うどんとフォークと作戦会議
机の上には、底の深いお皿にもられたうどん。つむぎの左手には子ども用フォークが握られている。
息を呑んで見つめる、ぼくと幸枝さん。
フォークがうどんにむけて突き出される。
すっと引き上げる。フォークに刺さった2本の麺。
どうなる?いけるのか?
緊張の瞬間。
「でーきーなーいー!!」
泣きながら怒り出すつむぎ、フォークをすごい勢いでうどんにぐさぐさ。
2本の麺しか取れなかったことが不本意だったらしい。あー、やっぱりだめかぁと苦笑いのぼくと幸枝さん。
「できない、できない、でーきーなーい!!」
自分でご飯を食べようとするつむぎ。思い描いていた通りにできないと、ものすごく嫌がるのだ。
「できてるよ、2本刺さってるじゃん。これ食べたら良いよ」
声をかける幸枝さん。
「できなぁーいぃー」
聞く耳を持たないつむぎ。
「わかった、わかった、じゃあ作戦会議いくか?」
ぼくが提案する。
「さくせんかいぎぃー」
手を伸ばしてきて抱っこを求めるつむぎ。抱っこして玄関から表に出る。
つむぎはしだいに落ち着きを取り戻してくる。
「どうしたの、なにができなかった?ちゃんととれてたよ。うどんもっといっぱいとりたかったの?」
「うん、とりたかったぁ」
「そかそか、じゃあつぎはもっと落ち着いて、ゆっくりゆっくりぐさってしてみたらいいんじゃない?やってみる?」
「うん、やってみるぅ」
作戦会議を終え、家の中に戻る。
「ただいまぁー」
また食卓に向かうつむぎ。
底の深いお皿にもられたうどん。つむぎの左手には子供用のフォーク。息を呑んで見つめるぼくと幸枝さん。
フォークが突き出される。そしてすくい上げた先にはさっきより多いうどんが刺さっている。
「できたねぇー、すごいじゃん、つむー」
褒め称える幸枝さん。満足気なつむぎ。いっぱいとれたうどんの半分以上は口に入り切らずこぼしながら食べる。
ふぅ、よかったよかった。
そして、フォークは再度繰り出される。その先には2本しかうどんが刺さっていない。
「でーきなーい!!」
「とれてるよ、大丈夫だよ」
「でぇきなぁい!!」
「よしよし、作戦会議行くか?」
「さくせんかいぎぃ」
つむぎを抱っこして表に連れ出す僕。会議の結果、今度はフォークを変えて挑戦してみることになった。
以降、この繰り返し。D.C.
これが我が家で最近よくあるにぎやかな食事風景だ。
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