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色を科学する その⑩ 色彩計は色を測ってない!?

 色彩計とか測色計と名乗りながら色を測っているのではない、というお話。キャッチ―な面白話ではなく、この事実は色彩学を学ぶにあたり、結構重要だと思っています。

 以前、分光測光器を捨てるときに、回折格子を取り出しておいた、という話を書きましたが、実は分光センサも取り出しておきました。

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光を電気に

 詳細は不明ですが、光を電気信号に変換する光電素子であるシリコンフォトダイオードがずらーっと並んでいます。

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 片側だけに青いフィルタがかかっていますが、これは何だろう?短波長のみ通すフィルタ?


波長を位置に

 分光測色するには、分光しないといけません。それを行うのが、回折格子です。回折格子のほか、プリズムや特定の波長のみ通すフィルタ(干渉フィルタ)でも分光できます。

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回折格子やプリズムにより分光される現象は、

 波長の違いを位置の違いに変換する

 とも言い換えられます。つまり、白色光の状態ではさまざまな波長の単色光が同じ位置に集まっている状態で、それを波長に応じた位置(左から波長が長い順に、とか)に分けることが分光です。

 回折格子は、波長によって回折する角度が異なるという特性を生かし、波長ごとに違う位置に投影します。プリズムだと波長によって屈折する角度が異なる特性を活用します。

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 なので、先ほどの光電素子(シリコンフォトダイオード)がずらーっと並んでいたのは、それぞれが特定の波長を担当しているのです。数えると35個あったので、410-750nm(または400-740nm)を10nm毎に担当しているのだと。あと、青いフィルタがついているほうが短波長側だと推測しました。

 測定する波長の数だけセンサーがあると、すべての波長を同時並行で測定でき高速化できるのと、センサーを波長に応じた位置に動かす(スキャンする)必要がないので、機器を簡易化(壊れにくく)できます。


じゃあ、何を測っているのか?

 光電素子(シリコンフォトダイオード)は光を電気に変える、光のエネルギーの強さによって電流が増加する特性があるので、波長ごとの光のエネルギー量を測っています。対象が物体色なら、波長ごとの白と比べたときの相対エネルギー、つまり、「分光立体角反射率」ですね。

 分光反射率と呼ぶには、あらゆる方向の反射光を集めて測る必要があります(積分球が必要)。特定の角度(立体角)の反射光のみを対象とする場合は(ほとんどはこれ)、分光立体角反射率(または分光反射率係数)です。


色に変換するために

 色を科学する <番外編> XYZを自分で計算してみよう!でも書きましたが、測定した分光立体角反射率を色に変換するためには、照明光の分光エネルギー分布と等色関係を掛けて波長積分(実際には波長での和を取る)をする必要があります。

 なので、この計算は色彩計自体ではなく、ソフトウエアが行います。つまり、照明光や等色関数を「データ」としてもっているのです。したがって、照明光や等色関数を自由に設定することができます。

 ただし、以上は分光型の色彩計のみです。刺激値直読型の光電色彩計は、物理的な照明と等色関数が色彩計に組み込まれているので、ほとんど変更できません。物理的な等色関数とは等色関数に近似させた分光特性を持ったフィルタです。物理的な照明と等色関数(フィルタ)の製造ばらつきのため、一般に分光型と比べると精度が下がります


まとめ

 (分光型の)色彩計は色を測っているのではなく、分光立体角反射率という物理特性を測っている。色は感覚、直接測れません。なので、正確には、色彩計や測色計と呼ばず、分光測光器分光光度計などと呼びます。

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