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【ショートショート】高いところが苦手

「ねぇチカ。やっぱりそこの喫茶店にしない?」
「もう着くよ。あそこ高層階で景色も綺麗だし、それに新作のフラペチーノも気になるの」
人気のカフェが入るビルは目前とあってチカは折れなかった。
吹き抜けの広々としたエントランスはチカの力強いヒールの音を鮮明に響かせた。
「ミホほんとカフェとか行かないよね」
上昇するエレベーターは都会の街並みをどんどんミニュチュアセットにしていく。
「ちょっと苦手なだけ…高いところが」
エレベーターに二人だけをいい事にチカは声をあげて笑った。

「まさか高所恐怖症とはね」
フラペチーノを手にチカは奥の壁際の席に着いた。
せっかく景色をお目当てにしていた所、余計な気を使わせてしまい申し訳なく感じた。
店内を見渡すと内装はスタイリッシュで若者を中心にほぼ満席だ。
やっぱりそれは散見できた。わざわざ何をしてるんだろう。
「違うの、私が苦手なのは…」
チカがおもむろに鞄からを出したの物を見て口を噤んだ。「え、何?なんか言った?」
「いや…何でも無い」私は頭を振る。
すぐ済むからちょっとごめんとチカはMacBookを広げた。
それはこのシュッとしたカフェの風景に溶け込む。
わざわざ何をしてるんだろう、とぼんやり眺めながら珈琲を一口すすった。

私苦手なの…意識の高いところ。

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