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実録 小説家のなりかた 25日目

3万字近く書いてわかったことは色々あった。

ひとつは、自分は書くことがそれほど好きではないということだ。今のように好き勝手に自由な散文を書くのはストレスにならないが、「おもしろい作品を書かなければ」とか、「クオリティの高い2万8千字を!」とか思いながらタイピングしていると、しんどさが二馬身差で勝つ。
書いている時は、達成感や充実感はあるものの、ほとんど仕事でプログラミングしている時と同じストレス状態にあった。もうお金を貰っても二度とやりたくない。

ふたつ目は、「何のために書いているのか?」という点だ。結論から言うと、自尊心を保つためなんだなとわかった。大学生の頃、「小説を書く」という目標を立てて、それが永遠に残課題にかっていた。そのせいで自己肯定感が低くもなっていた。書きながら、それを満たすために自分が納得するために書いているのだと気づけた。
そして、クオリティはともかく、3万字近く書けたという事実だけで、僕はサティスファクションした。友人からのアドバイスで加筆修正して、「何度も叩き直せば世に出せる代物になる」と言われたが、その作業には全然興味がわかなかった。ただ、自分が小説を書けるという自信が欲しかっただけだった。

ここがゴールかとわかったら、すぐに立ち止まった。毎日、小さく湧き出すエネルギーを転職活動に全振りして、今では立派に社会復帰ができた。

僕は作家としては筆を置く。けれども、これからも毎日書く。日記、メール、決裁書、メモ、ホワイトボード、それらに僕のミームは残る。僕の小さな小さな生きた軌跡がそれらに宿り、関係した人達に少なからず影響して伝わっていくだろう。

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