見出し画像

書籍「あなたの不安を解消する方法がここに書いてあります。」 #全文公開チャレンジ 第6回

こんばんは。ニッポン放送・アナウンサーの吉田尚記です。

#ふあかい 全文公開の第6回は「メソッド1」のつづきからお届けします。

予約はこちらから

メソッド1  「不安」の正体を明らかにしよう

「なんか大丈夫」感=セルフエスティーム

 直球で問題解決にあたろうが、別のことに没頭しようが、「とりあえずやってみる」というのは、個々の問題の対処法として有効なだけではありません。その積み重ねこそ、不安を感じる自分自身の根本治療となる、とぼくは考えています。
 どういうことでしょうか?

 ここで、自信とは、という話。あなたは、自分に自信がありますか?
 はっきり「ある」と言える人は、この本を手に取っていないかもしれませんね。
 自信には、

 ①プライド
 ②セルフエスティーム

 という2種類があります。
 ①のプライドとは、社会と結びついていて、周囲との比較でつくり出される自信です。たとえば、「自分は有名人と知り合いだ」や「偏差値の高い学校に通っている」といった、あくまでもある社会の中で自分が高い位置を占めていることに安心して成り立つ価値観ですね(もし世界が滅亡してひとりだけ生き残ったとしても全く役に立たない自信、とでも言っておきましょうか)。

 対する②のセルフエスティームとは、そのまま日本語にすると「自尊感情」。社会とは切り離しても、自分自身を信頼できる自信です。ただ、自尊感情というとなんかかっこ良すぎるので、ここでは「よくわからないけど、自分は大丈夫」という謎の安心感としましょう。
 あなたの周りに、本当の意味でみんなに好かれている、特に何かに詳しいわけじゃなかったり、成績がパッとしなかったりしたとしても、やけに毎日楽しそうに過ごしている人っていませんか? 変に構えないから話しかけやすいし、周りからも愛されていたりする。要するに、感じがいい人たちですね。
 そういう感じがいい人は、総じてセルフエスティームが高くて、プライドが低い傾向にあります。自分自身をしっかり保っているから、誰かと比べて誰かをおとしめることもないし、自分も卑屈になったりすることはありません。

 一方、「プライドが高くて、セルフエスティームが低い」人は、周りも接しづらい。いい学校に行っているから、家がお金持ちだから、イケてる誰それと友だちだからといばっている人は、セルフエスティームが低いから、周囲と比較してプライドを毎回確認しなくてはいけない。感じ悪いですよね。
 また、「プライドも、セルフエスティームも低い」人は、自信のよりどころがないから本人が非常に生きづらくなってしまっている状態です。これもつらい。
 そして、「プライドも、セルフエスティームも高い」人は、相当頑張ってる人じゃないでしょうか。ある意味一番理想的ですけど、プライドは社会的な地位と関係するので、そこは、目指しても得られないかもしれない。運の要素もあります。
 あなたの人生の生きやすさの鍵を握っているともいえるのが、セルフエスティームです。セルフエスティームさえ上げれば、人生イージーモードも不可能じゃない。
 では、どうしたら、セルフエスティームを高めていけるのか。

 セルフエスティームとは、何でもいいから「とりあえずやってみる」ことの繰り返しで高まっていきます。たとえば、バンジージャンプ。もともとは南洋の部族の成人の儀式だったわけですが、成人の儀式に選ばれるのももっともです。想像してみてください。不安に打ち克って、数十メートル下に飛び降りる。で、死ななかったとき、どんな気持ちになるでしょうか。私、何度かやったことがありますが、やる前は最悪に不安で、終わった後は悩みとはまったく無縁の、晴れやかな気持ちになります。これが、セルフエスティームです。
 とりあえずやってみる。でも結果はどうなるかわからない。そう、不安です。
 ただ、いったん不安は無視して、チャレンジする。「不安を無視する力」が「勇気」です。その結果、仮にうまくいかなかったとしても「よっしゃ! 死んでないから大丈夫! 次いこう!」と切り替える。不安に立ち向かい続けると、いつの間にか不安を感じる気持ち自体が弱くなって、不安に食い殺されることがなくなります。

 芸能の世界にはプライドだけが高くていつも不安にさいなまれている人もいれば、セルフエスティームが高くて落ち着いているタイプの人もいます。長く活躍する人には、後者が多いです。ぼくが見て来た例でいうと、女優で声優の黒沢ともよさんもそんなタイプ。とてつもなく感じがいい方です。
*8 黒沢ともよ|1996年、埼玉県出身。女優、声優、歌手として活躍。幼少期から演技を勉強し、2000年、NHK大河ドラマ『葵(あおい) 徳川三代』に出演。2010年劇場アニメ『宇宙ショーへようこそ』で声優デビュー。代表作に『響け! ユーフォニアム』シリーズの黄前久美子役など。
 彼女がすごいと思ったのは、演技の疑問を人に質問したことがある、という話を聞いていたときのこと。「電話をかけたら教えてくれて」とごく当たり前に話をしてくれたのですが、それって誰だったの? って聞いたら、「吉田鋼太郎さん」。びっくりします。めちゃくちゃ年上の大御所俳優に自分から電話をかけて質問するって、なかなかできることじゃないですよね。でも、本人は「『わからないことがあったら聞きにきなよ』って言ってたし」、とケロッとしている。
*9 吉田鋼太郎|1959年、東京都出身。俳優。『おっさんずラブ』をはじめ、テレビドラマ、映画などで活躍するほか、劇団四季、シェイクスピア・シアターなどへの在籍経験も持つ本格舞台俳優。自身も舞台演出を手掛け2016年から『彩の国シェイクスピア・シリーズ』2代目芸術監督に就任。

 ああ、私はセルフエスティームが低いな、セルフエスティームの高い、人気者になりたいな、と思いますよね。でもそれは、「to be」の考え方です。セルフエスティームが生まれながらに高い人もいますが、願っていても魔法のように、突然に別人になることはできません。そのためには、彼ら彼女らが何をどうやっているのか、「how to」で考えること。何をやるべきかが具体的に見えてきます。
 その「how to」を実行に移す回数が多ければ多いほど、セルフエスティームは高まります。

考えるよりも、行動しよう

 ぼくは、不安を退治するために必要なのは、朝起きて、「行ってきます!」と飛び出していって、無事に死なずに帰ってきて、「ただいま!」と、元気よくごはんをモリモリ食べることだけだと思います。それでOK!
 一見バカっぽいですが、バカに思われたくない、という願望は、実行していない、プライドだけが高い人が持つものですね。

「人間にとって考える行為は性格を保持するためのもの。性格を変えるためには行動するしかない」
 これは、アドラー心理学の考え方です。
 性格は変えることができる。でも、どうやらそれは考えることによってではない。

 前述の野田俊作先生の『アドラー心理学 トーキングセミナー─性格はいつでも変えられる』のエピソードから、その例をひとつお話ししましょう。心理学の療法のひとつに、みんなでダンスを行うダンス・セラピーというものがあるそうです。
 ただし先生は生徒たちに「ダンスしてください」とお願いだけして、するかしないかは本人まかせ。
 あるとき、どうしても踊らない女性がいて、セラピーの先生に「ダンスをしないのは私の自由ですよね?」という風に聞いてきました。先生は「ダンスをしないのは自由です」と繰り返すだけです。先生は決してダンスをしなさい! なんて強制しないし、ダンスをしなくていいですよ、とも言いません。ダンスをしようがしまいが、その選択権は彼女にあるからです。
 なかなか踊らない女性。しかし、セラピーも3日目に入って、ついに彼女は踊ったのだそうです。そして、最後にはあれほど抵抗した先生の元へやってきて、「ダンスができてすごくよかった」と感動して泣いてしまう、というエピソードです。

 頑なに拒んでいたのに、実際に踊ってみたら「よかった」と言ってしまう。行動によって彼女の性格は変わってしまったわけです。仮に行動せずにずっと考えていても何も変わりません。
 アドラー心理学では「考えること」は自己正当化だといいます。つまり、人は「自分はこのままでいい」と認識するために考える。性格を変えないという決断を常にし続けているってことですね。だから、性格は変わらないままです。
 たとえば「ピアノが上手くなりたい、でも……」と考えていればいつの間にか上達するでしょうか? するわけがないですよね。練習するしかないんです。
 勇気を出して行動することこそ、性格を変える唯一の手段、というのがアドラーの考え方です。やるかやらないかはもちろん自由ですが、変わりたいと思ったら、とにかくやるだけ。実際にピアノがうまくなるかどうかは運次第ですが、セルフエスティームは高まりますよ。

もくじ

はじめに
メソッド1
「不安」の正体を明らかにしよう

 -不安はどこからわいてくる?
 -不安は社会の原動力

 -不安の先には、死しかない
 -コミュニケーションからの完全な断絶が、死

 -「不安」はまったく役に立たないもの?
 -不安への対症療法は、「これからどうするか」

 -とりあえず、具体的にやってみる
 -具体化って超大事

 -「なんか大丈夫」感=セルフエスティーム
 -考えるよりも、行動しよう

 -人生で一番役に立たないプライドの話
 -手っ取り早くセルフエスティームを上げるには
 -COLUMN① パソコンは生産の道具、スマホは消費の道具
メソッド2
知らない人に話しかけてみよう
 -「モテたい!」は、叶うのか?
 -コミュ力は才能じゃない
 -知らない人に話しかけるために必要な持ち物
 -コミュニケーションとは、協力型のゲームだ
 -聞いたらダメ、やったらアウトってなんだろう?
 -人に好かれる方法はない
 -彼氏・彼女がほしい! だったら知らない人に話しかけよう
 -実践編① コミュニケーションに最も必要なのは「質問力」
 -実践編② 質問はWhyよりも、Who・When・Where・What・Howが有効
 -実践編③ 会話のきっかけ「木戸にたちかけし衣食住」
 -実践編④ 会話を「えっ!」でトラップする
 -実践編⑤ 間違った情報でもぶつけてOK
 -実践編⑥ 自分の気持ちを表現する=説明力
 -実践編⑦ あいさつをしよう、時間を守ろう
 -実践編⑧ 大きな声が出せていれば、なんか大丈夫
 -COLUMN② 「集中力」は「無視力」
メソッド3
“深刻ごっこ”禁止
 -悩みは自分に何をもたらす?
 -「みんな悩んで大きくなった」はウソ
 -深刻さとはエンタメである
 -決断だけが、人を成長させる
 -承認を目的とすることはできない
 -きみが不機嫌になるのはなぜ?
 -実践編① バンザイして悩んでみよう
 -実践編② 悩みから「暗くなる」をとっぱらってみる
 -実践編③ 適度に“深刻ごっこ”を楽しむ
 -実践編④ 悩むの禁止
 -実践編⑤ やりきることを目的にする
 -実践編⑥ 他人に期待しない
 -実践編⑦ 愛嬌最強説
 -COLUMN③ 引き出しを増やす方法
メソッド4
「面白そう!」さえあれば、人生は大丈夫
 -「夢を持て」って言うけれど
 -100個やって、どれか1個ハマればラッキー
 -今しかできないことをやろう
 -〇〇をやりたいのか、〇〇家になりたいのか
 -楽しむってなんだろう?
 -完全な自由はないけど、どの不自由にとらわれるかを選ぶ自由はある
 -結論。不安を解消する方法=知らない人に話しかける
おわりに

というわけで、今日はここまで。続きはまた明日!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?