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【ショートショート】土曜日の電撃発表

-今回の電撃発表のご感想は?-
「どうって一番割を食ってるのは私だと思います」
インタビュアーの質問に答えると水曜日は肩を落とした。
「元々週中で好かれてなかったんです。なのにいきなり月曜襲名という形は…ちょっと心の整理がつかないです。納得は…いってないですね」

事の発端は土曜日の電撃発表だった。
「私は、日曜日の手前という恵まれた環境で週休二日制の導入と共に『休日』という称号を得ました。しかしこのまま休日に甘んじてて良いのだろうかという疑問を持つようになりました。
自分の可能性を求めたいという思いと、長年辛酸を嘗めてきた月曜日に敬意を称して休日を譲渡したいと思います」
「おいおい、ふざけるな」と真っ先に異を唱えたのは金曜日だった。
休日前の既得権益『花金』の喪失は自身の存在意義を揺るがす大問題だ。
同じく日曜日。神が認めた正当な休日がぽっと出の若造である土曜ごときに面目を潰された形だ。
「それならば、私も火曜に休日を譲る」と烈火の如く対抗した。
いきなり新たな休日候補に担ぎ上げられた月、火曜日は困惑を隠せず、
たいした変化の無い木曜日は対岸の火事だと鬱蒼と沈黙を通した。
そして水曜日はただただ状況に流されてしまったのである。

そして襲名披露は快晴の月土曜日に執り行われた。
各曜日が舞台に上がると自分の新しい曜日位置の座布団に座る。
それぞれの脇には新しい名称が記載されためくり台が設置されていた。
水月曜日
木火曜日
金水曜日
土木曜日
日金曜日
月土曜日
火日曜日
横一列に並び新たな曜日は揃って挨拶した。
すっかり水に流して清々しい水月曜日に比べ
最後までゴネたと噂される金水曜日は苦虫を噛み潰した顔で終始不機嫌だった。

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