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【ショートショート】苦手な掃除

少し胡散臭い感じはするが迷っていても何も変わらないと自分に言い聞かせ、えいやと電話をかけた。
「お電話ありがとうございます。フレンドクリーン、山本でございます」
「もしもしあの…広告を見たのですが本当に部屋が片付くのでしょうか?」
「もちろんです。大変ご好評頂いております」
「…ちなみに追加料金などはあったりするのでしょうか?」
「ご安心ください、後になって料金が上乗せされる等は一切ございません。記載にある8千円を後払いで頂いております」
「なるほど。ちなみになんですけど…具体的には掃除のノウハウや片付けのコツ、なんてのをレクチャーして頂けるのでしょうか」
「しいて言えば『真実』をお教え致します」
求めた答えでは無かったがもし詐欺まがいだったら後払いだしクレームを言えばいいか。
「分かりました。では…よろしくお願いします」
「承知いたしました。ありがとうございます。あの、こちらから一つだけお願いがあるのですが」
「なんでしょう」
「大変厚かましいお願いになるとは思うのですが、これを期にお友達になって頂けますでしょうか」
「と、友達…ですか」
「お友達になったからといって何か面倒くさい作業が発生する訳ではございません。お部屋を片付けるに当たってのおまじない程度に捉えて頂ければ幸いです」
「はぁ。まぁ構いませんけど」
「ありがとうございます。それでは早速お日にちなんですが、来週の月曜日の13時はいかがでしょうか?」
「月曜は明後日で…大丈夫です」
「ありがとうございます。それでは明後日月曜日の13時にお伺い致します」
住所等必要な情報を伝えて電話を切った。
変な人だったな。なんだかやっぱり胡散臭いな。
まぁ、悩んでいても仕方ない。
物は試しだとカレンダーに予定を書き込んだ。

「さて、お友達来るし掃除しなくっちゃ」

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