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朝ドラ本企画の出方の違いを考える
おはようございます。
ついに朝ドラ「虎に翼」がスタートしましたね!
まだ2回しか見ていませんが、いいテンポで進んでいくセリフ回しなど、惹きつけられます。
個人的には、寅子がちょっと納得できないときに呟く「はて?」というセリフがいい味を出していると思います。
これ、流行語狙っているのか気になりますね。
さて、(はて、ではない笑)
今回も去年に続いて朝ドラに合わせて新規の企画を投入したわけですが、
今年と去年、どう違うか?
![](https://assets.st-note.com/img/1712062029897-rtMOQ9vLVK.png?width=800)
書店さんのフェアの様子
まず、書店さんの様子を見てみましょう。
同じ書店さんの、同じ時期のフェアの様子です。
去年はこちら。
「牧野富太郎フェア」開催中です。
— ジュンク堂書店プレスセンター店 (@presscenterten) March 30, 2023
いよいよ4月から始まる連続ドラマ「らんまん」のモデル、牧野富太郎さんの随筆や評伝、小説など関連書籍を集めました。
通路側話題書棚奥で開催中です。ぜひお立ち寄り下さい。 pic.twitter.com/CXEnottYCD
今年はこちら。
いよいよNHK連続テレビ小説「虎に翼」が放送開始されました。ドラマとあわせてヒロイン・猪爪寅子のモデルになった日本初の女性弁護士・三淵嘉子さんの関連書籍はいかがでしょうか。コーナーを話題書から雑誌棚に移動して再展開しております。 pic.twitter.com/es5OgEULpJ
— ジュンク堂書店プレスセンター店 (@presscenterten) April 2, 2024
やはり、今回もフェアをやっていただいています!!
フェア展開を意識して企画した身としては、とても嬉しいです。
が、ぱっと見で気づくことがあります。
ラインナップされている本の数の違いです。
これは、そもそも刊行されている点数が違うのです。
去年の朝ドラ「らんまん」主人公、牧野富太郎は、児童書を含めて既刊本が多くあったことに加え、新刊が大量に上梓されました。
新文化3/16号「NHK朝の連ドラ前に新刊続々」としてトーハンのフェア品目に小社のコロナ・ブックス『牧野富太郎 植物博士の人生図鑑』とスタンダードブックス『牧野富太郎 なぜ花は匂うか』が紹介されました。書店店頭でご覧いただけると幸いです。#平凡社 #牧野富太郎 #らんまん #新文化 pic.twitter.com/g276RvF82n
— 別冊太陽(平凡社) (@bessatsutaiyo) March 24, 2023
しかし、三淵嘉子関連の本は、既刊本含めてそれほど多くない。
なぜだと思いますか?
いくつか考えてみましょう。
仮説その1:「らんまん」の方が盛り上がりそうに見えた
特に高知県では、非常に盛り上がっていました。
それはその通りなのですが、これは観光サイドの話。ドラマの視聴率自体について見てみると、初回視聴率は16.1%と、決してとびぬけて高くはなかったのです。その後じわじわ人気が出てきて、朝ドラとしては3作品ぶりに平均視聴率16%台に乗せました(離脱組よりも、途中参加組が多かったといことです)。
一方、今回の「虎に翼」は16.4%と、微差ではありますが、「らんまん」より良い滑り出しなのです(実は、「ブギウギ」は16.5%とさらに高かった)。今後、さらに上がっていってほしいなあ、と思います。
というわけで、どっちのドラマへの期待値が高かったから本がどう、という話ではないようです。マーケットのニーズというよりは、作り手側の事情だと言えそうですね。
仮説その2:出版社に牧野富太郎ファンが結構いた
これはかなりある線だと思います。
出版社で企画を立てるとき、「キャラが立っている」人物かどうかという視点は重要です。小学校中退で自分で研究を続け、東大に出入りを続けて出禁になる、妻が頑張って夫を支えたなど、話のプロットも知名度があるというのも強みだったのかもしれません。
また、『舟を編む』もそうですが、辞書や図鑑を作る話って、何だかそそられませんか?牧野富太郎といえば植物図鑑ですが、紙面に世界を作るような話を好きな編集者は結構多いはずです。何なら、それがしたくて編集者をやっている人も多いはずなので。
あと、個人的な感想になるのですが、出版社には植物ファンも結構いるような印象があります(理由はわかりませんが)。
無論、リーガルものが好きな編集者もいるので、どっちが多い、とは言いにくいのですが、出版社は文学部出身者の多い業界。名前をつける、分類する、という話は、学芸員やメディア志望者としてはそそられるテーマなのかもしれません(あとは、構造主義などの現代思想ファンや政治学関係者も、言語と権力の関係性などが好きだったりします)。
仮説その3:三淵嘉子について書ける人が少なかった
実は、これが最大の理由だと思っています。
牧野富太郎について書ける著者はある程度見つけられそうな気がしつつも、三淵嘉子について書ける人が少なかったというのは大きいかと。
幸いにも日本法制史がご専門の神野潔先生に執筆を依頼することができましたが、その辺の専門知識がある著者は確かに少なかったです。あと、もともとの知名度という意味でも、やはり牧野富太郎の方が高いような気はします。
そういう意味では牧野富太郎研究者も決して多いとは言えないかもしれませんが、既刊本が多いため情報は結構出ていました(ただ、自叙伝などを読んだ人はわかると思いますが、晩年の記憶をもとにしているため時系列などが不確かなところもあり、ファクトチェックは牧野本を作るときに苦労した最大のポイントでもありました)。そのため、そうした情報をもとにノベライズしやすいということでもあったので、牧野本は小説が多かったような気がします。
三淵本も、今後は小説が増えてくると思いますが、法律関係の資料へのアクセスに難しさを感じる作家さんも多いのかもしれません。もちろん、実際どうなるかはわかりませんが。
いかがでしょう?
書店店頭でのフェア、ラインナップが多いとやはり目立ちますし、盛り上がっている感がありますが、少ないとちょっと地味な印象があるかもしれません。しかし、本が多ければ、その中から選ばれる確率も下がってしまうというデメリットもあります。要はレッドオーシャン。
そういう意味では、ラインナップが少ない方が、競争相手が少ない分、選ばれる可能性が高くなるので、(出版社としては)実は美味しいのかもしれません(一方で書店さんの側からしたら、そのコーナーのパワーが少ないとも言えるので、難しいところ…)。
この辺は終わってみないとわかりませんが、一般的には、ドラマの人気が出れば本も売れると言われています。今回もドラマが盛り上がってくれることを期待したいです!!
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