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【飲食キャリアレポート②】優秀なサラリーマンが店舗マネジメントで失敗する理由、その対策

こんにちは、吉田柾長です。
私は飲食業界で働く方のキャリアパスを広げたく、Restaurant Career Lab.という事業を4年続けております。


主な取り組みとして、飲食店で働く人に、飲食店業務以外のお仕事を依頼しています。
人気店の店長が別店舗のコンサルに挑戦する機会を提供したり、接客が得意な方を集めて営業代行事業を展開したり、いろいろなチャレンジをしてきました。
その過程で気付いたことを、“飲食店で働く”→“別のことに挑戦する”というキャリアパスについて2年ほど前にレポートしました。


そこからさらに発展し、飲食店の経営や運営代行、店舗コンサルを通じ、店舗の経営管理をはじめマネジメントにも関わってきました。

今回は「サラリーマンとして評価されステップアップした結果、店舗経営を担うことになった」というキャリアパスにおける、店舗マネジメントの課題についてレポートします。

ニッチだけど、よくあるケースなんです!


収益や戦略の話ではなく、マネジメントにフォーカスします。

そして事例つきで解説できるものではないので、今回は文字だらけのレポートです🙏


自己紹介

吉田 柾長(よしだ まさなが)

2016年に青山学院大学 国際政治経済学部を卒業後、株式会社ぐるなびの営業部にてセールス・CSを経験、企画部への異動後はマーケティングとPMを経験。2019年に株式会社アスラボに転職し、経営企画部とマーケティング部を兼任。2020年4月にマーケターとしてフリーランス転身、同年8月には不動産再生の株式会社スペリアルを取締役COOとして創業。2021年9月に株式会社Core Drivenを代表取締役CEOとして創業。「これからの飲食店DXの教科書」著者。


参考までに、店舗やスタッフのマネジメント経験を一部紹介します。

株式会社スペリアルの取締役COO(創業メンバー)として、直営店舗の立ち上げや店舗責任者、プロデュース

b.e.park
neriba

弊社(株式会社Core Driven)として、飲食事業のプロジェクトマネジメントや店長、プロデュースやコンサルティング

Red.
中華食堂ばく

弊社事業「Restaurant Career Lab.」における業務委託マネジメント

スキーム

店舗経営、運営代行、業務委託やアルバイトのマネジメントなどを経て今に至ります。


優秀なサラリーマンが店舗マネジメントに失敗する理由

弊社のRestaurant Career Lab.は飲食店のプロ人材をネットワークしており、店舗運営や経営管理に関するご相談を多々いただきます。

その中でも特に多いのが、優秀なサラリーマンが飲食事業の経営やプロマネに初挑戦した結果、現場と軋轢が生じているという相談です。

  • 非飲食企業の新規事業で店舗責任者を任されたが、店長やアルバイトと溝ができてしまった

  • 様々な事業でマネジメント経験を積んでから独立して店舗開業したのに、過去一番うまくいっていない

  • 責任者がすぐに辞めてしまい、現場の管理業務が手離れしない

このパターンだと収益改善するための体制が整っておらず、「幸い暇だから何とか店舗運営を回せている」みたいな事態にも…最悪ですよね。


困っている当人に話を聞いてみると非の打ち所がないくらい優秀で、新規事業やマネジメントの経験が豊富でも、この事態を再現しておりました。

ただ、詳しく話を聞いてみると「この人は優秀だけど店舗現場とズレているな」と徐々に感じていくこともほぼ毎回。

そのズレの正体を5パターン紹介します。


①コミュニケーションのズレ

まずは想像つきやすいもの。

優秀な方ほど様々な業務を兼任していたり、現場にいないマネジメントを目指すことが多いです。
店舗ビジネスは売上の上限値が決まっているので、ご自身の生産性を高めるために仕組み化を目指すことは当然だと思います。
そうなるとできるだけ店舗には行かず、PC作業しやすい環境から遠隔で店舗に指示を出すことが多いです。
しかも優秀な方ほど理論整然と端的に伝達するテキストコミュニケーションが得意だったりしますよね。

一方で、店舗現場で働く方の主なコミュニケーションはほぼ口頭です。しかも顔を見ながら。
用件だけ端的に整理されたテキストで伝えられると、尊重されていなかったり、冷たい人だと感じられます。

何より、現場に来ないこと自体が不満を抱かれやすいです。
店舗ではマニュアルで決まったこと以外に、日々イレギュラーが発生します。それを店舗で指示もなく解決している人にとっては、「私が指示以外のことも拾っているから、この店舗は回っている」というスタンスになっていきます。
そんなことが続くと、現場にいない責任者に対して無責任であると不満が大きくなっていくわけです。


②経歴や価値感のズレ

優秀であるほど、店舗スタッフにとっては心理的な壁を作ってしまいがちです。悪く言えば「すごい」で片付けられる存在になってしまいます。
その「すごい」はかなり厄介で、気軽にコミュニケーションが取れないため、報告連絡相談には大きな障壁です。

そんな状況が続いた結果として①で解説したような何らかの不満が大きくなると、「すごい」で片付けられていた存在が「現場経験がないから、理解できないんだ」と片付けられる存在になります。

さらに対話が生まれない関係性に悪化してしまい、修復が難しくなっていく流れです。


③働き方のズレ

経営者がマネジメントするパターンでは発生しにくいですが、サラリーマンが責任者のケースで最も発生するズレです。

サラリーマンは基本的に週5時間×8時間+残業というスタイルで働きます。大抵は月〜金の平日勤務で、日中に稼働します。勤務時間外に働くことは禁止されていて、会社によっては許されないことです。

責任者の勤務時間外にインシデントが発生した際、特に店舗でお客様を待たせている場合など、責任者の判断が必要な時に連絡が取れないと店舗は当然困ります。
そこで連絡が取れれば良いですが、取れない場合は現場判断です。
そうさせないために、飲食企業の責任者は休みでも対応することが多いと思います。

そういった勤務時間外の対応を当たり前にやってきた店長や、そういった対応を当たり前に取られてきたアルバイトからすると、休日に全く連絡が取らない責任者のスタンスに不満を抱く可能性が高いです。

(後述しますが、働き方ではなく仕組みで解決できます)


④評価のズレ

店舗スタッフは勤務時間に応じて報酬が決まっており、企業の営業職のようなインセンティブで報酬が大きく変動することはありません。
店舗運営は役割を分けたチーム戦で、人ごとの定量評価が非常に難しいです。
例えば最高の接客をしてお客様がリピートしたとしても、それを評価して報酬を与える制度設計が困難ですよね。

店長が店舗売上をKPIにされることを除いて、基本的には定性評価になってしまうことが多いです。
また他業界より金銭的な報酬の期待より心理的な報酬、やり甲斐を求めるスタッフも多いです。

ただ前述の通り管理者が店舗にいないケースも多く、数値化しにくいパフォーマンスを評価することは困難です。

そして評価制度が機能しないとパフォーマンスに悪影響が出たり、不満が発生してしまいます。


⑤マネジメントの範囲と深さのズレ

サラリーマンのマネジメントは、多くの場合「同じ部署に所属する部下のマネジメント」です。

毎日同じ時間に出社して目の届く範囲におり、Googleカレンダーで何をしているか把握している。
しかも企業や仕事に対して魅力を感じて入社しており、価値観も近い。

一方で店舗スタッフは毎日シフト制で入れ替わり、目の届かない範囲におり、志望動機は店への共感もあれば、距離や時給など条件だけで判断されることも多々あります。
そして何より人数が多い。小規模店舗でも5~10名、大きい店舗だと30~50名が在籍しているケースもあります。

前者と後者ではマネジメント手法が大きく変わるのですが、いきなり広く浅いマネジメントに直面しても対応できません
むしろ育成に力を入れてきた深めのマネジメントをしていた方は、大抵うまく行かない印象です。

敏腕店長がいれば全てを巻き取ってくれますが、その店長依存が離職率を上げてしまいます。


飲食経験がない方におすすめの対策

「経験ないなら無理なんじゃ…」

と感じた方もいらっしゃると思いますが、ここからは私なりの解決方法を紹介します。


★とにかく接触回数を増やす

失敗する理由に挙げた全てに共通しているのは、店舗現場に居れないことです。
一方で経営者や事業兼任されている方は、店舗に行くハードルが高いと思います。

そこで有効な手段はマメに連絡することです。
一回あたりの時間より頻度がポイントで、とにかく放置されていると思わせないことが重要、常に店舗を気にかけている姿勢を見せましょう。
連絡を溜めないように注意し、即答できなくても「打ち合わせ中なので後でまとめて返信するね」と返すだけでも全然違います。

また可能なら、店舗でやることがなくても、店舗で作業するだけで安心してもらえます。
私も店舗運営時は作業場所を店舗に決めて、できるだけ行くようにしていました。頻繁に顔を出していると喜んでもらえることもあり、そこで生まれる何気ない会話で距離が詰まっていきます。

そしてさらに理想的なのは、お互いの経歴や考えを食事をしながらシェアすることです。
私の場合は店舗閉店後にお酒を持っていき、頻繁に会話をしたことがよかったと実感しています。
そこで今の悩みや将来の展望などをシェアできると、前述した①②のズレは無くなっていきます。


★インシデントは自分が対応する

お客様のクレームや店舗システムの不具合など、店舗現場で起きるトラブルはさまざまあります。
発生時に責任者に連絡がいくのは、対応方針が不安だからです。

そういう気持ちを想像できない優秀な方は「こんな感じで何とかしとして」と突き返すような指示をすることもあるのですが、最悪な対応であると認識してください。
あまりにも軽微ならその限りではありませんが、基本は店舗に行って対応、もしくは自分がお客様と通話、システム会社に連絡するなどの対応を取れると良いです。

そういった緊急時の対応は「頼れる存在」というイメージが強くなり、店舗スタッフからの好意度は上がります
実は想定されるインシデントのほとんどが遠隔で指示すれば解決することなのですが、不安なスタッフのために体を張る姿勢自体が重要です。

行けなくても、せめて一緒に焦ってみたり、解決報告がなければ後追いするなど、気にかけている姿勢は見せましょう。


★権限を複数名に委譲する

どうしても顔を出せない、または時間を割けない場合、複数名に権限を移譲できると手離れしやすくなります。

店長1人に責任が偏ってしまうと、前述した③④の理由から「どうして自分だけ」と不満が募りやすいです。
1人に依存しない仕組みをつくることで負担軽減しつつ、不公平感も抑制できます。

そして実は、互いを観測させ合うことができる利点が大きい。

評価者が現場にいないと、店長などの現場責任者はサボりがちです。
いくら優秀な方でも、正直リモートワークや出張先など、誰も見ていないところでサボったことはありますよね…?(私はあります!!!!!!)

それが平気で起こる仕組みを避けるために、また現場責任者自体の問題点に現場目線で気付くためにも、互いに観測させ合うことは効果的です。

私は店長不在店舗でバイトリーダーの複数体制をとっており、自分が現場に行けない状況下でも店舗が通常運転する体制をつくっていました。


他にもいろいろ工夫はありますが、上記で大抵クリアできるので、ひとまずこれで終わります。

いろいろなパターンを見てきているのである程度の相談には乗れるはずです。

ぜひお気軽にご連絡ください!

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