【妄想小説】2.29事件
ある夏のことである。
東京都港区のとあるラーメン店がブームとなっていた。
このラーメン店では山盛りのもやしと脂、にんにくを売りにしていて、
多くのファンを集めていた。彼らは「何故そこまで食べるのか?」と聞かれると、
「そこに山があるから」と答える猛者ばかりであった。
そのブームは次第に加熱していき、昼間は長蛇の列をなすことになった。
しかし、その結果付近の住宅、オフィスからにんにく臭いとのクレームが相次ぎ、公害ならぬ口害という新たな社会問題が浮上した。
事態を重く見た政府はにんにくの生食を禁止する法案を提出、総理自ら件のラーメンを完食後に委員会でプレゼンするという奇策が奏功し、前評判を覆して衆院を通過してしまった。
食の自由を侵されることを恐れた市民は立ち上がり、ネットでデモを呼びかけて国会前に大挙して押し寄せたが、甲斐なく参院も通過し、稀代の悪法「にんにく生食禁止令」は成立してしまった。
時は流れ閏年202×年2月29日、4年に一度の「にんにくの日」である。
この日、テロを警戒する警視庁は都下のラーメン店に警官を配備、とりわけ港区には機動隊を待機させていた。
正午になり、全国のラーメン店ににんにくを持ち込み、その場で一斉にすりおろし始めたレジスタンスは次々と逮捕され、その際「にんにく万歳!」と叫び続けた。
レジスタンスの隣で揚げにんにくをラーメンに入れていた市民はこの様子をYouTubeにアップ、瞬く間に全国で反政府デモが起こった。
政府はひるまずにデモ弾圧の姿勢を示したが、国会上空からドローンですりおろしにんにくを散布する反乱軍が登場、ついに屈服して「にんにく生食禁止令」を廃止した。
この日の出来事は「2.29事件」、あるいは「ガーリック革命」と呼ばれている。口害対策は道半ばだが、持続可能な食文化を国民は追求していくことであろう。
(上記の話は全てフィクションです。実在の企業・団体とは一切関係ありません)
注:以前書いていたブログを転載し、一部修正を加えました(https://ameblo.jp/mosotogenjitsunoahida/entry-12325280284.html)
編集者をやっていると、時々創作系もやりたくなりますね笑