見出し画像

テーピング革命 Dynamic Tape 実践編3:棘上筋サポート(肩峰下インピンジメント症候群のテーピング)

画像13

 先月行われたテニスの全豪オープン、ジョコビッチ選手が腹斜筋の挫傷をものともせず優勝しましたね、その陰になんとDynamic Tapeあり。もともと発案者のRyan Kendrickはテニスのワールドツアーに参加していたセラピストなので当然と言えば当然かも、ですが、手負いの(15年前にMLBで同じケガ何例かに遭遇しましたが、15日DLをきっちり使わないと治らないケガでした…)ジョコビッチがあれよあれよと勝ってしまう、というのはこのテープの底力を見たように思うのですが、どうでしょう?

 また先日Ryanからの連絡で知ったのですが、まだ名前は出せませんが日本サッカー界のレジェンドともいわれる選手が、今所属してプレーしている国の代理店からDynamic Tapeを大量購入された、との連絡もあり、日本正式上陸4年目、そろそろDynamic Tapeのビッグウェーブが来るんじゃないかと期待してしまう今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?

 さて今回はテニスや野球などオーバーヘッドのハイスピードな動きで起こる肩の外傷の一つ、インピンジメント症候群にどうDynamic Tapeが役立つかをご紹介したいと思います。念のためインピンジメント症候群を簡単に説明しますと、上腕骨頭に停止する棘上筋(下の図に赤で示したもの)が肩関節外転、あるいは屈曲時に肩鎖関節部と上腕骨骨頭に挟み込まれる(Impinge)ことからそう呼ばれています。この肩峰と上腕骨との間隙はだいたい親指の断面ほど、その隙間には棘上筋のほかに肩峰下滑液包(下の図では緑)や図には書かれていませんが上腕二頭筋の長頭腱もそこを通るため、タダでさえ狭い隙間で棘上筋が強い力を発揮する際には膨張するため、他の組織との摩擦を起こし損傷を受けてしまいます。

画像11

で、その棘上筋が上腕骨を外転あるいは屈曲させるための仕組みはいわゆる「第3のテコ」、関節運動軸と荷重の間に作用点(筋の停止部)をもつ構造で、可動範囲は広く取れますが、関節運動軸から非常に近い場所に停止する棘上筋にとっては非常に不利な仕組みです。

テコの図示

ちょっと調べてみたのですが、Paolo(1996)によると、男女平均して上肢片側で体重の5.33% を占めるとのこと、体重60㎏の方であれば3㎏、筋肉質な男性であれば5㎏くらいになってもおかしくない。これが何も持たずに肩関節を屈曲や外転するだけでかかる負担であり、関節運動軸から75㎝離れた手に1㎏のダンベルを持った場合、力は負荷×支点からの距離であることから、関節運動軸から2㎝離れたところに停止する棘上筋は(棘上筋だけで)その上肢を外転あるいは屈曲させるためには37.5㎏の牽引力を余分に発揮させないといけない、これは非常に大きな負荷がかかるワケです。まあ、実際のところは棘上筋の働きは運動の初期に上腕骨骨頭を肩甲骨の関節窩に引き寄せる、程度で終わっていると考えられていますが、止まっている物体が動き始めるときはより大きな力が必要になる、というのは理解できるのではないでしょうか。

Paolo de Leva (1996) Adjustments to Zatsiorsky-Seluyanov's Segment Inertia Parameters . Journal of Biomechanics 29 (9), pp. 1223-1230.

 さて、テーピングの技術に話を進めましょうか。今回は異例ですが、先に出来上がりをお見せしてしまいましょう。どうですか?テープを貼付して、座位でリラックスしてもらった状態が下の写真です。確かにモデルになってくれたのは私の元教え子ですが、彼には缶コーヒーを買ってあげたくらいのことはあるかもしれませんが、焼き肉をごちそうしたことはないはずです(笑)、忖度は働いていない状態でこの効果、右上腕骨の位置が左の上腕より高いところに持ち上がって、棘上筋への負担が小さくなっています。貼ってもらったことがなくても、どういう感覚になるか想像できそうですよね。

スライド27

 さて、今回のテーピングでは5㎝幅を60㎝と70㎝に切った2本、もちろん2枚重ねの「パワーバンド」テクニックを用いればより強力に上腕骨を引き上げることが可能になるでしょう。短い方が前方からのサポート、長い方が後方からのサポートになります。

画像10

もし手元にDynamic Tapeがない方は以下の連絡先までご注文を、他のテープで代用されてもこのようには貼れないですし、効果も実感できませんので。

Dynamic Tape Japan Tel:06-6784-2280

また、そもそもDynamic Tapeとは何ぞや?という方は以下のリンクを、ご安心ください、こちらは無料の記事です。

また本稿では貼り方の基本についての簡単な説明も含みますが、より詳しく知りたいという方は以下の有料記事もご覧になられることをお勧めします。

前置きが長くなりました、それでは本題に移りましょうか。Dynamic Tapeの貼り方の基本は以下の3つでしたね…

ここから先は

1,935字 / 8画像

¥ 3,500

このnoteをご覧くださりありがとうございます。サポートいただけた際には子供たちが安心してスポーツに打ち込める環境づくりに使わせていただく所存です。よろしくお願いいたします。