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【ショートショート】占う志願者

よく当たると評判の占い師がいた。
その評判を聞きつけ、全国各地から弟子入りを志願する者が5名訪れた。
頭を下げる5名の志願者に向け、占い師は言った。
「この中から1名のみ弟子として受け入れることにする。私が誰を選ぶかを各々で占いなさい」
これは入門試験だと理解した5人は早速占いはじめた。
「じゃあ、あなたから順番に答えなさい」
端の志願者から順番に答えていく。
「私です」
「私です」
「私です」
「私です」
次々と答える志願者。最後の1人は一呼吸おいて
「私…ではありません」
占い師は違う答えを出した志願者に興味をもった。
「なぜ自分ではないと答えた」
「もし私も自分だと答えたらそれは占いではなく願望です。その状況で私が選ばれたとしても、それは占いが当たったのではなく単に運が良かっただけです。もし私以外が選ばれたとしたら残念なことですが、しかし占いは当たった事になります。占うとは状況をみて判断する事だと思います」
占い師はしばらく考えて
「最初の4名。弟子入りを認めます」
最後の志願者に占い師は微笑む。
「あなたはもう占い師よ」

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