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メトロに乗って。            ~「機動戦士ガンダム」のグループ鑑賞券が誕生した日~

日比谷線の東銀座駅の改札を抜けて歌舞伎座の正面に出る。
晴海通りの喧騒を聞いていると右隣に「文明堂」があらわれる。
現代的なビルに建て替わって昔の面影はないが、この前にくると、1981年にぼくの父親くらいの歳の上司といっしょに「機動戦士ガンダム」のファンのグループと2階のレストランで何度も食事しながら、彼らからアニメ宣伝のヒントをもらったことを思い出す。
ファンのグループとはいくつかお付き合いをしたが、最終的にひとつのグループと何度も会ったように記憶している。大学生中心のグループだった。
彼らは、「グループ鑑賞券」のアイデアをくれた。
2枚や3枚ではなく、仲間で分けることのできる「4枚つづりのグループ鑑賞券」がこの場所で誕生した。
「グループ鑑賞券」は映画の前売券で、4枚つづりで4000円、1枚あたり1000円だったと思う。しかしファンは切取り線の入った4枚を決してばらして使うことはなかった。
このアイデアは、営業部、興行部の大反対にあった。子供にそんな高いものを買わせるのはいかん、親やPTAからなんか言われたらどうする、という意見だったと思う。
しかし、上司の宣伝プロデューサーや日本サンライズの後押しがあって実現した。
安彦良和さんのキャラクター券、大河原邦男さんのメカ券、の2種類のグループ鑑賞券を用意した。もちろん、1枚の単券も安彦さんと大河原さんの2種類を用意した。グループ鑑賞券に安彦さんと大河原さんのB全ポスター、
単券には安彦さんと大河原さんの半裁ポスターを各1枚づつつけた。

たしか「哀・戦士」からグループ鑑賞券は登場したと思うが、公開初日に、新宿松竹(満員で上の階のピカデリーだったかも)で監督、スタッフ、声優の舞台挨拶があったと思うが、そのときに朝早くならんだファンに聞いたところ、彼らは入場にはグループ鑑賞券や前売券を使わずに、いわゆる映画の入場券を別途、窓口で購入して並んでいた。彼らは、アルバムにグループ鑑賞券や前売券やちらしなどをコレクションしていて、得意気に見せてくれた。彼らファンはかならずしもグループできているわけではなく、一人でやってきたファンがほとんどで、自慢の品を持ってきて、ファン同士で交流をしていたと思う。初対面で会ったファン同士はすぐに意気投合して仲間になっていった。

SNSのない時代、人と会うことで友人を増やしていったのですね。この仲間の輪が全国規模でひろがり、今日のガンダムとなったんだと思うと、感慨深いものがある。


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