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MBAファイナンス講師がおすすめのファイナンス書を等身大でまとめてみた


こんにちは!
株式会社プロフィナンスの木村 義弘です。
GLOBISでファイナンス科目を担当しはじめたのが2019年でしたが、2021年くらいから「ファイナンス基礎」というビジネススクールの科目も担当し、最近ではエグゼクティブスクールのファイナンスパートも担当させていただくようになりました。

ビジネススクールでファイナンス科目として最初に学ぶ「ファイナンス基礎」では、ビジネススクール生であったとしてもDay1は
((((;゚Д゚)))))))
という顔をされてる方が多いので基本的には以下の内容をお伝えしています。

  • ファイナンスは怖くない

  • 計算も大切だけど、それ以上に大切なのは考え方

そんなビジネススクールでの講義ですが、
ファイナンス嫌い→好き
・ファイナンス怖い→楽しい

へのConversion Rate = 100%(当方サンプリング調査笑)を誇ります爆

お盆も間近…ということで、いつも講義最終日にネタバレも含めていくつかファイナンスの書籍をご推薦しています。その内容を踏まえてご案内します!
*実はGW前に書いてたのですが…つい公開をし忘れててタイミングを失っておりました笑


タイトルでは「等身大」と言ってます。
なんかこういうおすすめ本の紹介って「ほんとにお前読んでるの?」みたいな高尚な本が出されるときがありますが、あまりそういうことはせずに「これは面白かった、ためになった」視点で出していきたいと思います(上級編ではややハードルはあがりますが…)。
ただ、出しすぎてもしょうがないので、入門、中級、上級で各5冊ずつ縛りで考えました。各論は個別論点で興味のあるものに進んでもらうため、敢えて絞らずとしています。
※5冊ずつとかいいながら上級「上・下」を1冊とみなしていることから石が飛んでくるかもしれません笑

想定する読者

  • ファイナンスに興味あるけどちょっと怖い、、という初心者の方

  • ファイナンス勉強したけどいまいち腹落ち感がない

  • ファイナンス? は!ファイナンスを強みに飯くってるぜ?けど部下におすすめ本教えてもいまいちウケ悪いんだよな…

注意:
リンク貼りやすいんでAmazonのアフィリエイトやってます。私に1円でもお金が入るのが気に入らん!という方は別途検索してください爆


入門以前

ファイナンスと会計は使ってる言葉は被るんですが、その思考法は「短距離走と長距離走」くらい違います。どっちがどっちというつもりはありません。
というわけでまず、本読む前にその辺りを書いてる「エモいファイナンス」をまずは!


初心者・入門編

さて、入門です。
これくらいだと「ファイナンスってどういうことやるんだろう」とか「ファイナンスをビジネスに活かすってどういうことだろう」という部分についてイメージを持った方が楽しいです。なので、いきなり専門書に行くのはあまりオススメしません。どちらかというと読み物的に触れていくことを重視して絞ってご推薦したいと思います。

新版 財務3表一体理解法

定番中の定番ですが、財務3表一体理解法は気軽に読めて、財務3表(PL、BS、CF)がどうつながっているか分かるとてもよい本だと思います。

本書は会計に位置づけますが、基礎知識としてお読み頂いたら、次のファイナンスの入門的な書籍をおすすめしましょう。
まずはファイナンスについて抵抗感をなくしていく意味で、読みやすい書籍を2冊ご提示します。

実況!ビジネス力養成講義 ファイナンス

僕にとってファイナンスの師匠が3人いるのですが、そのうちのお一人が石野さんです。石野さんのブログ記事を基にしたこちらの書籍は、一つひとつのテーマが短く、軽い、わかりやすいものになっています。「ファイナンスってこんな考え方するんだ~」というのがよくわかります。
そして、僕の講義のネタ本です笑。

会社の値段

もう一人の師匠である森生さんの書籍。ファイナンスで取り扱う重要なテーマであるM&Aですが、このM&Aにフォーカスした内容です。
1991年からゴールドマン・サックスにお勤めになられ、さまざまなM&Aに関わってこられた方で、M&Aの歴史についても理解が深まるでしょう。ドラマ『ハゲタカ』の監修もなさった方だというと一気に親近感を持たれる方も多いかもしれません笑。森生さんはGLOBISの講師になってから再会しております。

CFO思考

ニコンのCFO(直近で代表取締役 兼 社長執行役員COO 兼 CFOにご就任)である、徳成氏(すみません面識はないので敢えて"氏"で)の書かれた本書をご紹介します。前職の銀行にお勤め時に、米国の投資家投票でベストCFOにも選出された方ですが、CFOとしてのご活躍時の生々しいやりとりが見ものです。個人的にはアクティビストファンドとのコミュニケーションの部分にグッと来るものがありました。
徳成さんとしての著作はこちらが初めてのようですが、「北村慶」というペンネームで多数書籍を執筆されているということも付記しておきます。

ファイナンス思考

「PL脳」という言葉と「PLだけじゃだめだよ」という考え方・認識を広めた本書は、それだけでも価値が大きいです。ただ、それでも日本で相変わらずPL脳が多いのは、なぜか、という問いを本書を読んでから考えてもいいかもしれません。
読書するけど、「勉強になった」「いい本だった」で終わっている方って、多すぎません?(ちょっと毒)

中級者・プロにカモられないために

ファイナンスのプロ(金融機関勤め、M&Aアドバイザーなど)にはならないけど、ファイナンスをもう少し深く勉強したい、もしくはいきなり経営企画になってしまったのでファイナンス勉強しよう、という方は次のような書籍をお読みになられることを推奨します。
ということでやや分厚めの書籍も紹介していきます笑

増補改訂版 道具としてのファイナンス

また石野さんの書籍が出てきましたが、「道具としてのファイナンス」はファイナンス書籍のロング・ベストセラーですね。増補改訂版になり、分厚くなりました。
Kindle限定ですが、準拠問題集もあったり、また石野さんが定期的に公開講座を開いています。Excelスキルも身につくので良きです(一定Excelは慣れていってからの方がよいでしょう)。

コーポレートファイナンス 戦略と実践

分厚いですがとても読みやすい、田中さん、保田さんのこちらの本もお勧めします。ファイナンスというと、企業が主人公となる「コーポレートファイナンス」と投資家が主人公となる「インベストメントファイナンス」に大別されますが、本書は前者に注力した書籍です。
インベストメントファイナンスの視点も網羅的に扱っている前述の「道具としてのファイナンス」とテーマの取り扱いも少し異なります。
企業にお勤めの方であれば、こちらから読み始めるとよいかもしれません。

企業買収

いきなりM&Aにやることになった!という方にはこちらをオススメします。木俣氏はM&Aの実務関係の書籍を多数執筆されていますが、ストーリー仕立てで書かれている本書で、まずは流れをご理解いただくのがよいのではないかと思います。

MBAバリュエーション

もはや古典といってもいいかもしれません(2001年出版!)が、今でもファイナンス・M&Aに関わる人に聞くと10人中8-9人は読んでいる(あくまで僕調べです)本です。
こちらの内容をアップデート(?)した「バリュエーションの教科書」もああせて是非。


CFOポリシー 第3版

ESGとCFOといえば、もはや柳氏!と言ってもいいかもしれません。立て続けに第3版となっており、追いつくのが大変ですね。冒頭に掲載されている、投資家に聞きましたシリーズで、「日本企業が保有している現預金をどう評価しているか」というのが日本企業の心をえぐる結果でそれだけでも読む価値はあるかもしれません。

上級者・ファイナンスで飯食うぜ

上級編になってくると、ファイナンスの知識でご飯を食べていく人たち向けですが、こうなるとキリがありません!笑
僕も「ファイナンス」ってテーマの書籍は基本的に片っ端から手を出しているので…(数理ファイナンスはカバーしきれてません汗)

コーポレート・ファイナンス 上・下

はい、定番です笑。
けどね!こういう海外の定番の教科書って、ちゃんと読むと面白いのですよ!例えば、資本コストについて「絶対音感」という表現を使って説明されていたりします。
また最終章で紹介される「ファイナンス 10の未解決問題」をみると、まだまだファイナンスという分野が未成熟で伸びしろのある分野ということもわかります笑
今は、個人的に「原書」の最新版を読み進めてます。

企業価値評価 上・下

投資銀行サイドでも、実は本棚の肥やしになっている確率が高い本書ですが、かなり細かい事例などもあるので、読まなかったとしても手元には置いておきたいですね苦笑。
かなり細かい論点(新興国でのVALなど)はとりあえずこれを開く感じです。
何より第7版の訳書は、カバーがかっこいいです(そこかよ)。クロスボーダーM&Aなどの解説もしなくてはいけないときなど発展論点を扱うときは必ず目を通します。


ゼミナール コーポレートファイナンス

上級編に入れましたが、読みやすさ的には中級編でいいかもしれません。
日本の研究者の方が執筆されたこともあり、日本企業の事例もあってわかりやすいでしょう。僕がいつも手に届く範囲においている本の一つです。

バリュエーションの理論と実務

バリュエーションについて、かなり実務的なことまで書かれています。特に資本コストで使うリスクフリーレートやマーケットリスクプレミアムは、日本では何%が多いのか、など。こちらも講義のネタ本にしています。
鈴木先生のまとめる「企業価値評価 実践編」も捨てがたいのですが、最新のこちらをオススメします。

新解釈 コーポレートファイナンス理論

実務サイドでひたすら考えてきたものの、そもそも理論サイドでは?というところを改めて問い直させてくれる本書。
こちらも実は講義ネタで使わせていただいている部分が随所にございます。

各論

ファイナンスに関連する細かな論点についても以下のような書籍を紹介しておこうと思います。


企業買収の実務プロセス 第3版

前述の「企業買収」というストーリー仕立ての本から、体系的にM&Aのプロセスを紐解いた本書は、事業会社側ではじめてM&Aを進めるにあたって前述の「企業買収」を読んだ後、あらためて「さて何からやろか」というときの手がかりになるでしょう。

SDGs時代を勝ち抜く ESG財務戦略

もう3年前ですが、田中さんの「ESGとファイナンス」という特別講義を受講しました。その講義自体がとても学びになったのですが、本書はその講義を下地に書かれていたものです(実際、講義中に「執筆中!」とおっしゃっていたので)。
ところで、田中さん、そろそろ飲みましょか笑(公開飲み誘い)

起業のファイナンス / 起業のエクイティ・ファイナンス

言わずとしれた、起業したらまず読んでおこう、という本の一つでしょう。起業したての頃には「起業のファイナンス」を一通りは読むのがよいのではないかと思います。
さらにエンジェル・ファイナンス以降、外部から資金調達をする場合は、「起業のエクイティ・ファイナンス」の方も読んでおきたいところです。

ベンチャーキャピタルの実務

日本の老舗VCといえば、グロービス・キャピタル・パートナーズ(若干、GLOBISの講師が言うと、手前味噌感が出てしまいますが…)ですが、ベンチャーキャピタルの投資検討プロセスや投資検討の際の目線について解説されています。投資を受ける側のスタートアップにとってもよいガイドになるのではないかと思います。

格付分析の教科書

格付けってよくわからねぇ!と思っていたけど、講義で扱わなくちゃいけない…ということで本書を読んで勉強しました。

その他


企業に何十億ドルものバリュエーションが付く理由

ちょっとマニアックな本ですが、結局バリュエーションってアート(属人的、という意味)だよなと考えさせられる本です。


残りはちょっと「歴史もの」になります。
新卒のときの上司に「その領域の本質を理解したければ、最先端でどうなっているかだけでなく、歴史を学べ」と言われたことが一つの訓戒になっております。

金融の世界史

金融に関する様々なテーマを、幅広く世界史と照らし合わせながら解説してくれます。金利、貨幣、東インド会社、金本位制など。だいぶ前に読みましたが、ちょっとこのnoteを書いてて、読み直したくなりました笑

ファイナンス理論全史

こちらはファイナンス理論に注目して、その理論が生まれた背景含めて解説してくださっています。

ファイナンスの哲学

ファイナンスの基本的な考え方から始まり、信用、利子、価値などのファイナンスを語る上では外せないトピックを説明してくださっています。博覧強記な堀内さんだからこそ書ける本です。

日露戦争、資金調達の戦い

是清さま!!!!(それだけ?)

番外編1:動画

GLOBISを受講されている / 学び放題に登録されている方には以下の動画に出演しておりますので、よろしければご笑覧ください!

あと、敬愛するGLOBIS講師の先輩である鷲巣さんがYouTubeチャンネルでファイナンスについてわかりやすく解説されているのでこちらをご覧いただいてもいいかもです!

もちろん、GLOBISの「ファイナンス基礎」でもお待ちしております!


番外編2


ドラゴンクエスト ダイの大冒険

ファイナンスを学んでいった先に、やはりCFOという道筋が描くならば。。。
僕自身がCFOとして活動していたときのロールモデルはダイの大冒険に登場するポップでした。

序盤は、ただの臆病者だったポップが、主人公のダイ以上の成長を果たして(ゆえに一部ファンは同漫画をポップの物語と言ったり…)、最後の最後まで勇者ダイを支える姿はCFO像そのものです。
勇者自身は、みんなに勇気をもたらす存在だったとすれば、その勇者の勇気は誰がもたらしてくれるのか。勇者であるダイがつらいとき、実はポップが後押ししてくれてたという場面が多くあります。
もちろんCFOとしては厳格な、難しい判断(ここらへんもポップは師匠の教えから、「常に冷静に…」を頑張ってましたね)を行ったり、CEOに言いづらいことを進言することも必要ですが、CEOが辛いときに肩を貸してやれる存在っていうのがCFOなんじゃないか、とも思うわけです。

CFOとして大切なことは全部、ポップから学んだ

と思います。(知識以外で)


ーー
さて、一通り説明してきましたが…

あえてGLOBIS関係の本は手前味噌感が半端なくなるので、敢えて控えさせていただきました。
しかしながら、たとえば「グロービスMBAファイナンス」は中上級の良書といってもいいでしょう。本当はマニアックな書もあるんですが(まぁ、「格付の教科書」とかはマニアックな部類かも…)、できるだけオーソドックスな本をピックアップしたつもりです。

ーー

ちょうどMBAバリュエーションの執筆者であり、GLOBISの講師として大先輩である森生さんと会話していたとき、ファイナンス科目でもっと「事業計画」について触れなきゃいけないよな!という話で意気投合していました。

というわけで…僕の方で事業計画の書籍、完成間近です!
年内出版予定!ということでただいま初校の構成中(2024年8月現在)。
乞うご期待!

木村義弘


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