【ショートショート】困る理由
「先生。今日伺ったのは非常に困っていましてお知恵を拝借したいです」
「ほう、それは困りましたね。で、どうなさいましたか」
「実は私、困った人を助けたいのですが私自身が困ってしまい助ける事が出来ないでいるのです」
「なるほど。それではまず貴方自身が誰かに助けてもらいそのお困りを解消してみてはいかがですか」
「それが出来れば困らないのです」
「それは困ったな。一体何故です」
「自分の困りを自力で解消出来ない様では人様のお困りをお助けする資格などありません。私はそう考えております」
「…ちなみに。ちなみにですよ。今私に相談しているお困りと貴方が自力で解消したいお困りは別のモノですか」
「別の困りです」
「では私がどうこうアドバイスした所で貴方の本来のお困りを解消する事にはならないという事ですね」
「困った事にそうなります」
「一度整理しますね。貴方は困っている人を助けたいが貴方自身が困ってしまいそれが出来ないでいる。その事に困って私の元を訪れたが、根幹の困りは自力で解消したいという基本理念があるので、私にはその基本理念を崩さないようにどう困りを解消すればよいかという相談でよろしいですね?」
「流石です先生。その通りです」
「これは非常に困りました。…ただ方法が無い訳ではありません。最後の手段と言っていいと思います」
「おお!先生ならこの困りの連鎖を何とかしてくださると信じていました!」
「…お困りの貴方をどうする事も出来ず困っている私を助けてもらえませんか」
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