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夫婦の会話に中身がない

世の中の夫婦は、いったいどんな会話をしているのだろう。

友達の口から語られる「この前、夫と話してたんだけど~」から続く言葉は、だいたい中身のあるものだ。

でも、中身のない会話もしてるのかな。それをわざわざ、人に言わないだけで。

私たち夫婦はというと、8割方、中身のない話をしている。

今は離れて生活しているのでたまにLINEで通話をするが、先日は、「犬のうんちの大きさをかりんとうに換算する」話をした。

私は最近サモエドにハマっていて、毎日YouTubeでサモエド動画ばかりを見ている。サモエドと暮らしたいという願望が日に日に募るが、うんちの大きさを想像すると躊躇してしまう。

そう言うと、夫は「どのくらい大きいの?」と言った。

「チャンプ(実家にいたヨークシャーテリア)は体重4キロ弱で、うんちはかりんとうくらい。だから、体重40キロの犬なら、うんちはかりんとう10本ぶんじゃない?」

「えっ、長すぎない?」

「縦につながないで。そんな細長いわけないから」

「え、じゃあ横……?」

夫は何やらしばらく考え込んでいたが、いきなり「えっ、そんなことある?」と笑い出した。

「何? 何を想像してるの? 怖い」

「横に10本並べたらすごい大きいよ?」

「いや、横にも並べないで。そんな平べったい板状のうんちなわけないじゃん。もっとこう、ドサっと皿に盛るイメージだよ」

……と、この日の通話は犬のうんちの話に終始した。

目の前に課題しかない夫婦なのに、課題については話し合われない。意図的に目を背けているわけではないのだが、気づけばこういう会話になっている。中身のない話しかできない病。

昨夜は、「バッキンガム宮殿の兵隊さんの帽子ってなんで長いのかな」という話になった。

私が「敵が来たら頭振って帽子で殴る」と言うと、夫は「いや、武器持ってるでしょ」と笑う。

「武器使ってよ。そんな原始的な方法で戦わないで」

「敵に銃口を向けられたら90°にお辞儀して、帽子の先で銃口を塞ぐ」

「至近距離だなぁ」と夫。めちゃくちゃウケている。言った私も、想像したら笑ってしまった。

夫は、「帽子の中に鳩がいて、いざというときは飛び出る」と言う。

「なんのために」

「敵が平和の象徴にビビってる隙に攻撃する」

「平和の象徴、台無しじゃん」

青空とバッキンガム宮殿を背に、カッと目を見開く直立不動の兵隊。彼の帽子から、無数の鳩がブワっと飛び立っていく。

めちゃくちゃいい画だ。漫画だったら見開きだな。

夫と「気が合うな」と感じるのは、真面目な話をしているときよりもむしろ、中身のない話をしているときだ。

夫は今まで出会った人間の中で一番、中身のない話をしていて心地いい相手だと思う。

もしも、犬のうんちや兵隊の帽子の話題にノってくれない男性と結婚していたら、私は結婚生活を続けられなかったんじゃないか。というか、相手が愛想を尽かすだろう。

中身のない話、してたいんだよな。

ガメラも海底で傷を癒していたよ
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ライター・エッセイスト/著書『山小屋ガールの癒されない日々(平凡社)』http://urx2.nu/Vmkr 雑誌やweb媒体で執筆中/有料記事は知人に読まれたくないだけで有益な情報とかじゃないです/お仕事のご相談はsaki.yoshidama@gmail.com

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