見出し画像

身近な人にはさらけ出せない。

先週、note非公式オフ会に行くにあたって、今まで以上に「さらけ出す」ことを意識した。

画面の向こう側にいる「誰か」が「知人」になってしまうことで、近い将来、かっこつけたことしか書けなくなるだろう。それを打破するために、あらかじめ「さらけ出す」ことに慣れておこうと思ったのだ。

……という思いを綴っていたからか、オフ会のとき、ぐっちさん

「オフ会までにさらけ出すって書いてたけど、実際にさらけ出してみてどうでしたか?」

と質問された。

「いざ書いてみると、特にどうってことはなかったです。隠したいほどのネタがないことに気づきました」

と答えた。本心だ。

◇◇◇

たとえば先週、高校時代の奇行と情緒不安定について書いた。

真面目な式典に安室奈美恵のコスプレをしていったとか、予備校の校長を怒鳴りつけたとか、そういう話だ。

とても恥ずかしい。

だけど、実はこの話をnoteに書くことにはそれほど抵抗がなかった。

いや、書くことには抵抗があったのだけど、いざ書いてみると「別に……」という気持ちになり、公開にはまったく躊躇わなかった。

しかし、この話は山小屋の仲間には絶対に知られたくない。

不思議なもので、不特定多数の「誰か」や、ほぼ初対面のオフ会メンバーに読まれるのは平気なのに、山小屋仲間にだけは知られたくない。単純に、恥ずかしいのだ。

そういうことってないだろうか?

ある特定のコミュニティ(もしくは個人)にだけ、知られたくないこと。

職場の人には知られたくないこと。
地元の友達には知られたくないこと。
家族には知られたくないこと。
恋人には知られたくないこと。

それぞれ、あると思う。

◇◇◇

cakes 担当のIさんと「小屋ガール通信」の連載開始に向けて打ち合わせをしたときのこと。

私が「これ、あまり細かく書くと働いていた山小屋がバレちゃいますよね」というと、「バレたら困るんですか?」と聞かれた。

うーん……。

ネガティブなことを書くわけじゃないから、特定されても小屋に迷惑はかけずに済む……と思う。

でも、わからないな。DRESSの最初の記事が公開されたとき、変な人に絡まれたことがある。私は無名だからSNSでも「たまに変な人に絡まれる」くらいで済んでいるけど、怖い目に遭った人の話もたくさん聞く。

やっぱり、バレないほうがいいだろう。

スタッフのことは個人が特定されないようにかなりフェイクを入れて書いている(イニシャルやあだ名も変えているし、方言なども変えている)。だから、特定されることはないと思う。

だけど、cakes版はよりいっそう身バレに注意しなければ、と思う。

◇◇◇

だけどまぁ、私の「バレたら困る」には2つある。

ひとつは、「一般の読者の方に小屋・および個人がバレたら困る」。上記に書いたような理由だ。

もうひとつは、「山小屋のスタッフ仲間に私が吉玉サキであることがバレたら困る」。

後者は完全に私の都合だ。

なんでこんなにバレたくないのかと言うと、山小屋仲間に「小屋ガール通信」を読まれたくないのだ。

なぜと言われても困る。なぜか、小屋の仲間に自分の書いたものを読まれるのはめちゃくちゃ恥ずかしい。

いや、文章を読まれるのは構わないけど、私が書いたものだとは気づかれたくない。だから本名とは別の「吉玉サキ」名義を使っているし、本名は非公開にしている。

万が一「小屋ガール通信」が有名になったとしても、書籍化してドラマ化したとしても(妄想)、山小屋仲間には私が吉玉サキであることを隠し通したい。

◇◇◇

しかし。

「小屋ガール通信」の連載準備をしていると、罪悪感が芽生え始めた。

本人に許可を取らずにネタにしていいのか?

万が一、本人が気づいたとき、嫌な思いをしないか?

けっこう真剣に悩んだけど、答えが出ない。

一人で抱えきれなくなり、今も山にいる後輩にLINEで相談した。

「ある媒体にペンネームで山小屋エッセイを連載することになったんだけど、みんなには読まれたくないんだよね。もちろん個人が特定されない書き方するつもりだけど、本人が読んだら自分のことだってわかるよね。どうしよう」

「なんで読まれたくないんですか?」

「恥ずかしいから」

「クリエイターなら羞恥心を捨てるべきでは?」

「うるさいな」

「本人に読まれて困るようなことを書くつもりですか?」

「そういうわけじゃないけど」

「なら、気にしなくてもいいのでは?」

「じゃあ、○君のこと書くね」

「それはやめてください」

その後も延々とやり取りが続き、最終的には「個人が特定されない書き方であれば書いてもいい」との許可を(やや強引に丸め込む形で)もぎとった。

でもたぶん、読んだら怒るんだろうなぁ。だから言いたくないんだよ。

◇◇◇

後輩とのやり取りに味をしめた私は、その後、小屋仲間の一人一人にLINEで打ち明けていった。

山小屋エッセイを連載すること。媒体もペンネームも隠したいこと。

実はこの「一人一人にLINEで打ち明ける作戦」はまだ途中で、数えるほどの人にしか伝えられていない。一人一人とじっくりやり取りをすると時間がかかるのだ。

数人のスタッフからは

「山小屋のエッセイなんてたぶん少ないから、本気で検索したらすぐ見つけられるよ」「たぶん、一人が見つけたらあっという間に広まるよ」

と心配された。

cakesでの連載が始まったらバレるかもしれない。

ある程度、覚悟はしている。

◇◇◇

3ヶ月前、実家でニート生活をしていた私は

「たぶんさらけ出した人が一番強い」

という言葉にたまたま出会った。

Twitterで交流のあるねおみのるさんが、ブログに書いていた。

「たぶん」とつけているわりにストレートに心に響く言葉だと思う。

なんだかとても印象に残った。

いつか、山小屋の友達に「これ私が書いたの」ってさらけ出せるようになったら、今よりずっと強くなれるかもしれない。


サポートしていただけるとめちゃくちゃ嬉しいです。いただいたお金は生活費の口座に入れます(夢のないこと言ってすみません)。家計に余裕があるときは困ってる人にまわします。サポートじゃなくても、フォローやシェアもめちゃくちゃ嬉しいです。