することもありません。

よほど講師側が自宅でのオンライン環境が整っておらず、どこか他の場所が必要ということであれば合理的ですが、その状態で長期にオンラインサービスを提供することには講師として無理が生じます。こういうケースが合理的な研修というものが世の中にはあるのかもしれませんが、少なくとも私の場合には当てはまりません。

「なんか、講師も汗かいて会場に来ている」という”やっている感”を出すためであれば、これほど空しいものはありませんが、残念ながらそういうことは日本においては昔からあるのも事実です。
いずれにせよ、私はこのケースをするのであれば迷わず【ケース5】で実施させて頂きます。

【ケース3】
これを実施する気持ちは分かります。でも、受講者にとっても講師にとっても、全てが中途半端になり、かけるコストを上回るメリットは誰にも無いように思えます。
「ハイブリッド」というと聞こえはいいですが、実際にこのケースで講義や研修をするのはとても大変です。誰に向かって話をしているのか、カメラの向こうとこちらにいる受講者をどうコミュニケーションさせるのか。どの方法をとっても、講師と受講者双方にデメリットや中途半端感が出てしまうでしょう。

一見、物理的に会場に来れない人にも対応し、対面を希望する人にも対応できているように思えますが、実現したいのはリクエストに表面的に応えることではなく、より効果やメリットの高い成果を実現することです。

結果的に効果や効率の面で良くない結果になる可能性が高く、誰もハッピーになれないため、私は避けています。

【ケース4】
「会場がどこにあるか」により、講師にとっては非常にメリットが大きいです。また、全体からみれば小さなこと(額)ですが、講師の往復の交通費や時間がセーブできることは、主催側にとっても多少の費用セーブになるでしょう。
私は特に単発(1日)のプログラムであれば、得られる成果として【ケース1】と大きく変わらないと考えていますが、このあたりは色々な考え方があるでしょう。

【ケース5】
いわゆるフルオンラインですね。効率という側面を追求するとここになるでしょう。
効率の一つかもしれませんが、全国どこにいても同じく受講できるというメリットは本当に大きいと思います。受講者にとっては、受講のハードルが下がり、受講機会が増えたと言えるでしょう。
今でもこのケースを維持するクライアントが多いことも納得がいきます。

もちろんこれがその他のケースに比べて、いかなる場合でも、いかなる点においても優れているとは思いません。例えば、状況により【ケース1】に比べデメリットがある面もあります。要はメリットとの比較になります。

【ケース6】
このケースは非常に稀ではないかと思いますが、受講側でこの対応が一番都合が良いということであれば対応は可能でしょう。ただし、グループワークや受講者間でのディスカッションなどはかなり限定されてしまうため、そのような要素が入らない講演に近いプログラムなどであれば有りでしょうか。


各ケースを見てきましたが、自分の視点とクライアントの両視点からそれぞれのメリット・デメリットをしっかり考えながら柔軟に対応していきたいですね。


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