ブラック企業からの解脱②
「毒からの解脱」という本を出しました! 初小説! 良かったらどうぞ!
僕は大学院に進学していたが、学費が払えなくなった為中退した。経験なしでも良いという事で、1社目は建築会社の現場監督をやった。
何で受かったのかというと、若手不足だからだ。この建築業界がここ15年で150万人も労働者がいなくなって、平均29歳以下の人材が全体の10%、
50歳以上が全体の約3割という建築会社の現場監督の仕事は大きく分けて①工程管理②品質管理③安全管理④何でもである。①工程管理というのは現場の施工主に「今日はどこどこから作業してください」と作業の伝達する作業だ。②品質管理というのは工事前に建物の風景をバシャバシャ撮る仕事。
③安全管理は字の通りで火災など発生させないように点検する仕事。
④何でもというのは例えばマンションの建築説明会のビラをポストに入れて、実際の説明会を開くとか。やはりパチンコ屋やラブホ、風俗店は建てられなかったケースが多い。
辞めた理由は仕事内容がクソだったからだ。特に新築マンション。勝どきの860戸のマンションの現場監督をする事になった。最近入居する前に入居者の意思によってレイアウトが変更可能なマンションが流行している。 居室をつなげて広いリビングにするといった典型的な間取り変更プランをはじめ、通常サイズのクローゼットを広げてウォークインにしたり細部にわたって変更が可能である。こ
れが施行主にとって非常に迷惑なのである。
先ず860戸マンションには施工主が1000人以上必要である。毎週毎週購入者のリクエストによって作業が変わるので複数の現場監督がいるのだが揉めに揉め、チェックリストまみれになり、確認作業だけでも膨大になる。
僕も彼らの鬱憤を聞いたり、汗まみれの現場にいるから臭いが何度洗濯しても染み付いてシャツばかり購入する。もう嫌になってそこは9ヶ月で辞めた。
2社目で僕はIT会社のデータアナリストになった。僕の学部、院時代は統計のゼミに入っていて、ようやく自分の過去の経験を活かせそうな所に就いた。というかその方が収入が良いのだ(当たり前だ)。
その時の仕事は金融系や通販系大手企業中心とした企業向けのビックデータの分析、SAS等を活用したBIシステム開発といったいきなりクソ重い奴だった。
入社後1~2ヵ月研修があり、3~4ヵ月のOJTを受けながら顧客先にて業務に慣れるという案内なので若干安心して入ったが、作業量が半端なく多く連日深夜2時、始発で帰る毎日だった。
しかも会社が小さいので一緒に働く新卒が1人入ったが、まともなフォローがないにも拘わらず初心者なので僕が徹底的に分析のイロハを教えたりと業務以外の事を結構引き受けたにも拘わらず、僕は上司や社長に気に入られず、僕の給料は上がらず、評価はずっと低かった。
1年半後、一部上場のリサーチ業界ではかなり有名な会社に転職した。僕はデータサイエンティストとなり、消費者の購買履歴データと、POSデータサービスを中心に集められたデータを分析することになった。
まあまあまあこれが、前述の通りブラックで、みなし残業45時間という「みなし」という僕の一番嫌いな単語が入り、月150~160時間の残業が常だった。朝6時に帰宅したら11時には出社。平均睡眠時間は4~5時間。僕がわかった事は睡眠時間がないと良いパフォーマンスなんて出来やしない、という事だ。というか、この状態がずーっと続くと生命の危機になる。
ここでも業務外の事を沢山任された。後輩の指導、勉強会の主催、その後の飲み会のセッティング…。でもおかしいと思った事を指摘する上司にまた嫌われた。もう僕はその上司に嫌われても良いと思った。
僕は何故頼まれたら断れないのか考えて、それは学生の時からそうで、中・高校僕は生徒会長だったし、大学はゼミ長になってなかなかゼミに来ない学生を必死に説得したし、もちろんゼミ旅行は僕が殆ど計画、実行した。 何かそのあたりのエピソードって就活で割と使えるんだけど、僕は全ての行事で楽しんだことがなくて、苦がずっと続いて、僕はずっとどうしてこうなんだろうかって5日間の有休の間に産業カウンセラーに相談したのだ。