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子育ては私の生きがい。子離れに悩む65歳

「親は子どもが大人になったら子離れしなくてはいけない」このようなフレーズを聞いたことがある人は多いかと思う。
多くの親が子どもの自立へ向けた教育をするが、その終わり時が見つからずに悩んでいる母親もいる。
一体なにをして育児終了となるのか、そもそも子離れしなくていけないものなのか。
今回は、子離れについて悩みを抱えている律子さんに話を聞くことができた。


なかなか授かることができなかった子ども。団地での子育ての葛藤

律子さんは65歳の女性。
現在は週3のパート勤務をしている。
24歳の時に結婚したものの、なかなか子宝に恵まれなかった。
結婚6年目で初めての妊娠で長男、そして3年後に2人目である長女を出産した。
周囲と比較すると遅めの出産であったと語る律子さん。
「妊娠できなかったのは精神的にも辛かったです。特に義母からの“子どもはまだ?”という言葉にうんざりでしたね。だから妊娠した時は、嬉しさと開放感が一気に押し寄せました。」

子宝にも恵まれ順風満帆なように見えたが、育児環境は決して恵まれたものではなかった。
「実は主人、アルバイトを転々としていたんです。なので、子どもが小さいうちは団地に住んでいました。」
当時の家賃は2万円ほど。
相場より安い金額で借りることができ、助かったと語る。
「狭いし、集合住宅なので、子どもたちがうるさくないか常に気になっていました。それに、学生時代の友人の家庭環境と比較すると・・・惨めさもありましたね。」
「主人は収入がないくせに浪費が激しんです。ブランド品とかアンティーク品のコレクションにお金を使います。指摘すると怒鳴られるので・・・黙ってみることしかできませんでした。」
律子さんは厳しい経済状況の中、子ども達の為にとお金を貯め続けた。
時には離婚を考えた時もあったが、踏み込むことができなかった。

しかしある日、律子さんに転機が訪れる。
「主人が公務員になったんですよ。用務員の仕事なんですけど。」
アルバイト生活とは異なり、安定した収入を得られるようになった律子さん一家。
そのため、団地の家賃も上がった。
「これを機会に団地を出て、マイホームを購入することにしたんです。」
念願かなってマイホームを購入、現在もローンを返済中。
「25坪ほどなんですけど、私にとってはお城です。子ども達もすごく喜んでいました。」
律子さんが45歳の時の出来事だった。

アラサー娘と姉妹のような関係

「娘は30歳になるんですけど、姉妹のような関係です。すごく仲がいいので、一緒に旅行へ行ったりすることもあります。」
「お金の面でも面倒見てもらうことがあります。主人の稼ぎがすごくいいわけではないので、出費の多い月は赤字になることが多く、その度に娘が心配して貸してくれるんです。未だに50万円ほど借りちゃっていますね。」
「悪いなぁとは思っています。でも娘に甘えちゃっている自分もいます。」

「1年ほど前、娘が結婚したんです。地元で農家をやっている高校時代の同級生。」
律子さんは、娘の結婚に対して語り始めた。
「嬉しかったですね。全然結婚の話がでなかったので、心配していたんです。」
「その反面、“遠くに行っちゃうのかな・・・”って寂しくなったこともありました。でもそんな心配は必要ありませんでした。地元に残ってくれたので、週2日くらいで家へ帰ってきます。」
結婚後、実家から徒歩10分ほど離れた場所に家を借りた娘夫妻。
シフト制の仕事で働いているため、土日休みのご主人とではなかなか時間が合わない。
一人の時間が多くなってしまう娘を心配し、実家へ呼ぶようにしている。
律子さんも娘の自宅へ行くことが多く、忙しい娘に代わって洗濯物を畳んだり料理をする。
「娘は仕事が忙しいので料理をしないんです。だから私が作ったものを置いて帰ります。」
今では合鍵を手に入れて、自由に行き来している。
「結婚前よりもより絆が強くなったように感じますね。すごく素敵な親子関係だと思っています。」

大好きな息子。関係を阻む嫁

「娘とは良好な関係を築けているんですよ。でも息子が・・・。」
律子さんは重い口を開き始める。
「息子、結婚してから私に冷たいんですよ。間違いなく理由は一つです、嫁の存在ですね。」
「嫁も最初は良かったんです。すごくニコニコしていて愛想がよくて。でもある時から攻撃的になったんです。」
「忙しく働く二人の為に、沢山の食材を持って自宅へ行ったんです。そしたらカギがかかっていたので、マンションの管理人さんに事情を話して鍵を借りて自宅へ入り、冷蔵庫に食材を入れました。どうやらそれが気に入らなかったみたいです。食材がダメになっちゃうし、仕方がなかったと思うんですけどね。お金もこちらが支払いました。何がダメだったのか未だに分かりません。」
それ以降、律子さんとお嫁さんの間には深い溝ができたと語る。

「息子は嫁に支配されているんですよ。小さい頃は素直で可愛かった。そんな息子がガラリと変わるなんて思えません。」
「息子に連絡してもイマイチ・・・。嫁が止めているんでしょうね。」
「このことを娘に相談したんです。そしたら、“お兄ちゃんに関わるのは辞めたほうが良い”って言われました。いわゆる子離れですかね。」
「でも子離れって必要ですか?大切な子どもであることには変わりません。こんなことを娘に言われるのが辛かったです。」

「なんとなくですけど、息子と嫁、上手く行ってないんじゃないかなって思うんです。子どもを作る気配もないし、共稼ぎだし。」
「だからいつか時がくれば、全て解決すると思います。それまで私は息子を待ち続けます。」

「不満はないといえばウソですので・・・。」

律子さんに子育てについて点数を付けてもらった。
「息子60点、娘100点、足して2で割って80点です。」
「娘に関しては文句なしです。この先も仲良し親子で行きたいと思います。」
「問題の息子ですが、嫁さえいなければ100点な関係じゃないですかね。だから離婚するまで我慢します。」

「色んな意見があると思いますが、私は無理に子離れする必要はないと思っています。」
「大好きな子どもはいつまでも自分のもの。私の生きがいです。それを邪魔されるなんてありえない。」
「これからも子どもたちからは、“頼れるお母さん”であり続けたいです。」

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