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【ショートショート】節約家の主張

昼下がりの喫茶店。
友人は大きく溜息をついた。
「おいおい。まるで私と居るのがつまらない様な溜息だな。親しき仲にも礼儀ありだぞ」
「こりゃ失敬。君を見てるとつい昔を思い出してね」と苦笑いしながらも頭を掻いた。
ははんと私はこれ見よがしに髪をかき上げた。
「なるほど分かったぞ。要するにお前さんはケチなんだよ」
「君こそ親しき仲にもじゃぞ。わしはケチではなく節約家なんじゃよ」
まるでケチじゃない事を証明するかのように友人は珈琲のおかわりを頼んだ。
「長年の付き合いだしお前さんの性格は重々知っているつもりだ。お前さん、虫歯になってから歯磨きをしっかりするタイプだろう」
「な…。だ、だったらどうだって言うんじゃ」
「いいか、歯磨きは治療じゃなく予防だ」
珈琲を運んできたウエイトレスはキャッキャと楽しそうな老人二人に思わず声を掛けた。
「お姉さん。こいつハゲるまで育毛剤をケチって今慌ててつけとるんだよ」と白髪の老人は言った。
「だからケチじゃなくて節約じゃて。お姉さん、物は何でも意味のある内に使うんじゃよ」
3人の笑い声が店内に響いた。

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