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京都探訪2023夏〜出会いの妙
ドイツ在住の日本人中学生男子にオンラインで国語を指導しているのだが、その彼が東京に一時帰国し、観光で京都を訪れるという。
私は何を差し置いてもぜひ会いたいと思い、大阪から電車で京都に向かった。
そもそもの出会いはSNS 。その後の指導もずっとオンライン。直接会ったことがない。
リアルに会って感じたいこと、話したいことが山ほどある。
待ち合わせ場所の東山三条に向かう。
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東山三条は、平安神宮や南禅寺のある観光スポット。
三条通りを横切って白川が流れる。
すでに梅雨入りしているというのに今年の京都は爽やかだ。
彼は母親と共に橋の上にいた。
彼が私に気づき、私に声をかける。
母親が私に握手を求める。私も応じる。
笑顔の素敵な女性だ。
続いて彼と握手する。
思っていたより背が高い。
引き締まった筋肉。
今までオンライン画面上では感じることのできなかった彼の体温が、じかに彼の手を通して伝わってくる。
出会いは一瞬だ。
これまでの時間と空間の隔たりが一気に埋まる。
簡単な挨拶を済ませたあと、もはや数年来の知り合いであるかのように自然に会話が進み、街を歩き出す。
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神宮道を歩いていくと、みどり豊かな空間が広がった。
3人は引き込まれるように中に入った。
そこは浄土宗総本山・知恩院であった。
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自然豊かな日本庭園が心地いい。
爽やかな風と相まって心が浄化される。
私は学生時代、4年間京都に住んだが、こんなに心地よい空気は初めてではないかと感じられた。
私が変わったのか。
京都が変わったのか。
この日の出会いが私を変えたのか。
3人は快適に歩みを進める。
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本堂を見学した。
鶯張り (うぐいすばり) の床がさかんに響く。中はひんやりと気持ちいい。線香の香りがかぐわしい。
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知恩院を出ると、すぐそばが円山公園につながっている。
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しばし休憩。コーヒーやビールを飲みながらゆっくり話す。
ドイツの話。日本の話。今後の話。
聞きたいことが山ほどあって、話は尽きない。
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店を出て「哲学の道」に向かう。
途中、目の覚めるような菖蒲 (しょうぶ) の一群が広がる。
みな夢中で写真を撮る。
こんなに美しい菖蒲を見たのは初めてだ。
私は自分が浄化される心持ちで、呆然と花を眺めていた。
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すぐそばが「哲学の道」の南端にあたる。
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3人は黙々と道を進む。
「哲学の道」は、銀閣寺と南禅寺を南北に結ぶ約2kmの散歩道である。
20世紀初頭の哲学者である京都大学教授・西田幾多郎 (きたろう) が毎朝この道を歩いて思想に耽っていたことにちなんで名付けられた。
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脇を流れる運河は、日本最大の湖である琵琶湖から引かれた疎水である。
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学生時代の私は、文学青年よろしく道沿いのベンチに座ってよく本を読んだ。
小説。法律書。哲学書。
あれから二十数年。
私はあまり本を読まなくなった。
自分の頭で、自分の心で感じ考えることができるようになった。
そんな変化を自分の中に感じながら、哲学の道の北端を目指す。
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こちらが本来のスタート地点である。今回私たちは逆走した形になった。
タクシーで東山三条に戻る。
時刻は19時過ぎ。ここでお別れだ。
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今後の互いの健闘を祈りながら握手を交わす。
次はいつ会うことになるだろうか。場所は東京だろうか。ドイツだろうか。あるいは…。私にも分からない。
月だけが、その答えを知っているのかもしれない。
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