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子どもが与えてくれる非合理的な幸せ
長かった本州生活も今日が最後。明日の11日に、ぼくとスピカは北海道に戻ることになった。
また一人と一匹の独身生活が始まる。これからしばらく、ほとんど全ての時間を自分の考えたとおりに使うことができる。
遅れているライティングや研究レポートの仕事をすすめることもできるし、昨年の農業のまとめや、今年の農業の計画を立てることもできる。やるべきことを進めながら、気分転換にNetflixを見たり、久しぶりにPS4をやったっていい。そうそう、読みたいと思っていた本だって溜まっている。
何だってできる。
ただ、さみしい。
ぼくのことを乗り物の様に登ってくるつむぎがじゃれついてくることもないし、櫂が泣いておむつ交換を訴えてくることも、フォニックスに反応して笑顔になってくれることもない。
4年前にはこのふたりとも存在していなかったのに、いまではぼくの幸せの中心点だ。
離れるさみしさを感じることで、改めてそのことが実感できる。
この感情はどこから生じるんだろう。
つむぎも櫂もぼくに、金銭的にも仕事的にも、時間の使い方的にもなんら具体的なメリットを与えてくれていない。なんなら、つむぎの相手をしているのは結構たいへんだし、言うことを何一つ聞かなくてイライラする事もある。まだまだ泣くことでしか意思表示できない櫂の世話だって思うようにはいかない。合理的に考えるとデメリットばかりな気さえしてくる。ぼくの人生が終わって、その先に2人が生きていてくれたとして、それがメリットなのかはわからない。
それでも、2人はぼくにとっての幸せの中心で、触れているだけで全て与えてくれているとさえ思える。
とても不思議だ。実際に彼らと暮らしてみなかったらきっと想像もできなかった感覚だろう。この感情も何かの刺激により、遺伝子発現が変化した結果なのだろうか?
ともあれ、つむぎと櫂と幸枝さんとスピカとぼくの、楽しく、新しい経験に溢れた暮らしを築くためにも北海道に一足早く戻って頑張ろう、と思うのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。東京から北海道オホーツクの美幌町に新規就農した4人と1匹家族の農業、子育て、おすすめスポットなどをほぼ毎日更新しています。もしよろしければ「スキ」「フォロー」をお願いします!
(登場人物)
ぼく:東京大学で農学博士取得後、ベンチャーで8年勤務。その後、北海道で新規就農。
幸枝さん:ぼくの妻。北海道大学で生命科学修士、ぼくと同じベンチャーで同期入社。2015年に結婚。
つむぎ:3歳の長男。北海道で元気いっぱいに成長中。電車、働く車、飛行機など乗り物大好き。
スピカ:2歳の猫。女の子。網走の病院で保護されていたところからぼくの家にやってくる。
櫂:0歳の次男。長男が騒ぎ回る横で、どっしりと寝ている大物感を漂わせる。
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