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秦野市2拠点生活兼ワーケーション体験記録

・県内で2拠点生活
 新潟県湯沢市町、徳島県勝浦町に続き2拠点生活実践3ヶ所目となったのは、自宅のある横浜市と同じ神奈川県内にある秦野市です。

 秦野市は横浜の自宅から車で約2時間(高速使えば1時間くらい)の丹沢山系に囲まれた盆地にあります。周囲の環境が県内でもガラッと変わり、別世界になります。
これまでもちょっとした休日のお出かけ先として、家族共々馴染みが深かった場所なので、チャンスがあれば、将来住んでみたいねと話すこともありました。

山や自然に囲まれているものの、小田急線や国道246や東名高速など交通の便は悪くなく、街の中心部はそれなりに発展しています(都内に出ようとするとかなり遠い感じはしますが)。
 

 そういう背景がある中で、秦野市が昨年から高台にあるロッジ(ログハウス)を移住体験場所として貸し出す活動を始めたのを発見。
半年前そのプログラムを見つけ、早速申し込みをしようとしたところ、開始翌日には半年先まで予約いっぱいで諦めました。

その後次の半年の募集があることを知り、今回は申し込み当日の朝10時にパソコンの前で待機し、開始と同時に45秒で全ての情報を高速で入力し、一番良い時期のゴールデンウィークを挟んだ14日間を抑えることができました。2週間借りて、光熱費込みで2万円です。 

新潟や徳島との一番の違いは、もちろん自宅からの距離です。
何かあればすぐに自宅に戻れる気軽さと利便性を持ちながら、全く違う環境で生活できるのは魅力であるとともに、実際に決断する時のハードルを大きく下げてくれることはあります。
実際2週間の滞在期間中、2回ほど横浜の自宅に所用で戻りました。(息子は今回1度も秦野には来ませんでしたが、「離れて暮らしている」という感覚はありませんでした)


2拠点生活や移住を検討している人への自治体からのアプローチとして、このように県内市外の人に絞って募集というのも理に適っているのかもしれません。
 
秦野の課題を挙げると、街中でなく自然環境の良いところに住むと、100%車が必要となるということ。
年齢によっては(運転という)限界が来て、住むことが困難になるリスクを秘めていることは(20代の独身などでない限り)認識しておく必要があるでしょう。

同じく、そのような環境に子供を引き連れて完全移住するとなると私はかなり考え込んでしまうでしょう。まず学校が遠い、周りに友達の家はなく物理的に一緒に遊べない。
習い事のバリエーションが少なく、帰宅後一体ここで一人で何を毎日するのだろう、とは思ってしまいます。
 
結局、自分と家族の年齢とライフステージによって、最適かそうでないかが分かれる点では、これまで私が経験した他の地域と同じポイントがあります。
 


・ワーケーションの視点
 今回も、他でよくある「コワーキングスペースがある」ということワーケーションを結びつける必要はないと実感しました。

実際に秦野市では「うちではコワーキングスペースが・・・」という話は一回も出なかった(実際存在しないのでしょう)し、そもそも必要ありませんでした。
むしろ、3つも部屋があるログハウスで、椅子もテーブルもあり、デッキに出れば広々とデスクと椅子がある環境で十分仕事ができました。高速Wifiも完備で、仕事環境としてはこれまでで一番充実していました。

つまり、「生活」と「仕事」の両方の環境が揃っていることが重要で、僕の場合は、その2つが物理的に離れているよりも、同じ空間である方が利便性が高いのです。それが今回は100%実現できました。
 
静かで広いログハウスで、誰にも邪魔されず仕事に没頭できたのは理想的と言えます。気分転換に誰にも会わずに自然の中を散歩もできるし、遠くを眺めれば江ノ島や三浦半島まで見渡せ、雄大な山も見放題です。
 
 
・2拠点生活について改めて考える
では、移動のハードルも高くなく、行き先の住環境、労働環境が充実していれば2拠点生活は成立するのでしょうか。

かつて、実際に全国3拠点に住居を構え生活と仕事をされている方のウェビナーに参加した際、「それってお金かかるけど面白そうだな」と感じたものです。

でも、今回次のようにも感じたのも事実です。
 
 ・お金出して2週間借りたのだから、行かないと勿体無い
 
横浜の自宅と往復するハードルが低い分、自分の意思でその日はどちらに滞在するか決められます。ところが、忙しくて時間がない時などは、その移動の時間とエネルギーが若干負担に感じる時もあるわけです。

「じゃあ行かない方が楽だ」と思っている一方で、もしこれが「安く借りられているのではなく、不動産として購入している場所」であったらどうだろう、と。

つまり、すでに投資してしまっており、放っておいても電気代、ガス代、水道代などの維持費はかかり続ける状況を考えると「もったいなから行かなきゃな」という気持ちが出てきはしないだろうか。となると「義務感で行く」状況になるのかもしれません。それは本末転倒ということなのでしょう。
 
もう一つ。
不動産として取得すると「行き先」が完全固定されます(当然ですが)。
よほど骨を埋めても良いくらいの思い入れと理由がある場所であれば全く問題ないと思いますが、実際には、自宅(本拠地)と2拠点先の“2拠点”を結んだ線の上での移動にほぼ全ての時間を費やすことになるでしょう。それは、これまで本拠地という“点”が、“線”に変わるだけのことなのかもしれません。

そして、その“線”にかえって行動範囲がロックインされてしまわないだろうか、ということを本気で考えました。


もし、2拠点先の不動産の投資費用と毎月の維持費を、毎月全国様々なところに3泊4日でおでかけしまくるコストに充てるとどちらが金銭的に合理的なのか、など本気で計算もしてしまったりしました。(興味がある人はご自身でやってみてください)
 
これも、実際今回自分で動いてみて気づいたことや考えたことなので、やはり実践してみることの大切さは改めて実感した次第です。
 

・行政や地域の未来としての視点

ここまで書いた通り、一個人の人生や働き方の選択肢としての2拠点生活や移住、ワーケーションはこれまでにはなかなかできなかった素晴らしいオプションです。
一方で、私自身も多くサポートさせて頂いている地域創生、人口減少、高齢化といった地域課題の視点からはいまだ「もやっ」としたものが拭えません。
短期的な視点では、その年度内にXX組の人が外部から来て利用しました。という”実績”が計上できるかもしれませんが、それが中長期的な地域の人口減少や高齢化の問題にどのくらい、どのように寄与するのかは未だはっきりしません。

それなりにコストをかけて多くの方に体験してもらうことが、そのコストに見合うアウトカムを導くことになるのかどうか。もちろんやり方にも拠るし、場所にも拠るし、やってみないと分からないことは多いのですが、そのような中長期視点での現実的な戦略や計画が見据えられているのかどうか、一時凌ぎの方策になってしまっていることはないのか。

このあたりは、深い「問題解決」の議論がなされるべき点と思います。
地方自治に長く携わっている私自身としても、未だ大きく残っている課題の一つです。

5年後、10年後、この地域はどうなっていたいのか。それは各地域や自治体が自分達の思いを具体的に描く必要があるのかもしれません。その中で、他の地域からの移住者や働き手がどのような役割と位置付けになるのかが、分かっているともっと今行っているものが意義深いイベントになるような気がします。


それにしても秦野は良いところでした。さて、このあとはどうしよう。



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